「――邪魔だ!水色!」
ミネルバに取り付こうと向かってきた“アビス”へ“フェンリル”は急加速した。相手がミネルバに標準を合わせたのと同時に、圧倒するスピードでその両腕を斬り落とす。
「お前に構ってる暇はねぇんだよッ!」
海に蹴り落としたそれを見下ろして、吐き捨てる。
海に落としても水中戦用の“アビス”は平気なことは分かっていたが、両腕と両肩部のシールドが損傷すればこれ以上向かってくることも無いないだろう。今のジークには一機に固執している時間は無い。
遠くに見える白い機体を視界に捉えて顔を顰める。
「フリーダム…!」
突如現れたその白い“不明機”の名を呟いた。
10枚の翼を広げて混乱する戦場を見降ろしているそれは、先の大戦で伝説となった機体だった。
先の大戦の終結のきっかけとなった“第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦”。
ザフトと連合が激しい戦闘を繰り広げる中、国家の枠を越えて戦った戦艦があった。連合を脱走した“アークエンジェル”とザフトからクライン派が奪取した“エターナル”、そしてオーブ軍の“クサナギ”の3隻。かつて、ザフトを脱走したアスランもそこに身を置いた。
大戦中の彼らに関する資料は何も残っていない。それが余計に彼らを「大戦を終結させた英雄」として神格化した。
何故今さら現れたのか、何が目的なのか。突然現れた彼らの意図が分からず、ジークも困惑していた。“フリーダム”も“アークエンジェル”も、明確に敵だとザフトが判断しない限り無闇に討てない。
ミネルバの艦首砲を攻撃してきた彼らは、今は劣勢のミネルバを守るような行動を取っている。
まさか本当にオーブ軍の戦闘を停めたいだけだというのだろうか。
海に着水したミネルバを敵機が取り囲む。アーシェの“フリッグ”、レイとルナマリアの“ザク”が必死に取り付かせまいと応戦を続けていた。
ジークも次々と敵機を斬り落としながら、顔を顰めた。
この混戦した状況では、“アレウス”を拿捕などと考えている場合ではない。目の前の戦況を切り抜ける方が優先だ。
思い通りに行かない歯痒さにジークは苛立ち、“フリーダム”を討たなかったかつての自分を慚愧した。
「伝説のままで居てくれよ…キラ・ヤマト」