拾肆


今度こそ“終わった”のだと思った


だからもう醒めることなど無いのだと思った












鳥が鳴く声に、瞼が開く


射し込むのは光


久しぶりに感じた綿の感触


俺は布団の中にいた



辺りを見てみるが、残念ながら知らない部屋だ


部屋の窓から見える大海、潮の匂い
それも残念ながら馴染みがない、知らないものだ



ここは、一体…?




「あ、目覚めましたか!」




突然背後から聞こえた声に振り返り警戒する



振り返った前にいたのは紫を纏った男だった



アンタ、誰?

そう言おうと口を開くが喉から声が出ない
出たのは本当に自分のものなのかと疑うような濁った音だけ


「ん?ああ、流石に声出ないか」


目の前の男は困ったように言った


「君、海で溺れて海水飲んじゃった上に数日間寝てたから喉が痛んじゃったんですよ」


そう言うと俺の前に湯呑みを置いた


「ほら、水。慌てずゆっくり飲んでね」


男が言った通り、中身は水のようだ
だが警戒は解かない

いつまでも湯呑みに口を付けない俺に男はまた困ったように笑って湯呑みを手に取り、一口だけ水を飲んだ


「毒かもって警戒してるんでしょ?大丈夫、これは正真正銘の水だよ」


ほら、だから飲みなよ

そう言って男は俺の手に湯呑みを握らせた

















「ご、ちそうさま…です」


「はい、お粗末様です」



水を飲んでから、男は腹も減っただろう、粥を用意したから食べなよとまた毒味をしてからこちらに寄越した

相手の意図は見えないがこの男から敵意が見えなかったため、今回はすんなりと受け取って上の会話となった


…別にこの男を信用してる訳ではないけど。違うからね!



食後のお茶(毒見済み)を啜っていると襖の奥から重量感のある足音が聞こえてくる





男を見ると苦笑いをしていた
そして男がすみません、と言った瞬間に襖が開く



現れたのはまた、紫を纏った男


それも銀髪隻眼、そしてとても大男である

あの戰場で見た、あの





「よう!目が醒めたかい、毛利んトコの兄ちゃんよ」





長曽我部元親だった

- 14 -

*前次#


ページ:



ALICE+