「ロドニア…!」
ファントムペインの洋上母艦“J.P.ジョーンズ”
ネオとのミーティングが終わり、艦内の通路を歩いていた時だった。
先を歩いていたスティング、フィーネ、アウルは、後ろから小走りで追いかけて来たステラに振り向いた。
「ロドニアの
ステラが不思議そうに首を傾げて3人を見る。
「なにって…」
3人はお互いの顔を見合わせた。
「俺達が前に居たとこだろ」
「何を今更」とアウルが呆れ顔で言う。
「どうした?いきなり…」
スティングが眉を寄せた。
いつもと違う様子のステラに、フィーネも胸騒ぎを覚えた。
戦闘以外ではぼんやりとした印象のステラだが、今は何かに焦った様子だ。
ネオとのミーティングを終えたフィーネ達は、ネオと離れるのを名残惜しそうにしていたステラだけを置いて先に隊長室を退出していた。
その後に何か良くないことが起こったのかもしれない。
ステラは必死に何かを伝えようと辿々しく言葉を紡ぐ。
「ネオが…ネオが、“悪いことにザフトが”って…」
「ザフト!?」
アウルが驚いたように声をあげた。
「ロドニアの
ステラの肩を勢いよく掴んで、アウルが詰め寄る。その形相にステラは身をすくめて押し黙った。
「なぁ!?ステラ、言えって!」
「アウル、落ち着け!」
スティングが慌てて間に割って入ると、アウルはスティングに言った。
「落ち着いていられるか!?ザフトが関わっているなら良くないことだ!!」
アウルの取り乱し様は異常だった。
突然怒鳴られたことで震えて黙ってしまったステラの肩を抱きながら、フィーネも困惑した様子で彼を見つめた。
「だって!
その瞬間、アウルがヒッと小さく悲鳴をあげた。
“母さん”
その言葉に、スティングとフィーネは顔を強張らせる。
――アウルの“ブロックワード”だ。
「バカ!お前…!」
スティングが慌ててアウルの肩を掴む。
「あ…あっ…」
大きく見開かれた瞳からとめどなく涙があふれた。
アウルが「母さん」と呼ぶ人物は、勿論本当の母親ではない。
「かあ…さん…母さん、が…」
崩れるように床に膝をついて泣きじゃくるアウルを、スティングは必死に宥めようとする。
「かあさんが…死んじゃうじゃないかッ…!」
フィーネの腕の中に収まっていたステラの肩が大きく跳ねた。
マズい…
“死”という言葉に、スティングもステラの様子を伺うようにこちらに視線を向けた。
フィーネは思わず抱きしめる腕に力を込めた。
「しんじゃう…?」
ステラの瞳が不安げに揺れた。
「くそッ…」
スティングは苦い顔をして舌打ちをした。
こうも連鎖的に“ブロックワード”が発動してしまったら、もう手が付けられない。
「しぬの…?だめ…こわい…」
「ステラ。大丈夫、大丈夫だから…ね?」
ガタガタと震え出したステラを抱きしめて、フィーネは必死に言い聞かせる。
「大丈夫、みんな側に居るから。大丈夫よ」
「だいじょうぶ…」
「そう、大丈夫」
少しだけ落ち着いた声色が返ってきた。
フィーネは安堵した。今回のステラの場合、連鎖的なものだから前より混乱していないのかもしれない。
そう油断した時だった。
ステラが何かを思い出したように呟いた。
「シン…」
「え?」
「守る…そしたら、死なない…」
「ステラ?」
突然、ステラはその小さな身体からは想像出来ない程の力強さでフィーネの腕を振りほどいて、どこかへ走り出した。
「ステラッ!」
フィーネは慌ててその後を追った。