指先だけでそっと
title by 確かに恋だった
仕事が終わって、和と連れだって駐車場へ行く。結婚前はマネージャーさんに送ってもらうことが多かったけど、最近は和の運転で仕事へ行くことも増えてきた。とは言っても、同じ現場ばかりではないのでその頻度は多くても週1回ほどだ。
助手席へ乗り込むと、首から提げているチェーンを外す。そこに通していた指輪を抜き取ると、さっと左手の薬指に*めた。視線を感じて横を見ると、和の左手にも同じ指輪。
私たちは普段、結婚指輪をつけていない。これは二人で結婚前に話し合って決めたことだ。仕事は仕事としてきちんと取り組もう。それはアイドルを職業としている責任だと思っている。
だから、いつもはチェーンに通して首からかけたり、それができない仕事の時は、家に保管したりしている。特に示し合わせたわけではないが、和もそうしている。
今日のように帰りが同じになったときは、車の中で指輪をつける。いつの間にかそれが当たり前のようになっていた。
お互い言わないけれど、これはきっとスイッチ。メンバーから唯一の愛する人へと切り替わるスイッチなのだ。
そしてそれは不意に訪れる。
帰りの車の中だったり、玄関に入ってすぐだったり。時には深夜の散歩中や、眠っている最中でさえ。
そう、今現在も。
「それ、癖なの?」
いつもより少しだけ早く仕事が終わって二人で帰宅した。普段より少しだけ寛ぐ時間の余裕がある。普段は帰って夕食、入浴と済ませたら早めに寝室に入っても日付が変わってしまっているけど、今日はまだ大丈夫だ。
こんな時、私たちは思い思いに過ごす。大体はゲームに没頭する和と、テレビを見たり雑誌を読んだりする私。そうすることで、上手くバランスを取っているのかもしれない。
「これ? うーん、癖なのかな。」
私の言葉に、今日は珍しくゲームをしていない和が返事をした。言いながらも和の指先は、私の指をなぞる。正確には、私の左手の指輪を。
「指輪を触ると、俺のものって感じがして嬉しい。」
滅多に見られないような無邪気な笑顔を向けられて、心臓が飛び跳ねる。と、同時に少し寂しく思う。ずっとつけていたい気持ちだってもちろんあるんだ。でもそれはしないと決めたから。
「これしてる時は、俺だけのあいだなって。特別な感じする。」
お互いに分かっているからこそ口にはしない。だって私たちは嵐だから。
「できるだけ付けたいなぁ。」
こうやって嬉しそうに、指先で指輪をなぞる和を見ていると、もっと触れて欲しくなる。そんな気持ちを込めて目を見て伝えた。
一瞬、目を見開いた和が嬉しそうに破顔する。私の左手を顔の高さまで持ち上げると、薬指に恭しく唇を落とした。
「じゃあ、俺もいっぱい手を繋がなきゃ。」
そして再び指先が指輪の上を滑ったかと思えば、唇は耳元へと移動した。
「指輪付けてなくても、あいは俺のものでしょ?」
垣間見えた私への執着が嬉しくて、小さく頷くと、私は自分から和の薄い唇へ口付けた。和の首の後ろへ腕を回し、強請るように角度を変えて何度も繰り返す。呼吸が苦しくなって二人の唇が離れた刹那。
「もっと俺のものだって感じさせて。」
切なそうに眉を寄せた和に手を引かれ、寝室へと引きずり込まれる。そんな時でさえも、指輪を撫でる指先は優しくて。
「……好きだよ。」
覆い被さる和に向かって小さく呟く。その瞬間、和の体がピクッと跳ね、困ったように目尻が下がる。
「……俺だって」
続きは耳に届かなかったけれど、私は体で和の想いを受け止めた。
指先だけでそっと私をなぞる、貴方が好き。
もっともっと近づいて、私を貴方で満たして。
(ニノたち、また手繋いでるー!)
(相変わらずいちゃいちゃしてんね)
(相葉くん、あれはね、左手の薬指を触ってるんだよ)
(!! 翔ちゃん知ってたの!?)
(見てたら分かるじゃん。指輪の名残を探してんじゃね?)
(潤くんもかよ……)
(珍しくニノが照れてる。笑)
(ふふふ)
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