拾参


こぽり、こぽりと口や鼻から空気が泡となって抜けていく



海の中
光が乱反射して、こんな状況じゃなかったら綺麗だなーって素直に思えるのにな






うーん、これ、俺死ぬのか?
まさかまさかの死因津波て…

いやでも出陣してから死んだし…けど討たれて死んだわけじゃないし…




沈んでいく体と無くなっていく酸素に比例して目の前が真っ暗になっていく


あの時と、同じように…

























「半兵衛、半兵衛、起きよ」



見知った天井、見知った部屋、見知った人物_____官兵衛、殿?




ここは、俺のいた、京都の屋敷…だったはず





俺の名前を呼ぶ官兵衛殿の声は、いつもよりも冷たくて、寂しそうで




「官兵衛殿…」




そっと官兵衛殿の肩に手を置こうとするが、手が透けていて通り抜けてしまう

まるでもう、俺の居場所なんて無いんだと突きつけるように



ああ、もう“いかなきゃ”いけないんだね
せめてもう一度、官兵衛殿と話したかったなぁ…

分かっていたことだけど、少し…いや、結構堪えるね


「…官兵衛殿、俺さ、…………………ううん、いいや」



もういくね





最後に伸ばした腕は光の粒になって昇華した

























「……………半兵衛?」



聞こえた気がした


あの男の声が


だが最期に聞いたような飄々とした声ではなく、酷く寂しそうな、諦めたような


「……郷には、その様な声は似合わんな…」


どうかあちらでは、あの気の抜けた笑顔でいてほしいものだ




黒服の男はそっと目を閉じた

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