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−遭遇−

結局のところ、有益な情報は、"雨の日に出る"と、"路地裏が出やすい"の二つだけだった。

雨の日と路地裏。
その辺りに重点を置く事にした俺達だったが、いつまで経ってもそれらしきモノは現れなかった。
そして、数日経った雨の日、事は起こった。

   * * *

ザーザーと降り続く雨。
この雨は昨日から降っており、止む気配がない。

「…そろそろ行く時間だな…。」

憂鬱そうにシグマが言う。
それを合図にしたように、シオン、カナタが立ち上がる。
外に出ようとシグマが立ち上がった時、事は起きた。

外から若い女の悲鳴。

三人は顔を見合わせ、急いで外に飛び出した。
悲鳴の聞こえた方に向かう。

路地裏の手前、少し開けたところに、女性は立ち竦んでいた。

目の前にあるのは、無惨にも食い殺された男の死体。
足元には赤黒い液体で水溜まりが出来ており、死体の首から上はない。

「なんだよ…これ…。」

絶句しながらカナタ。
他二人も呆然と立ち尽くしている。

「助けてくれぇぇ!!!!」

そこに飛び込んできたのは、少し前に戦ったハゲ反り込みの男の手下。
彼は、左腕が無かった。

「どうしたんですか!?」

シオンが逸速く我に帰り、男に駆け寄る。

「ば、化け物だ!!化け物が出やがった!!速く、速く助けてくれ、お頭が食われちまう!!!!」

チンピラは焦りながら言った。

「…どの辺りだ。」

今まで黙っていたシグマが口を開いた。

「そ、そこの路地を曲がった裏だ!!」

「…わかった。」

男からそれを聞くなり、シグマは駆け出していった。

「あ、おい、待てよシグレ!!」

カナタが一声上げ、慌てて二人が後を追う。

路地裏。

そこは惨状と化していた。

腕や頭の無い死体が数え切れないほど転がっており、周囲は赤黒い液体で溢れ返っていて血生臭い。

前にはハゲ反り込みの男と、何人かのチンピラ。

チンピラはハゲ反り込みの男の後ろに居り、ガタガタと震えていた。

その奥には、鈍く光る紫色の体を持つ、ムカデのような魔物。
体長は3mといったところで、顔の両脇には蟷螂の様な鎌を携えている。

口には人間を加えており、そいつは食われまいと必死にもがいていた。
しかしそれも虚しく、惨たらしい音をたてて咬み千切られ、赤黒い液体がブシャァと音をたてて溢れ出た。

呆然と立ち尽くす三人。

魔物が、ヌラリと光る朱色の瞳をこちらへ向けた。

「ひいぃぃぃ!!」

チンピラは、その圧力に負けて逃げ出した。

残されたのはハゲ反り込みの男。

魔物は次のターゲットを男に決めたようだ。

瞳をギラリと光らせ、こちらへ向かって突進してくる。

男は微動だもしない。

魔物が右の鎌を振り上げた刹那。
魔物の足元に弾丸が跳んだ。
木霊する銃声。
カナタが威嚇射撃を打ったのだ。

カナタの銃声で先に我に帰ったのはシオン。

男と魔物の間に短剣を持って割り込む。

「速く逃げて!!」

少し振り向いて声を張り上げるシオン。
彼の声は真剣で、必死さを帯びていた。
男は気圧されて、その場から立ち去っていった。

魔物は気が立っているのか、シオンに向けて咆哮した。

それを合図としたように、勇敢にもシオンは斬りかかっていった。

しかし敵の防御力は高く、短剣ではかすり傷程度にしかならない。

援護射撃をする一方で、カナタはあることに気がつく。

シグマが動いていない。

こう言ったときに斬り込みに行くはずのシグマが下を向いたまま動かないのだ。

「シグレっ!!どうした!!」

大声で呼び掛けてみるが反応がない。
周りに纏っている空気が違う。

次の瞬間、シグマは雷光のように大地を駆けた。

いつもより重みのかかった一撃が、魔物の脳天に直撃する。

しかし防御力が高いせいか、致命傷を与えるには至らなかったようだ。

反動でシグマが撥ね飛ばされた。
彼は音をたてて着地する。

雨のせいで髪が濡れているため、前髪で目の辺りが見えない。

彼の体は風の色をした光を纏っていた。
少量の風が吹いたときに見えた彼の翠の瞳は、紅に染まっていた。

カナタには、彼がなぜこうなったのか理解が出来なかった。

「…シオン、どう言うことだよ。」

シグマが前に出たため、後方に下がったシオンにカナタは聞いた。

「…トラウマモードが入っちゃったみたいだね。」

苦笑ぎみに言うシオン。

「トラウマモード?」

カナタは器用にも、技を放ちながら聞いた。
放ったのはブラッドショット。
弾丸に込めた闇の力が、相手に当たった瞬間に分散し、相手を追撃するといった技だ。

「うん…トラウマモード…!!詳細はシグレ君から訊いてね。」

などとさらりと言うシオン。
魔物の攻撃を避け詠唱に入った。







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