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オルフェア大陸で一番の大都市と名高いセイファード王国。
この国は、ここ十数年間で経済的、はたまた、科学的、魔術的、領土的にも発展を遂げてきた。
国内も10年前までは至って平和だった。
しかし、何の事件もない平和な日々と言うものは長くは続かない。
8年前の某日、この栄冠を極めたセイファードの首都、王都に強い魔物の一軍が入り込んだ。
死傷者は数千人を越え、その魔物を駆除すべく、立ち上がった者達は皆壊滅へと追い込まれた。
その事を教訓にしてか、今の城下町の中央には、教会から賜った大きな白い塔が聳えており、その最上階から漏れるアーティファクトの青い光が結界となってこの町を守っている。
それから僅か二年後には、友好関係にあったはずのラグエス軍事共和国との戦争が勃発し、その火は未だに燃え続けている。
戦禍の原因は、平等でない条約、高すぎる物価や税金。
これが表向きな理由だが、国が金のために戦争を起こしたのではという見解も広がっている。
魔物襲撃の傷も治らぬ内に起きたこの戦争のお陰で、貴族ばかりが潤い、下町にはそのお零れしか回ってこないようになった。
それに比例するように、王都には良からぬ者共が増え、捨て子や虐待も増えていった。
いくら国王に訴えようとも、声は届かない。
国の治安は下がっても、国税は上がる一方。
都民の不満は募るばかりである。
新聞や住民を見てもその現状は明らかだった。
不良たちの抗争が激化した原因も、こういったことがあるかもしれない。
王都の端に位置するこの孤児院にも、その鱗片は目に映っていた。
孤児院のある下町の住民達は、皆が皆騎士に頼らず、どうしても何とか出来ないことはギルドを頼る。
何故なら、騎士に頼むよりも仕事が早く確かな上良心的だからだ。
ただ…この王都にギルドは無く、依頼をするにはギルドの総本山であるリベラルまで、魔物の徘徊する道を、歩きなら4日、馬車なら2日かけて行かねばならない。
一般的なご老人や子供には過酷な旅だ。
だからこそ、危険だと警笛を鳴らす者もいる。
それが孤児院の主・リオールだ。
リオールは、8年前から下町で孤児院を経営している手前、下町の住民の挙動には敏感だった。
今まではなんとか、若者に行かせるということで理解してもらい、孤児院の若者やリオール自身も何度か代理で依頼に行ったことがあった。
これまでは、それでなんとかなっていた。
だがある事件によって、その方法は取れなくなり―――
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