カレット
よん
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「うはは、なんだそれ櫻井、お前らしくねえな」

やっぱり、とため息をつきながら酒を飲む。
今日は仕事終わり、他の営業所も含めた同期で集まって飲み会をする約束でいた。といっても、湖山は予定があると不参加なため、六花からは櫻井のみの出席なのだが。
せっかくのプレゼントだしと置いておいたうさぎスタンドだが、案の定目ざとい三国と武井に笑われ、そのまま持って帰ってきてしまった。
うっかり鞄からはみ出したところを同期に笑われ「もらったんだよ」と返す。

「女か。相変わらずモテやがって」
「男だよ」
「ええ?」

可愛い趣味してんなあ、と吹き出す同期にまったくだと思った。朝比奈のあの様子からして、本当に可愛い物が好きなのだろう。新たに知った朝比奈の一面はひとまず記憶の隅に留め、また別の同期に絡み出した男を横目に酒を飲んでいると、不意に櫻井の肩が叩かれた。

「よ。久しぶりだなー、櫻井」

明るく声を掛けてきた男を見て、櫻井も笑顔になる。

「高島。久しぶり」
「隣いいか?」
「もちろん」

グラスを片手に、高島が櫻井の隣に座る。グラスの中身が空に近いのを見て酒を注いでやると、高島はありがとうと笑って酒を煽った。

「湖山は来てねえのか」
「予定があるんだってさ」
「そーか、残念」

元々湖山は高島と同じ営業所に配属されていたのだ。仲もよく、久しぶりの飲み会で話もしたかったのだろう。残念がっていた高島だが、ふと表情を明るくして櫻井を見た。

「つーか、櫻井、主任になったんだって? スゲーなお前」
「なんで知ってるんだ」
「湖山から西崎へ、西崎から俺へ」

俺からいろんな人へ、と高島が目線を送るのでつられて周りを見ると、笑顔の同期たちと目が合った。

「櫻井おめでとう!」
「よっ櫻井主任〜」
「もっと飲めよ櫻井」

やんやと盛り上がり次々と掛けられる祝いの言葉に、櫻井は驚いてから笑みを溢した。

「ありがとう」
「何かあったら連絡しろよ、俺は意外と役に立つぜ」

先ほど話に出た西崎が笑って言う。櫻井も笑って礼を言い、温かい気持ちでグラスに口をつけた。
人に恵まれた環境にいると思う。だからこそ、こうして楽しく仕事を続けていられるのだった。
こうして同期たちと集まるのは初めてではなく、もう何度も飲み会を開いている。櫻井たちの代は特に仲がいいとも言われ、同期の存在というものは大きかった。いい営業所、いい仲間に囲まれて仕事ができる。これほど恵まれたことはない。


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