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「で、どこを探してみるの?」
シオンが口を開いた。
「…貴族のところは騎士がいるし、魔物は出ねぇだろうから、下町はどうだ。」
結界は、街の中央に位置する白い塔から広がっているから、その白い塔に近ければ近いほど、魔物は入ってきにくい。
その上貴族街は、城の結晶結界と被さっている所がある。
つまり、魔物が出るとすれば、外に近い下町だろう。
「…下町には騎士っていないもんね…。」
シオンが少し複雑そうに言った。
「騎士団の偉いやつが此方に騎士回してくんねぇもんなー。」
カナタはカナタで、不機嫌そうに言った。
さらに複雑そうな顔をするシオン。
「その辺にしておいてやれよ、カナタ。」
呆れて俺は口を挟んだ。
「えー?…だってその通りだろ?だからオレみたいな奴がいるんだ。」
…まぁ、そうなんだけどな?
「…ごめん。」
「何でシオンが謝んだよ。」
突然シオンが謝ったもんだから、カナタがキョトンとした。
「…はぁ…、兎に角情報探しがてら見回るぞ。」
何故だろう、すげぇ疲れる…。
* * *
「路地裏か雨の日に現れる…か。なんか嫌な魔物だね。」
シオンの言う通り、じめじめした所にいる辺りが俺も好きにはなれない。
下町のじいさんから聞いた情報だが、いまいちイメージが掴みにくい。
せめて写真か何かの痕跡でも残ってればよかったんだがな…ん?
カナタがぼんやりしている。
彼の目線の先には、少し緑のかかった白い壁に、緑色の屋根の家。
「カナタ君?どうしたの?」
シオンも気が付いたらしい。
カナタに声をかける。
しかしカナタは反応しない。
「カナタ君?カナタくーん。」
シオンは次に、カナタの側までよっていって横に立ち、目の前で手を降った。
「え、あぁ、何?」
いかにも何かありそうな反応を示したカナタ。
「ぼーっとしてたけど…大丈夫?」
「だ、大丈夫だ…なんでもねぇ…。」
フイッと顔をそらし、彼は、曇った表情をした。
明らかになんか隠してんな…。
「なんだよ、言いたいことあるなら言えよ。」
「…別にねぇよ。とりあえず、一休みするか。」
俺も疲れたしな。
一休みしがてら、さらに情報を集めてみることにしよう。
結界の塔の側で俺達は休憩をとった。
日はいつのまにか傾いて、夕暮れ時だ。
ふと、視界の端にいたカナタが見当たらない。
「シオン、カナタどうした。」
「え、いないの?」
木の下にあるベンチに腰掛けていたシオンに訊いたが、残念ながら帰ってきた返答はこうだった。
「はぁ…、探してくる。」
踵を返した。
…見失うと厄介だからな。
つか、リオールにどやされる。
ふと、先程の家が気になった。
…まさか、な…。
そう思いつつも、塀に昇る。
…ん、ちょうどいい木がある。
少しだけ昇ってみるか。
…大きな窓が見えた。
中には…、…予想通りカナタがいた。
…ん?
もう二つ影がある。
歳はヒートと同じぐらいか。
…家族…、いるんだな…。あいつ。
………。
家族がいるのに、危険に晒すわけにはいかねぇな…。
それから、塀を伝って地面に降りた。
塀に寄り掛かって数分後。
家からカナタが出てきた。
「うわっ!?シグレ…いたのか…。」
「…いたら悪いか?」
「いや、悪かねぇけど…。」
若干気まずそうに俯くカナタ。
「…ここ、お前ん家?」
目を合わせないまま訊いてみた。
「…あぁ。」
…やっぱりか。
まぁ、家族が別のとこにいること事態無いことだが。
「…お前、家族いる?」
「…、…弟と妹が一人づつ…な。親父達は、戦争で死んだ。」
「…そうか。」
…守れるのがカナタしかいないのか…。
「…カナタ。」
唐突に呼んだからか、彼はきょとんとした。
「な、なんだよいきなり。」
「…お前はここに残るべきじゃねぇか?」
真剣に言った。
いくら手練れとはいえ、モンスター討伐は死ぬ可能性だってある。
家族がいて、しかも下の奴しかいない上に、守れるのが自分しかいない奴を危険に晒すわけにはいかない。
「…何言ってんだよ。俺は、俺の好きでお前らに付いて行ってんだよ。」
へらっと笑って言ったカナタだが、瞳には決意が宿っていた。
「…、…そうか。」
この決意は生半可なもんじゃない。
へし折ろうとしてもへし折れないだろうし、へし折ったら面倒なことになる気がする。
「なら…行くぞ。」
カナタの少し先まで歩き、若干後ろを振り向いてから言った。
「…あぁ。」
軽くそれでいて明るめに返事をした彼は、俺の隣まではや歩きした。
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