サトーは地球を見つめていた。
これまで何度も睨んできた青い惑星。忌々しい存在でしかなかったそれだが、今日だけは気分がいい。とても穏やかな気持ちだ。
《――設置完了。カウントダウンスタート》
仲間の声を合図に、サトーの機体“ジン”は離陸する。
立ち並ぶ無数の廃屋、凍った海。
眼下に浮かぶ無言の大地は、そこで起こった悲劇の凄惨さを見る者に語っていた。
悲劇の地、“ユニウスセブン”
地球、プラント間の全面戦争のきっかけである。
「アラン…クリスティン…」
サトーはコックピットに貼られた数枚の写真を指先で撫でた。
《ユニウスセブン、移動を開始しました!》
回線越しでも仲間の興奮が伝わってくる。
今日ここで行動を起こした同志たちの悲願…待ちに待った時がきた。
「これで、ようやくお前達に…」
ザフトの軍服を身に纏いともに敬礼する青年、自身の腕の中で幸せそうに笑う女…写真の中の彼等に微笑みかけても、言葉が返ってくることはない。だが、サトーは脳内で彼らの笑い声を再生することは容易だった。
もうこの世には居ない愛しい人のことを、一時だって忘れたことはない。
サトーはゆっくりと動き出した大地に向かって敬礼した。安らかな眠りを邪魔することを謝罪しながら。
しかし、彼らも分かってくれるだろう。
自分たちは彼らの無念を晴らすためにやるのだから。
「さあ、行け…!我らの墓標よ!」
サトーは声高らかに叫ぶ。
「嘆きの声を忘れ、真実に目をつぶり、またも欺瞞に満ち溢れるこの世界を、今度こそ正すのだ!」
動きだした墓標の先には、青い惑星が美しい淡い光を放っていた。