何とか京まで辿り着いたは辿り着いたけど…




「屋敷が無いってどういうことさ…」





何というか…予想していないことばかり続くなぁ
はあ……




しかも街並みまで変わってるし…ええー…



まっさかと思うけど…



「またトリップしたとか?…いやいや、まさかそんな訳…」




ないと思ってたけど、ならちょっと納得しちゃうんだよね。俺の知らない戦が行われてたこと


三成のあの文字が彼の戦装束に象られてたこと






俄には信じられないが…否、信じたくはないがそうなのかもしれない






「とりあえず、休めそうな所に行こう」






何故か懐にたんまりとお金入ってたし

久しぶりに団子でも食べよっかなぁ












適当な甘味屋で団子を頼み、その味を堪能する



うん、美味しい。甘味なんて久方振りだから余計に美味しく感じるよ



最近は味気ない食事と苦い薬ばかりの生活だったからなぁ



もっちもっちと団子を咀嚼していると、目の前に影が差した




見ると、茶の長い髪を頭の上で一括り___所謂ポニーテールにし、小猿を肩に乗せた大柄な男が立っていた





「隣、良いかい?」



「どうぞ」





特に断る理由も無かったため、許可を出す


ずずっと茶を啜っていると、隣の男が話しかけてきた





「あんた、京に来たのは初めてかい?」



「いや。少し前からしばらく前からここに住んでるよ」




「そうなのかい…?でも俺、結構ここに遊びに来るけど兄さんみたいな顔は始めてみるよ」



「それは仕方ないよ。だって俺、ここに来てから、屋敷から出てなかったし。養生してたからね」


「屋敷…兄さんもしかして良いとこの人?」




次々と、彼は俺に話しかけてくる


京の喧嘩祭りは凄いだとか、桜が咲くと小田原に負けないくらい綺麗だとか



最後の団子を頬張る





「今更だけど俺、前田慶次って言うんだ。…あんたのさ、名前教えてくれないかい?」




串を皿の上に置き茶を飲み干す


うん、おいしかった。また来てみるのも良いかもね




さて、最後の質問に答えますか





「俺の名前は竹中半兵衛だよ」





お金を店の娘に渡し、立ち上がる



彼…前田慶次は固まったまま動かない




それにしても…はて、前田慶次…あの風来坊殿と同じ名前だな
体格が同じくらいと言う以外、似ていないが



そんなことを思いながら俺はまた今日の町を歩いていく




…そういえば今日の宿、どうしようか



















政宗より少し年下くらい

下手をすると女の子にも見える、そんな少年に会った


京では見かけない顔だったから、俺はついつい声をかけてしまった



何処から来たのか、その質問から始まった



そして話している内に彼の名前を聞いていないことに気がつく




「…あんたのさ、名前教えてくれないかい?」




流石の俺でもいつまでも“あんた”や“兄さん”と読んでは失礼だと思い今更だが名前を聞いてみる




すると、少年の口から出てきたのは思いもしない名前だった




「俺の名前は竹中半兵衛だよ」




竹中半兵衛




俺の、かつての友と同じ名前



頭が真っ白になって、夢吉に頬を叩かれるまで俺は呆然としていた


はっとして隣を、周りを見てみるが、少年__竹中半兵衛はすでに甘味屋を出た後らしくその姿は無い



「どういう事だよ……」



頭を掻くが、やはり訳が分からないままだ




「でも、半兵衛は半兵衛でも…全然違ってた」



今日出会った半兵衛は、俺の知っている半兵衛と違い、大人びてはいるがあどけない、そんな少年だった


…もしかしたら、偶然同じ名前なったのかもしれない



そう、無理やりだが思い込むことにした

- 5 -

*前次#


ページ:



ALICE+