「うそ、でしょ…」
大きく破損したハッチを前に、フィーネは呆然と立ち尽くした。
ステラが“ガイア”で吹き飛ばしたのだ。
爆発に巻き込まれたクルーが数人倒れ込んでいた。
今まで何度かステラの“ブロックワード”が発動するのを見てきたが、こんなことは初めてだ。
『守る…そしたら、死なない…』
あの時、そう呟いたステラの瞳は、はっきりとした自我を持っていた。錯乱して飛び出しただけとは思えない。
「ロドニア…」
フィーネはハッとして格納庫のキャットウォークを駆ける。
そうだ、ステラの行き先はロドニアの研究所ラボだ…
早く連れ戻さなければならない。ザフトがどれくらい居るのか分からないなかで、単独で乗り込むのは無謀過ぎる。
「フィーネ!」
“アレウス”のコックピットハッチを開いた時だった。
背後から重々しい声が響いた。
「ネオ…」
「君の出撃は許可出来ない」
「なんで…!ステラを連れ戻さなきゃ!」
フィーネはネオに詰め寄る。
「行き先はロドニアの研究所ラボよ!ザフトの数が分からないのに、錯乱しているステラだけ行くのは危険じゃない!」
「敵がどれくらい居るか分からないのに、フィーネだけでステラを無事に連れ戻せるのか?」
「ッ…」
冷淡な声色に、フィーネは返す言葉を失った。
「これ以上、“損失”を出すわけにはいかないんだ」
「それは、ネオの命令?」
フィーネは鋭い眼差しでネオを睨んだ。
ささやかな反抗だった。
ネオだけの命令ならば、いざとなればフィーネは背いても咎められることは無い立場だ。だが、それも無駄な足掻きだとすぐに思い知らされる。
「ジブリール氏だよ。君の出撃は彼の許可が必要だ。分かっているだろう?」
その名を出されて何も言い返せなくなった。フィーネそんな自分が悔しくて、唇を噛み締めた。
目の前の男を睨む視界が滲む。
今、この男はステラを見捨てる決断をしたのだ。
あんなに懐いていた愛らしい少女を…