だって君は俺のもの
title by 確かに恋だった



「ニノって嫉妬することあるの?」

 何の前触れも無しに相葉さんから質問が飛んできた。よくあることなのでさほど驚きはしないが。

「いきなり何。」

 ゲーム画面から顔を上げる。相葉さんの目線を辿ると、テレビ画面にはあいと翔ちゃんのCM。それはシャンプーのCMで、二人が手を取り合ってダンスをしていた。あいの長い髪がターンするとふわっと風に靡く。向かい合って目が合う度に微笑み合う二人は、まるで恋人同士のようだ。

「こんなの見て、ヤキモチ妬かないのかなって思って。」

 その声が少しだけニヤニヤしてたから、軽く睨みつける。相葉さんとは長い付き合いだ。きっと分かってて聞いてるに違いない。現に隣のあいはそわそわし出すし、向かいの翔ちゃんはチラチラとこっちを見ている。

「相葉さんには教えない。」

 ベッと軽く舌を出す。うひゃひゃと言う笑い声は無視してゲームに戻る。その時に目に入ったのは翔ちゃんの困り顔。眉を下げて悪いねと目だけで告げるから、こちらも目線で、気にしないでと返しておいた。


 そして、現在。ベッドに入ってあと3分もじっとしていれば眠れただろうその時。腕の中にいたあいが身じろぎする。寝にくかったのかなと隙間を空けると、上目遣いのあいと目が合った。その目が落ち着かなく動くから、瞼にそっと口付けて聞いてみる。

「何か言いたそうだね。」

 バレたかと一瞬気まずい顔をしたあいが、小さな声で話し出す。

「今日の話なんだけど……。」

 今日の話? あぁ、嫉妬のヤツか。わざとうやむやにしたから、気になっちゃったのかもしれない。

「うん。」

 相槌を打ち、言葉を促す。分かっているけど、きちんと言葉で話した方が伝わるから。

「和って嫉妬することあるの?」

 相葉さんと全く同じ聞き方に吹き出してしまう。そんな俺を不思議そうに見る顔も、どこか相葉さんと似ていて、さらに笑ってしまった。

「嫉妬ねぇ。」

 じっと見つめてくるあいの視線を遮るように、頭を撫でた。こうやって触れていると穏やかな気持ちになれる。

「するよ。」
「やっぱりするんだ。」

「やっぱりって何だよ。」
「予想通りだったから。」

 勝ち誇った口ぶりで言うあいに苛立って、ほっぺたを引っ張る。痛いー! と怒ったふりをするけど、お互い本気じゃないから。

「そりゃ、あいが嬉しそうにしてたら、何があったんだろうって気になるし、CMででも触るなよって思っちゃう。」
「え、翔くんにも嫉妬するの?」

「嫉妬なのかなぁ。でも、そういう気持ちは持つよ。絶対出さないけど。」
「そっか。」

 どこか嬉しそうなあいを後ろから羽交い締めにする。

「で、あいちゃんはどうなのかな?」
「何のこと?」

「しらばっくれてもダメ。嫉妬するの?」
「えー。」

 口を割らなさそうな様子のあい。そっちがその気なら、こっちにだって考えがある。
 腕を緩めて右手で頬をゆっくり撫でる。耳元で軽く息を吹きかけ、左手はボタンを一つずつ外す。

「ちょっと!」

 耐えきれなくなったあいから制止の声がかかった。

「あいが言わないから。」
「……するに決まってるじゃん。」

 はぁっと小さくついた溜息に乗せられて届く声。恥ずかしそうなそれが、俺の独占欲を喜ばせる。

「綺麗な人とお仕事したり、話したりしていると、ちょっとする。」

 ボソッと言うあいはとても可愛くて、胸がキュンってするとは、こういうことを言うのかなと思った。

「なんだよ。お互い様か。」

 くるりとあいの向きを変え、軽く口付ける。何度も重ねる内に、どちらともなく笑い合う。

「それくらい想ってるってこと。」

 にこりと笑って爆弾を落とすあいに、一瞬動きが止まる。煽った責任は取っても貰わなきゃね。

「ねぇ、あい。他の人と話さないで。他の人を見ないで。」

 俺の言葉に目を見開くあい。

「俺のことだけ考えて。俺だけの側にいて。」

 彼女の瞳に映る俺が、俺のことを見つめ返す。

「そんなことは言わない。だって。」

 頬に手を添え、唇を親指でなぞる。

「だって君は俺のもの。」

 そう宣言して深く口付けた。俺だけの唇を覚えて、俺だけの熱を感じればいい。決して口にはしないけれど。

 だから体に刻みつける。背中にしがみつく手も、酸素を求めて開く唇も、滑らかな肌も、時折漏れる吐息さえも。

 全部全部俺のものだから。


 思う存分味わった後、息も絶え絶えの彼女の耳元で告げる。


「俺も君のもの。」


 あいから重ねてきた唇が全ての答え。

 君は俺のもので、俺は君のもの。大げさだなぁなんて頭の隅で考えながら、今はその幸せに目を閉じた。


(あい、この間、すごい写真が撮れた!)
(えー、どんなの?)
(ニノー、あいがリーダーといちゃいちゃしてる!)
(え? それがどうかした?)
(嫉妬しないの?)
(するかよ。バーカ)
(こないだ俺にしてたくせに)
(愛を確かめあっちゃったとか? 笑)
(……名探偵)

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