大好きな“ギル”との久々の再会を喜ぶレイを残して、ジークはVIPルームを後にした。
廊下に出ると、部屋の前で待機していた赤服の兵士が大きなあくびをしたところだった。
エアリス隊副長グレイ・ワイアードは、ジークの姿に気付くと満面の笑みを見せた。
「久しぶりだな。隊長」
「ああ」
ジークも穏やかに笑い返す。
「悪かったな。急に地球に降ろして」
「議長のご指名だからな。断れないさ」
ロゴスに宣戦布告をしたデュランダルが、今混乱した地球に降りるのは無謀に思えた。難色を示す最高評議会の議員達を、デュランダルは特殊部隊の護衛をつけることで納得させた。
『旗だけ降って安全な場所から支持を出す大将には誰もついてこない』
デュランダルは、議会をそう説き伏せたらしい。
「相変わらず、大した役者だよ。あの人」
グレイは大きく肩を竦めてみせた。
「穏便なやり方は素晴らしいが、こちらとしては退屈過ぎる」
デュランダルが“ロゴス”の存在を世に知らしめてから、民衆は武器を取りロゴスの幹部の邸宅を襲撃した。ザフトが動かずとも既にロゴス幹部の半分が民衆の私刑によって命を落としたと聞いている。
活躍の場を奪われたようで、グレイは不満げだった。
ジークはそんな彼を宥めるように言う。
「お前にはこのままヘブンズベースに出てもらう。恐らく開戦以降一番派手な戦場になるぞ。楽しめよ」
「イルとエルが聞いたら羨ましがるな」
「2人の進捗状況は?」
「まだ何も。とりあえず宙域の目星はつけてるんだけどな…“ピンクのお姫様”はかくれんぼもお上手なようで」
「急げよ。彼女の存在は脅威だ」
ピンクのお姫様―ラクス・クラインの剣であったキラ・ヤマトを討ってもまだ安心は出来ない。アスラン・ザラの中にも彼女の“理想”は色濃く残っているのだ。この二人が再会することがあってはならない。
「もう一人の騎士はこちらで“廃棄”が決まっている。残るはお姫様だけなんだがな」
それが何より手強い…
ジークは考えを巡らせながら廊下を進んだ。
難しいその横顔を眺めながら、グレイがふと口を開いた。
「ところでさ…」
不思議そうに顔を覗き込んで言う。
「お前、その顔なに?」
青痣が残る左頬を指すとジークはピタリと足を止め、むくれたようにグレイを見つめた。
「…教えなきゃだめか?」
「差し支えなければ、是非」
好奇を宿した紅い眼が笑った。
ジークはその眼から視線を逸してボソボソと答えた。
目を丸くして事の経緯を聞いたグレイは、やがてその顔に喜色を滲ませ、廊下に大きな笑い声を響かせた。