「――どういう状況なの?これ…」
ガーティ・ルーからユニウスセブンの様子を眺めていたフィーネは、困惑した表情でネオに尋ねた。
ステラ達の機体から送られてくるユニウスセブンの映像には、ザフトの機体同士が交戦している様子が映し出されていた。
「うーん…ただ言えるのは、今回のことが自然現象ではなかったってことだねぇ」
「こんなこと…」
ユニウスセブンはプラントにとって特別な場所であったはずだ。多くの同胞が眠る墓標を地球へ落とすなど、コーディネーターの考えることは理解出来ない。
コーディネーターが勝手に浮かべた建造物のせいで、地球の人間は逃げ惑うはめになるのか。そんなこと、許せるはずがない。
「ネオ、“エグザス”を貸して。やっぱり私も出る」
フィーネは堪らずネオに詰め寄った。ガーティ・ルーには、フィーネの機体を搭載していなかった。
ただ眺めるしかないこの状況が歯痒い。
「いや、もう撤退だ」
ネオは艦長のイアンに信号弾の発射を指示した。
「このままだと、俺達まで一緒に地球に引き込まれかねない」
悔しそうに唇を噛んだフィーネをなだめるように、ネオはフィーネの頭を撫でた。
「大丈夫。フィーネの仕事はこれからが重要さ」
「さぁ、忙しくなるぞ」と眼下に迫る青い惑星を見つめて、ネオは口の端を吊り上げた。
限界高度を知らせるアラートが鳴り響く中、ジークは“フェンリル”の銃口を目の前の“ジン”に向けた。
「…すまない、サトー」
全員が撤退した今、ユニウスセブンは静かに地球と降下している。
《貴方には本当に感謝しているのです》
サトーは笑っていた。
《貴方のお父上には怒られるかもしれませんが…》
「後で俺から墓前に報告しておいてやるよ。親父からの責は俺が受ける」
《いいのですよ。お父上のあの大きな声も今となっては恋しいものですから。貴方がすべて背負い込む必要はない》
人柄、実力ともに亡き今も英雄として語られる父―ヴァン・エアリスを、かつての部下だったサトーは敬愛していた。
ジークが隊長の職を引き継いだ時、ヴァンの養子というだけのジークにサトーはそれでも尽してくれた。
停戦後、除隊し消息を絶っていた彼が再びジークの前に現れたのは半年前のこと。この計画を打ち明けられたジークは、彼らを止めることが出来なかった。むしろ、自分の為に利用しようと考えた。
お互いの利害が一致したとき、サトーはジークにひとつの願いを告げていた。
《――最期は貴方が、引き金を引いてください》
さあ、とサトーは達成感に満ち溢れた顔で回線を切った。
ジークは目を閉じた。
大きく深呼吸し、ゆっくりトリガーを引く。
瞬間、サトーの機体は目を焼くような閃光に包まれた。
鉄屑となった残骸が、割れた大地と共に地球へと落ちていく。
ジークはただ黙ってそれを見下ろした。