もうずっとあなたに恋してる
title by 確かに恋だった



「それじゃお疲れ様」

 一足早く仕事が終わった私はみんなに挨拶をする。六人での仕事はこれで終わり。この後は、それぞれ雑誌の取材があったり、番組の打ち合わせがあったりする。私は久しぶりに夕方家に帰れることに、少し浮き足立っている。

「あい上がりなの?」
「うん。今日はこれで終わり」

「どっか寄ってく?」
「スーパーで買い物しよっかな。今ならお肉とか安くなってそうだし」

「なんか家庭の匂いがぷんぷんするんだけど」
「一応主婦ですから」

「俺も帰りたい」
「智くん……ファイト! せめて早く終わるように祈ってるから!!」

 なんて他愛のない話をしながら帰る支度をした。立ち上がった私の後ろから和がついてくる。お互いの仕事の終わり時刻が違うとき、余裕があれば楽屋の出口まで送ることが、いつの間にか習慣となった。

「たまに早く帰れるんだから、ゆっくりしときなよ」

 と和は気遣ってくれるけれど、たまのことだからこそ、しっかりと夕飯を作って出迎えたいって女心、分かんないかな?
 返事をせずにニコッと微笑みを返すと、少し嬉しそうな笑みが返ってきた。

「仕事終わったら連絡する」

 そう言って私の頭を一撫ですると、軽く右手に何かを握らせる。開くとそこにはいちごみるく味のキャンディー。

「これ、どうしたの?」

 問いかけたら内緒話をするように、和が私の耳元に唇を寄せた。

「ホントは、いってきますのキスしたいけど、みんながいるからできないでしょ。その代わり」

 人差し指を唇に当てた秘密だよってポーズが、こんなに似合うアラサーがいるだろうか。そんな悪戯っ子の和に、私は何度でも恋に落ちる。付き合い始めて何年もたち、結婚までしているというのに恋なんておかしな話かもしれない。それでも、こういうことがある度にときめく胸は、彼に恋していると訴えてくる。

「帰るまで、これを俺のキスだと思って」

 熱くなる頬を誤魔化すように、手の中のいちごみるくを強く握りしめた。


「おかえり」
「ただいま」

 仕事帰りの和を玄関で迎える。予定よりも早く帰宅できて嬉しそうな和に唇を求められて、それを差し出した。軽く重なった唇から香るのはいちごみるくの甘い香り。

「ちゃんとなめて待ってたんだ。いい子」

 ふわりと笑う和に、少しだけ恥ずかしくなって反論する。

「和からもいちごみるくの匂いするんだけど」

 この返答は予想していなかったのか、目を丸くした和がすっと私の腰を引き寄せる。こめかみに口付けると囁きを落とした。

「家に着くまでお預けだったキスの代わり」

 切ない声色に背筋が少し粟立った。

「まだ足りないから、もっとちょうだい」

 言い終えると私の顎に左手をかける。くいっと上を向けられて視線が絡み合った。徐々に近づく唇が重なる直前で目を閉じる。次第に深くなる口づけに、ゆっくりと彼の首へ腕を回した。


 あなたの言葉に、視線に、絡まり合う熱に。

 もうずっと恋してる。


(ニノ、あいに何渡したの?)
(え? 何のこと?)
(しらばっくれるなよ。何か握らせただろー)
(さぁ?)
(リーダー、きっと教えてくれないし諦めなって)
(そうそう。こういう時のニノは頑固だからね)
(それにしても、あんたたち離れる度に、いつも名残惜しそうだね)
(だって本心だからね)
(おいおい、のろけんなよ。見てる方が恥ずかしいわ)
(それについては、ホント申し訳ないとしか言えないなぁ)
(どうせ一緒の家に帰るんでしょ。数時間離れるくらい何ともないでしょ)
(そうなんだけど。こればっかりは恋だからね)
(結婚してて恋って。何青春みたいなこと言ってんだよ!)
(ふふふ。仕方ない。ときめくんだから)
(今日のニノどうしたの? 何か素直すぎて気持ち悪い……)
(幸せそうだってことで、そっとしとこ……。汗)

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