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春の入り、気温もまだ肌寒い晴れの日に事は起こった。
* * *
時刻は昼下がり。
その孤児院では昼食を終え、皆が思い思いに好きなことに没頭していた。
「…やっぱり、下町にギルド、作った方がいい気がするんですよねぇ…。」
テーブルの奥の方に座っているリオールが、そう呟きつつ紅茶の入った白いティーカップを傾けた。
彼の表情は少し困ったような、悩ましいようなものであり、とても軽い気持ちで発言した様子ではなかった。
「…だから、そんな簡単に作れるもんじゃないって何回言わせるんだよ。」
読んでいた本から顔をあげず、シグマリートがやや不機嫌そうに声を上げた。
「わかっていますよ?」
ジトリとシグマリートを見、すらすらと王都へのギルド創設についての条件を述べるリオール。
「"王都にギルドを建てるには、国王の承認と、現在リベラルを纏めている7つのギルドそれぞれのギルドリーダーに申し立てをしなくてはならない"
"国王の承認がなければ、他5つのギルドから承認されたとしても、ギルドを建てることはできない。
逆に、国王の承認があろうと、5つのギルドのうち一つでも承認しなければ、その団体はギルドと認められない"
…でしょう?」
「…それもあるが…、ユキが言ってた人件費とか、ハヅキが言ってた人員とか、どうするつもりだよ。」
「ギルドメンバーなんて、オレ達がなりゃあいいだけの話だろ?オレ達がやりゃあ、人件費も人員集めも要らねぇし。」
なぁ?
と、リュートが、少し離れた席にいるミカンに問う。
「別にいいんじゃない?面白そうだし。」
ノートから目を離さずにミカンが答えた。
"な?"
と得意気にリュートが笑う。
「な?じゃねぇよ、その顔やめろムカつく。
…つか、リュートもミカンもリオールに甘いんだよ。」
シグマリートは睨み付けるようにリュートを見、溜め息をつくように言った。
「だってここの主様ですし。」
ミカンは真顔で言い、リュートは"そうだぜ。"と頷く。
「大体堅ぇんだよシグマリートはー。もっと軟派に行こうぜ?」
「…あ゙?」
ニヤニヤしながらシグマリートの肩を叩くリュート。
それに機嫌を損ねたのか、シグマリートが睨む眼を鋭くし、ドスの効いた声を発する。
「まぁまぁ、シグマ君落ち着いて。
あとリュート、シグマ君が軟派になったら違和感しかないからやめて」
そんな二人に割ってはいるように発言し、シオンは笑った。
ただしリュートに向けた表情は目が笑っていない。
「なんだよ二人とも、そんな怖ェ顔すんなって。
冗談に決まってんだろうがよー。」
口を尖らせ、リュートは着席した。
「…はぁ…ともかく、今の国王陛下じゃGOサインを出してくれる見込みもねぇし、ただでさえリオールはあの豆ダヌキと仲が悪い。
国王陛下の承認を貰いに行った時点で確実に失敗するだろ。」
豆ダヌキとは、現在城の中で最も権力を持った大臣、ドルマン氏の俗称である。
由来は、男にしてはふくよかなその体格から来ているようで、下町では影でそう呼ばれている。
「そう悲観的にならずとも…。要はあの狸のような大臣殿さえどかしてしまえばいいだけの話でしょう?」
リオールは苦笑し、簡単なことだとでも言いたげに話を進めた。
「…そんなこと出来るのか?」
怪訝そうな顔のシグマリートに、リオールはにっこりと笑って返答した。
「えぇ。
だってほら、私先王とは仲良くさせていただいていましたし。」
「「…は!?」」
リオールの発言に、四人はすっとんきょうな声を上げる。
「いやぁ、少しの間だけ現国王の教育係をさせていただいてたんですよー。
…あら?言っていませんでしたっけ?」
リオールは皆の驚きように首をかしげた。
彼は知っていると思っていたようだが、彼が当然ながら彼等に話した事実はない。
「し、シグマ君、知ってた?」
「いや、初耳だな…」
シオンでさえシグマリートに確認するほどの衝撃を受けたらしい。
シグマリートは聞いたことがない、と首を横に振っている。
「おや…これは失礼いたしました。」
微笑みつつ悪びれる様子もなく紅茶を飲むリオール。
「ともかく、あの豆だぬきさえ押さえればいいのなら、心配御無用。楽勝です。」
カップを置き皿に置き、にっこりとリオールは笑う。
「ってことはよ、本当にギルド作れるんじゃねぇ?
こりゃすげぇ!」
「ホントにリオールって顔広いよねー!」
目を輝かせるリュートの隣で、ミカンが拍手を贈るような動作を取る。
「…はぁ…(そう簡単にはいかないと思うんだがな…)」
シグマリートはリオールを囲むそんな二人を見て、少し呆れたように溜め息を吐いた。
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