短編集
ブルースター
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伊集の住む家は駅から徒歩三分、十四階建マンションの最上階角部屋である。
ライトアップされた華やかなエントランスを抜けてエレベーターで最上階まで上がり、伊集が鍵を開けて中に入る。玄関のセンサーライトが点き、綺麗に保たれた廊下が晒された。

「明日の夜まで、莉一帰らないから。言ったっけ? ゆっくりしてってくれ」
「フッフッフ、聞いてましたからそのつもりです」

リビングに通され、何か作るという伊集に甘えてソファーで待つ間、改めて部屋の中を見渡した。
十五帖は余裕の中、モノトーンでシックにまとめられたインテリアは、伊集らしいといえば伊集らしく、しかしどこか噛み合わない印象も受ける。それは他ならぬ同居人の影響なのだろうと思うと、間宮はいつも唇を尖らせそうになった。

「莉一さん忙しいんスか」
「いや、まあ忙しいには忙しいだろうけど……今日明日のは仕事じゃないな」
「なるほど」

納得、と何度か合わせた顔を思い出して頷く。
伊集のルームシェア相手・莉一が男で、それも件のバイの友人だと知った時は衝撃だったが、どうやら本当にただの友人らしかった。基本的に莉一がいない時に部屋にあげてもらっているため、多くのことは知らないが。
伊集が作ってくれた夕食を並べるのを手伝い、鰤の照り焼きを見つけて声を上げた。

「やった」
「美味いよな」
「伊集さんのは特別美味いんスよ」
「また」

そう言いながらも嬉しそうに椅子に座る伊集に、まだまだ褒めちぎりたいのを我慢して間宮も向かいに座る。
他愛ない話をしながら綺麗に皿を空けると、間宮は洗い物を引き受け、伊集は先に風呂に入った。
途中、先ほど買ったクッキーのことを思い出し、伊集がリビングに戻ってくると手渡した。

「伊集さん、これどうぞ」
「え、ありがとう。買っておいてくれたのか」
「好きっスよね、それ。紅茶の」
「うん」

素直に喜んでくれる伊集に間宮も嬉しくなり、その頬に軽く口づける。

「……ね、先、準備しといてくれてもいいっスからね」

ぴく、と震えた肩に笑い、「すぐそうやって」と赤くなる伊集に謝って、間宮も風呂を借りる。
恋愛慣れしていそうな見た目に反して恋人間の空気に慣れていないらしく、初なところもいとおしい。
あんな反応だが、間宮が風呂から上がって求めれば、恥じらいながらも応えてくれるに違いないのだ。
その姿を想像するだけで下半身が熱くなるのを感じ、間宮は急いでシャワーを浴びた。



「風呂ありがとーございました……あれ、」

ドライヤーも半ば、生乾きの髪でリビングに戻ると伊集の姿がなく、間宮は首を傾げた。
しかし、リビングと繋がる伊集の部屋の扉が僅かに開いているのに気がつく。電気はついていないが、人の気配を感じて扉を開けた。

「伊集さ」

ん、が消えて口が開いたままになる。

「あ……間宮、」

艶を含む声でベッドの上から呼ばれ、たまらず唾を飲んだ。
リビングの明かりにぼんやりと照らされた伊集は仰向けで、下着を膝までおろし、秘所を晒すようにして足を開いている。その穴は既にローションでてらてらと濡れ、なんと伊集の指を二本も飲み込んでいた。間宮が見つめる間も伊集はゆっくりと指を出し入れし、引き締まった腹はヒクヒクと動いている。

「準備、ン……っ、して、ぁ……」
「……っともう、あー、」
「あ、ぁッ……間宮、指ッあ゛ッ」

二本の指に加えて、ベッドに上がった間宮の中指が捩じ込まれ、伊集が声を上げる。

「ほら……伊集さんのイイとこ、こっちっスから」
「ぁひッ!?」
「こんなコリコリしてんのにわかんねーの」

関節一つぶん奥に押し込み、間宮と交わるようになってからいくらか膨れてきたしこりを容赦なく指の腹でこね回す。

「は、ッはあっあ゛ッあッそこ、そ……ッいやあ、ァ……ッぁ、イ、くぅぅ……いやだ、ンぁっ、や、間宮、これ、ぁッ準備、じゅんびッだから、ぁ゛はッだめ、イっちゃう、イくッイ゛、ァあんッ……ッ」
「伊集さんね、エロすぎ……イっていいよ」
「だ、め……っ、あ゛ッ間宮、間宮のッいれ、いれるから、準備して、ぁ……のにッ、間宮、の……っ」
「〜……わかりました、」

半年前まで男を知らなかったとは思えない。
照れ屋なわりに素直な伊集は、間宮が教えた男同士のセックスにも驚くほど従順で、予想以上の早さで間宮を受け入れることに順応していた。
たまらず伊集の中から指を抜き、ハーフパンツごと下着をおろすと、ゆるく勃ち上がった間宮のペニスが飛び出した。しかし完全に勃たせようと間宮が手を伸ばしたその時、伊集の制止が入る。

「はあ、ぁ、待っ……間宮、」
「はい」
「な、舐めてもいいか……?」
「へ」

突然の誘いに間宮が固まる。伊集は息を整えると身体を起こし、間宮と向かい合うようにしてわけを話した。

「前、上手くしてやれなかっただろ……練習したから、少しは気持ちよく」
「練習っ!?」

ぎょっとして確かめると、はっとした伊集が「ちが」と顔を赤らめた。

「もちろん、人じゃないからなっ……その、莉一が寄越した玩具があって、それを」
「莉一さんの玩具ぁ……?」
「あ、ああ……」
「あー、も〜……っ」

伊集の唇を塞ぎ、沸き上がった興奮と嫉妬を抑える。

「……練習すんなら俺にしてください、全部」
「……わかった……」

何度か口づけを交わした後、伊集が顔を落として間宮のペニスに手を添える。
ちろ、と先端に這わされた舌に短く息を吐いた。

「は……、は、ん、むぅ……」
「うぉ……」

伊集の唇に吸い込まれるようにペニスが覆われ、温かい咥内で蠢く舌がねっとりと責め立てる。次第に伊集が頭を動かすようになると、じゅぽ、じゅると淫靡な音が響いた。夢中でしゃぶられ間宮のペニスも熱と固さを増していく。

「んふ、ぉ……っぐ、ン゛っふう゛っ、んっ」
「はあ、……マジで練習、したんスね……気持ちぃ……」
「っ、ンん……ふ、ぢゅぷ……っ」
「どんくらい練習したんスか……? うッ、ぁ゛、は、……は、伊集さん勃ってるし……」
「っふぁ、はあ、は、ん……、やっぱり、玩具とは違うな……熱いし、どんどんでかくなるし……」

熱く濡れた伊集の舌がうっとりと裏筋を舐めあげる。

「こっちのほうが、舐めてるだけで気持ちいい……」
「……ちょっと出そうになったんスけど……っ」

堪えて伊集の顔を離し、その身体を押し倒した。

「間宮、まだ途中……」
「今度奥まで咥える練習してもらうんで、今日はこのくらいで」

不満げな声をあげる伊集のアナルに指を三本まとめて挿し込む。

「ぁ……っ」
「こっちも、せっかく伊集さんが準備してくれたんスから……早くしねーと乾いちゃうでしょ」
「んっはぁ、あ、あ、」
「よかった、まだちゃんと濡れてる……もう少しトロトロにしてから、ね」

ローションを注ぎ足し、軽く前立腺を擦って指を抜くと、伊集が勃たせたペニスにコンドームを纏わせてあてがった。ゆっくりと腰を突き出し、欲しがるようにヒクヒクと先端に吸い付く伊集のアナルを押し拡げる。

「は、ひ……ッは、っは、ぁはいる……ッ入っ、おっ……ぉ……っ」
「伊集さん、こーやって……ゆっくり入れられんの好きだよな、ッン、あー、締め付けすげぇ……っ」
「ん、あぁぁ……間宮、ッのぉ、きて……ッ熱い、間宮のっ」
「俺のなに?……何がきてんの伊集さん、教えて」
「ッんふぅ……っ」

奥に入りかけたペニスを焦らすように引き抜く。浅い箇所でカリを引っ掛けるように動きを止めたそれに、伊集の腰がカクカクと揺れた。

「そ、なとこで止まるな……ッ」
「ん?」
「ぃ゛あぁん……っ」

間宮が腰を回してゴリュ、ゴリュと前立腺を潰す。

「ひ、ッひィぁ……っそこ、こ、捏ねないれ、ぁへ……ッ」
「なにで?」
「あ、ぁあぁ……あっ、」

羞恥に追い詰められた伊集のペニスからビュッと我慢汁が飛ぶ。

「ち、チン……チンポ、っんく、間宮の、チンポぉ……ッ!」
「あー、たまんね、やらし〜……」
「はあっ、言ったぁ、から、もっ……ぉ゛ッ!?」

伊集の揺れる腰を掴んだ間宮が根元までペニスを挿入する。勢いよく打ち込まれた伊集のアナルが絶頂と共に締まった。

「ぁ、ひ……ッぁ……っ」
「くっそ、すっげ締まる……ッ、後ろでイっちゃったんスかッ、ほら、チンポもっと奥まで入りますよ……!」

快感に涎と涙を溢れさせる伊集を横向きにして大腿を抱え、さらに深くまでペニスを押し込む。

「んひ、ィ゛いっ」
「ほらッ、奥当たってるでしょ、俺のチンポッ」
「間宮のッチンポ、あっチンポ気持ちい゛っでかいィ……っだめ、ァっチンポ、ふかッ……深すぎて、ァっはあ゛〜……ッ」
「はあっ、恥ずかしいこと言って感じちゃうんだから、伊集さんのエッチ……っ!」

二人の男の喘ぎ声と、肌のぶつかる音と粘液の混ざり合う音が響き、その間隔がどんどん短くなっていく。

「あっあっあっんぉッ、あぇっあっぁっアっ……ッ」
「ぉっ出る、出る……ッはあ、あ゛〜……ッ、イくッ!」
「あ゛ッぁう、間宮ぁ……っおれも、ぃ、イく、イぐっ……! ッんう゛ぅ、ふぅん……ッッ」

絶頂の瞬間、快感に蕩けた伊集の声が間宮の唇に吸い込まれる。コンドーム越しに中にたっぷりと注がれ、抱えられた伊集の足がびくびくと跳ねた。その間も舌を絡め、唾液を啜りあって、伊集のペニスからも断続的に白濁が飛ぶ。

「ん、ぉ……っ、はあ、ぁ……っん、はあ、はあ、はあ」
「ん、ちゅ……は、いっぱい出しましたねぇ、伊集さん……」
「はあ、ん……間宮だって、んっ……射精長かった、っはあ……」
「伊集さんがあんまりエロいから、あわよくば孕ませたいと思ってつい」
「そ、なこと言うな」

孕ませるなんて、と消えそうな声で赤くなる伊集にまた下半身が疼きかける。


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