好きだったよ誰より
title by 確かに恋だった
□ side M
「うん。送るわ。」
というニノの声が頭から離れない。好きな音楽を聴いても、ゆっくりシャワーを浴びても、まとわりついて離れない。
「くそっ。」
イライラしながら車のキーを手に取る。財布と携帯だけを乱暴にポケットに詰め込むと、ドアを開けて外に飛び出した。
「馬鹿みてぇ。」
当てもなく車を走らせて、たどり着いたのはあいのマンション。もしかしたらまだニノがいるんじゃないかと辺りを見回す。見知った車は止まっていなくて、胸を撫で下ろした。
見上げればマンションの窓に灯る明かり。それを見ていると、君にどうしようもなく会いたくなって、気がつけばインターホンを押していた。
「……はい。」
「俺。ちょっとだけ入れて。」
「……今、開けるね。」
一瞬戸惑ったのか間が開いた。俺が突然訪ねることなんてほとんど無かったから当然だ。それでも、もうこれ以上隠せなくなった想いに蓋をするわけにはいかないから。俺は汗ばむ手をジーンズで拭って、足を踏み出した。
「遅くに悪いな。近くまで来たから。」
そう言ってソファーに腰掛ける。手持ち無沙汰な様子のあいに、
「コーヒーちょうだい。」とリクエストすると、キッチンへ消えていった。
「潤くん、ブラックだったよね。」
「ありがと。」
声の方向に目を向けると、片付けられたマグカップが2つ。
「ニノ、来てたんだ。」
俺の言葉に動揺したのか、すぐに返事ができないあい。俯いた瞳を自分の方に向けて欲しくて、彼女の手を取る。
「好きなんでしょ、ニノのこと。」
静かに告げると、弾かれたように顔を上げるあい。その顔に浮かぶのは驚きと哀しみ。ホントはそんな顔させたくないけれど、これ以上しまっておけないから。
「ずっと見てたから知ってる。」
重ねた手に力を込める。叶わなくていいから、知ってて。俺の想い。
「好きだったよ誰よりも。ニノを好きなあいが好きだった。」
過去形にしたのは、せめてもの俺の意地。好きな人に、これ以上悲しい顔をさせたくない、俺の意地。
「潤くん……。」
伏し目がちだった瞳を少し潤ませて、あいが顔を上げる。泣き笑いになった君がとても愛おしく思えた。
「大丈夫。この想いは変わっていくから。」
今はまだそんなこと思えないけど、いつかきっと。
「これからも、あいのこと、大切にするからな。」
そっと引き寄せて腕の中に閉じ込める。俺たちの間にあった隙間が、あいに寄って埋められた。
「……ありがとう。」
呟いた君が愛しくて、零した涙を止めたくて、額に唇を寄せた。
好きだよ誰よりも。
側にいたいよずっと。
それが俺の望んだ意味では叶わないけれど、これからも愛しい人。
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