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その時。
「すみませーん。」
若い女性の声が聞こえた。
「お?
早速来たか?依頼が。」
リュートがにまにまと嬉しそうに言う。
「はーい今開けますー。」
「阿呆か。
まだ設立も告知もしてねぇのに来る訳ねぇだろ。」
そう冷ややかにシグマが言うのが早いか遅いかでリオールが扉が開く。
するとそこには、栗色の髪をした美人が立っており、その脇には小さな子供が二人いた。
一方は気弱そうな様子の女児、もう一方は少々わんぱくそうな男児だ。
「おや、可愛らしいお客様ですねぇ。
何かご用ですか?」
微笑ましげな笑みを浮かべ、リオールは応対する。
「わ、わたしたちね、お薬貰いに来たの!」
「かあさんの病気を治したいんだ!」
「こら、そう急がないで。」
必死そうな子供たちに、それを落ち着かせようとする女性。
「…何やら込み入った事情がお在りのようですね。
ここじゃ何ですから、中に入ってお話を聞かせてください。」
優しい表情のまま、しかし真剣な口調で、三人を中へと招き、客室へと導くリオール。
「…あいつら、母親の病気をなんとかって言ってたな…母親は風邪か何かなのか?」
リュートが怪訝そうに首をかしげる。
「…いや、リオールを頼ってくるってことは風邪みたいな軽い物じゃないだろうな」
シグマは思案するようにそう言い、本にしおりを挟んで閉じた。
「……僕…お茶とお菓子、出してくるね。」
急ぎ足でシオンはキッチンへと向かう。
「…何かシオンくんも様子おかしいね?」
「…あいつは…母親を流行り病で亡くしてるからな。」
「…なるほど。」
シオンの動きを目で追うミカンに、悲しいような、優しいような口調で言うシグマ。
彼女はそれに、納得したように頷いた。
「ただいまー…って何これ暗い!」
「どうしたのよこれ」
ちょうど良いタイミングで、ユキとハヅキが帰ってきた。
二人とも深刻そうな雰囲気に驚いている。
「…ちょっとな。」
「何でもねぇって!
それより買い出しはどうだったよ?」
然もなんでもないかのようにシグマが言い、リュートがはぐらかすように話題を変える。
「このユキちゃんが買い出しに行ったのよ?上々に決まってんでしょ?」
「ユキさんほんと値切るのうまいんだよねー。」
その問いに、ユキは当たり前だとでも言うようにそう言い、二つにくくった鴇色の髪をさらりと後ろへ流す。
ハヅキは少し呆れたような、苦笑するような調子で目を伏せた。
「そりゃあよかった!
これでまた暫くは平気だな!」
リュートは満足したように頷き、笑った。
「それが…そうでもないのよねー。」
ユキが苦い顔をして溜め息を吐いた。
「…何だよ?なんかあったのか?」
首をかしげるリュート。
「…お金が無いのよ。」
「…いつものことじゃね?」
何とも深刻そうにユキは言うのだが、リュートはさも大したことはないという風に首を傾ける。
「いつものことじゃね?
…じゃないわよォ!死活問題よ!!」
「まぁまぁ…まだ卵とかあるんだからいいじゃn
「良くない!!一っつも良くない!!
て言うか働きなさいよ居候二人!!
シグマさんのアルバイト代に頼りきるんじゃないわよ!」
暢気なリュートに業を煮やしたように、ユキが声を荒げた。
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