これからも、どうかよろしく
title by Catch sight of



「今日、いい夫婦の日だって知ってる?」
「あぁ、11月22日の語呂合わせだよね」

「そうそう。二人はベストカップル賞とかの話はないの?」
「え? 俺ら? 無い無い」

「そうだよ。結婚してまだ一年経ってないし恐れ多い」
「まだそんなもんだっけ? もっと経ってるかと思った」

 翔くんから突然始まった会話。今日は11月22日。11(いい)22(ふうふ)の日だ。結婚してから彼の名字を名乗り、同じ家に帰るようになった。付き合っている時間が長かったせいか、それほど違和感を感じることなく毎日を過ごしている。

「じゃあさ、ここで勝手にインタビューしちゃおうよ」
「ヤダよ。何であなたたちに答えなきゃいけないのさ」

 相葉くんの思いつきに巻き込まれまいと、秒殺で反論する和。いいぞ。その調子だ。それなのに。

「それでは、ベストカップル賞のお二人にインタビューしたいと思います。」
「どうぞ、こちらへ」

 筆箱をマイク代わりにした翔くんに腕を引っ張られた和と、テレビのリモコンをマイクに見立てた潤くんに肩を押された私が強引に並ばされる。ソファーに座った智くんが笑い転げた。

「素敵な夫婦ということで選ばれましたが、今のお気持ちは?」
「いやー、嬉しいです。光栄ですね」
「みんなに感謝です」

 目の前でニヤニヤ笑う相葉くんに少し腹が立ったけれど、元々内輪ノリが好きな私たちだ。こうして謎のインタビューが始まった。

「お二人の馴れ初めとか教えてもらえますか」
「職場恋愛です」
「ひゃはは! 職場恋愛!!」

 即答する和にお腹を抱えて笑い転げる相葉くん。確かに職場と言えば職場だけど、ちょっと特殊な職場かも。

「プロポーズの言葉は?」
「えーっと、企業秘密でお願いします」
「教えてくんないのー?」

 ヤジをとばす智くんに「言うかよ」と小さく言い放った和。

「奥様の好きなところを教えて下さい」
「全部です」
「おっ。言い切ったね!」

 うんうんと満足そうな顔をこちらへ向けてくる和。それでも視線がとても優しくて、染まりそうになる頬に、どうか赤くならないでと願った。

「では、旦那様の好きなところはどんなところですか?」
「えーっと、どんな時も側にいてくれるところですね」
「一歩間違えればストーカー……」

 智くんのツッコミに、「何か言いました?」とジト目を返した和に笑ってしまった。

「では最後に、結婚して変わったなぁと思うことを教えて下さい」

 翔くんの言葉に、和と顔を合わせて考える。Jrの頃からの付き合いだから、お互いの人となりは結婚するまでに十分知っていた。デビューしてからは家族よりも長い時間を過ごしている。付き合い始めて結婚するまでにも期間はあったから、お互いを知る機会は十分あった。変わったことと言われても突然思いつかない。和もそうだったようで、首を傾げている。

「じゃ、逆にどうなのよ。俺たちが結婚して変わったなぁって思うことある?」

 みんなに問いかけると、見事に黙り込んで考えてしまった。結婚したからって、そんなに変わらないと思うんだけど。

「はい! 俺ある!」
「さすが相葉さん。何?」

「前も言ったけど、ニノとあいが同じ匂いするんだよね」

 その言葉に、「あぁ」「そうそう」と同意するメンバー。私は余り思わないけれど、以前相葉くんに言われたことがある。

「まぁ、同じ洗濯機で洗ったもの着てるんだから、そりゃそうなるでしょうよ」
「俺はね、あいがニノの入り時刻を手帳に書いてるのを見た時に、コイツら結婚したんだなって思った」

「翔くん、よく見てるね……」
「あい、昔から自分の分は手帳に書いてたでしょ? それにニノの分が加わってるのよ」

「言われて見ればそうかも」
「スケジュール管理してくれる奥さん、いいでしょ」

「お前、しれっと惚気んなや」

 智くんにペシッと頭を叩かれ、小さく舌を出して戯ける和がおかしくてみんなで笑う。

「俺は、ニノの私服見た時かな」
「さすがファッションリーダー。見るところが違うね」

「上手く言えないけど、ニノが着ないような服の時、あいが選んだんだろうなって思うよ」
「時々、私の服着てるときあるからね」

「え? レディースですか?」
「ユニセックスです」

 VS嵐のオープニングトークで、こんな話ししたなぁなんて思いながら和を見ると、同じことを思い出したのか目が笑っていた。

「リーダーは?」
「この二人、一緒に帰るときあるじゃん。仕事終わりが同じで」

「まぁ、一週間に一、二回くらいね」
「そん時にさ、『今日の夜ご飯、何にする?』『冷蔵庫に鶏肉あるから、親子丼とか』って言いながら歩いてるの見ると、くそーって思う」

 声色を変えて二人の台詞を演じ分ける智くんが面白い。

「俺はさ、一人寂しくコンビニで弁当買うのに、お前らはこれから帰っていちゃいちゃするのかよ!! って腹立つよね」

 歯を食いしばる智くんに、堪えきれなくて吹き出した。

「ははは。そりゃ腹立つわ」
「いや、普通の会話よ」

「独り身には辛いってこと言ってんの」
「すみませんね。嫁がいて」

「だーかーら、惚気るなって言ってんの」

 右腕で和の首を締め上げる真似をする智くんの手を叩き、降参だと主張する和。この二人のじゃれ合いはいつになっても健在だ。

「で、二人はどうなの。結婚したからこそみたいなのある?」

 翔くんに話題を振られて、さっき思いついたことを口にする。

「んーと、家に帰った時に『ただいま』とか『お帰り』とか言うようになったことかな」
「今まで言ってなかったの?」

「お互いの家に行った時は、『お邪魔します』だったよ」
「ニノも?」

「うん。俺も結婚してから変わったって、そこかなって思った。」
「お泊まりだってしてたでしょ?」

「まぁ。でも、自分の家じゃないから『ただいま』とは言わないよね」
「へぇ。そういうこともあるんだね」

 何となくこれで終わりという空気をぶち壊したのは相葉くんの一言。

「そういやさ、二人がチューしてるとこって見たことないよな」
「相葉さん、何て爆弾放り込むの?」

「だってさ、結婚式もホッペだったでしょ?」
「そういやそうだったね」

「じゃあ……今しちゃう?」

 悪のりを始めた翔くんが音頭を取り、ちゅーコールが巻き起こる。こんなところで団結力を発揮しなくてもいいんだってば。

「うるさい。しないよ! もったいない」
「出た、本音。やっぱり見せたくないんだな」

「当たり前じゃん。あいの可愛い顔なんて、俺一人知ってたらいいの」
「言ってくれるじゃん。こっちが照れるわ」

 潤くんはそう言うけれど、当人の私が一番恥ずかしい。

「うわ、あい照れてる。可愛いー」

 智くんに見つかり、頬を手で隠したけれど熱さはなかなかとれてくれなくて。

「あー、だからそんな顔したらダメだって。ほら、帰るよ。みんなお先ー」

 捲し立てる和に腕を引かれ、あれよあれよという間に帰路につく。地下の駐車場へたどり着くと、助手席に乗せられ、荷物は後部座席へ放り投げられた。
 ロックをしたと思ったらリクライニングレバーを引かれ、座席が倒された。突然の衝撃に目を見開くと、すぐそばにあるのは和の顔。目を閉じる間もなく唇を重ねられ、舌を絡め取られる。動き回る舌に翻弄されながらも、もっと温もりを感じたくて、腕を和の首に回した。

 車内に響くのは、私たちが唇を重ねる音だけ。名残惜しそうに目を細めた和の唇が、私からゆっくり離れるのをじっと見ていた。

「ねぇ、あい。今日の夜ご飯どうしよっか」
「冷蔵庫に鶏肉あったから、親子丼かな」

 そこまで言って二人で吹き出す。そうか。こうやって夫婦になっていくんだね。

「俺、もっと食べたいものあるんだけど」

 耳元で囁いた和。それを叶えられるのは私しかいないという事実が嬉しい。


 言葉を交わしながら、唇を重ねながら。そして肌を合わせながら、私たちは時を刻む。

 これからも、どうかよろしく。


(あーあ、二人とも帰っちゃったよ)
(みんなでからかうからだよ)
(って、首謀者あなたでしょ! 笑)
(まぁ、仲良さそうで何よりじゃない)
(いつまでも新婚みたいで、モヤッとする)
(はははは。それは仕方ないんじゃない。きっとこれからもあの二人はあんな感じだよ)
(くそっ! いつか目の前でちゅーさせてやる)
(そこなんだ。笑)
(俺だって可愛いあいみたい)
(今頃イチャついてるんだろうなぁ)
(120%イチャついてるね)
(くそー! 邪魔してやりたい)
(ぶはっ! 智くんの変なスイッチが入った。笑)

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