「――イザーク・ジュール。元クルーゼ隊所属エースパイロット、ヤキン・ドゥーエの英雄、文官評議員を経て、ジュール隊隊長…」
ディオニソスのブリッジ。
手元のデータを淡々と読み上げたジークの隣で、グレイが口笛を吹いた。
「まさにエリートじゃん」
なんとも頼もしいことで。気のない声で賞賛を呟く。
「これに、例の“ミネルバ”も加わるんだろ?俺等って必要か?」
「必要だよ。これ程の大きさだ、数は多いに越したことはない」
“ミネルバ”
昨日アーモリーワンで進水式を行う予定だったザフトの新型艦の名だ。所属不明艦による新型モビルスーツ強奪を受けて進水式もままならないまま出港後、急遽ユニウスセブンの破壊作業に合流することとなった。
「確か、ミネルバにはデュランダル議長が同乗されているとか」
「議長が?」
怪訝そうに眉を寄せたジークに、クロエが説明した。事件が起こった際、進水式に出席予定だったどこかの国の要人と急遽ミネルバへ避難したのだと。
「議長様の見守り付きではやり辛いな」
ジークは苦笑する。
「エルとイルは?」
「もうとっくに機体で待機してるよ」
グレイが肩を竦ませた。
「あいつらの眼、見たか?もうルンルンしてたぞ」
「“程々に”って言っておけ。今日の主役は俺達じゃない」
「それを聞いてくれるなら苦労しねぇよ。やらかしたら今日はお前が止めろよ」
じゃあな、と軽く敬礼をしてブリッジを後にする。
ジークは手元のタブレットをスワイプしながら、今回の作業内容を流し見ていた。
ふと、隊員名簿のページで手が止まる。
「この名前…」
――アーシェ・ヘインズ
ジュール隊の秘書官の名前だった。