風も通れない二人のあいだ
title by EVER GREEN
今日は六人揃ってのCM撮影で東京の郊外に来ている。一番乗りだった私は、屋外に設置されたタープ下の椅子に座って、そわそわしながらメンバーを待っていた。
「あい、おはよ」
現場に着いて五分もしないうちに相葉くんが来た。
「おはよう! 久しぶりだね」
「だね。五日ぶりくらい?」
「それって久しぶりに入んの?」
続いて到着した潤くんが笑いながら歩いてくる。
「三日以上は久しぶりになるの!」
反論すると、「間隔短けぇ」と言いながら鞄を下ろす潤くん。そんなこと言って、潤くんだって寂しがりなの知ってるんだから。
「朝から元気だなぁ」
「うぃーす」
時刻通りに着いた翔くんと智くんも輪に入ってきた。残るは後一人。
「二宮さん、飛行機の関係で10分遅れです」
スタッフさんの声が現場に響く。やっと会えると思ったのに、もうちょっとお預けかとがっかりしていると、横から翔くんに話しかけられた。
「ニノ、忙しそうだね。大丈夫?」
翔くんの言う通り、和は最近忙しい。特別ドラマの撮影で地方に行ったり、映画のプロモーションで各地を飛び回ったりしているからだ。
「ね。家にもなかなか帰って来られないみたい」
出来るだけ顔に出さないようにしたつもりなのに、手がスッと伸びてきて頭を撫でられた辺り、寂しいと思ってること、きっと翔くんに見破られてしまったのだろう。
「あの家好きなニノが帰らないなんて、よっぽどなんだね」
目を丸くした智くんが心配そうに言う。和は仕事で地方へ行っても、時間が許される限りは帰宅する。家の方が落ち着くからと彼は言うのだ。移動時間を考えると、現地で宿泊した方がゆっくり休めるのにと思うこともあるけれど、そう言ってくれるのは正直嬉しい。例え眠る時間しかなくても、彼を側で感じられるから。
「何日帰ってないの?」
「丸二日。だから今日会うの久しぶりなんだ」
答えを返すと、ニヤニヤした顔になる潤くん。
「あれ? さっきは相葉くんに三日以上で久しぶりって言ってなかった?」
「そうだよ。俺は三日以上で、ニノは二日なの? 愛の差を感じるなぁ」
「ま、そこは仕方ないんじゃない。きっとこの二人は半日離れてても会いたいーってなるでしょ」
「いや、一時間も持たないんじゃね?」
口々にからかうみんなに反論しようとしたその時、ふわりと腕が回されて肩に重みがかかった。
「さすがに一時間はないかな」
耳に届いた愛しい人の声に、思わず振り向く。「久しぶり」と優しく笑う和の顔があった。
「なになに、その幸せそうな顔」
「見てるこっちが恥ずかしくなるわ!!」
「あい、蕩けそうじゃん」
「ニノ、お疲れ」
それぞれに言葉を返しながら、和は折り畳み椅子を持ってきて私の隣に座った。
「みんな元気だった? 俺は強風で飛行機飛ばないかと焦ったよ」
その言葉に、辺りにそびえ立つ木々へ目を遣る。時折吹く風の勢いは強く、葉っぱが落ちてしまった木の枝をバサバサと揺らした。今日の撮影に支障はないのか心配になる。
「それでは、嵐さん準備をお願いします」
声をかけられて、各々着替えやセットに取りかかる。撮影時間は午後三時まで。集中していいものを作り上げたい。撮影にできるだけ時間を残せるよう、迅速に準備を進めた。
「はい、カット! カメラチェック入ります」
監督の声がかかると、すぐさまスタッフさんから防寒着が渡される。CMの構成上、あまり厚着はできないために、カメラが回っていない時間はできるだけ温かい格好をさせてもらっている。けれども、強風の中の撮影で冷えた体は防寒着だけでは温まらなくて、ストーブの近くへ行こうと両手で腕をさすりながら歩き出した。
「くそっ、さっみいな!」
やはりみんな同じ事を考えるようで、ストーブの周りには同じ防寒着を着たメンバーが集まっていた。
「あい、唇の色悪いよ。寒い?」
振り向いた和が、私の唇を親指で撫でる。ストーブで温まったのか、ほんのりと熱を持った指先が心地良い。
「風が強いから、やっぱり寒いね」
両手を合わせて擦りながら答える。はぁと息を吹きかけて手を温めていると、突然左手が温もりに包まれた。
「ほら」
和の手に握られた私の左手は、そのまま彼の防寒着のポケットに招き入れられる。ポケットの中で和の指がゆっくりと私の手を撫でた。繋ぎ直されて指が絡まる。彼の親指が私の指を辿るように動いた。たったそれだけの事なのに、言葉で何か言われるよりも恥ずかしくなるのは何故だろう。
「ちょっとちょっと。アイツら、少女漫画みたいなことしてるぜ」
「そういう歌あったよね。僕の右ポケットにお招きするみたいなの」
「翔さん、よく知ってるね。俺、あの歌好きなんだよなぁ」
「お前も知ってんじゃねぇか。わざとやってんな」
やいやい言ってる最中も、招かれた私の手は離されることなく二人で熱を分け合う。会えなかった数日間の寂しさがすぅっと薄れていくのを感じた。
「では、撮影再開します。嵐さん、スタンバイ位置までお願いします」
その声に名残惜しさを感じながらも、絡んだ指を離して防寒着を脱ぐ。歩き始めた和の隣へ行き、手の甲だけをくっつけた。風すらも通れないくらいにぴったりと。
「今日は家に帰れるから。そしたら、思いっきりくっつこう」
距離を縮めて囁かれた言葉に、小さく微笑んで頷く。
今日は二人寄り添って過ごそう。そして温もりを分け合おう
風も通れないほどにくっついた、二人のあいだ
(まだイチャイチャしてるよ、あの二人)
(しょうがないんじゃない。何たって丸二日会ってないんだから)
(二人にとったら、長かったんだろうね)
(だからってくっつきすぎでしょ)
(ね。あの間は、何にも通れなさそう。笑)
(よし、俺が挑戦してくる!)
(相葉ちゃん、やめときなって。ニノに睨まれるよ)
(そりゃ確実だね。呪われるかもよ)
(くぅー、それは勘弁だ。笑)
(それにしても、ニノが来た時のあいの顔見た?)
(あれ、めっちゃ可愛かったな。花開く笑顔って、こういうこと言うんだなってみとれたもん)
(ニノもいい顔してたよ。眉下がって、目無くなって、くしゃってなってた)
(あー、それ蕩けてる時の顔だわ)
(そうなの? 相葉くん詳しいね)
(付き合い長いからね。じゃ、さっさと撮影終了させて、アイツらにイチャイチャタイムをプレゼントしますか)
(ふふふ。何よりのプレゼントになるんじゃない)
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