ザフトの軍事ステーションから、次々と戦艦が発進していく。その後ろをゆっくりと進む巨大な船が一隻。
大型空母“ゴンドワナ”
連合の部隊が着実にプラントに近付いて来ていることを受けて、出撃したものだ。
「噂には聞いていたが…凄いなここ」
ディアッカは、ボルテールより遥かに広いレクルームを物珍しそうに見渡していた。
「迷子になるなよ、アーシェ」
隣に居たアーシェにいたずらっぽく言う。
アーシェはムッとして言い返す。
「なりませんよ。子供じゃあるまいし」
「お前ならやりかねない」と、揶揄うディアッカの後ろでイザークが呆れたようなため息をついた。
「浮かれるなよ、お前ら。他の隊もいるんだからな」
「分かってるって。事態の深刻さも」
「いつ出撃してもおかしく無いんだ。気を緩めるな」
そう言った彼の表情はいつにも増して険しい。
連合の声明を受けてからこの数日間、彼の眉間にはずっと深い皺が寄っている。
アーシェはイザークの顔を横目で盗み見て、持っていたファイルケースをギュッと握った。
ユニウスセヴンで初めて戦場をリアルに感じた。
アーシェはその時、胸の奥底から何かが疼く感情が湧き上がるのを感じていた。初めて覚えたそれが恐怖だったのか、それとも他の何かなのかは数日経った今でも分からない。
ただ、ブリッジでただ戦況を見守ることしか出来なかった自分の立場に、アーシェは今密かに悩んでいた。
軍属であるといっても自分は文官。自分の力で何かを守る事は出来ない。
アーシェは深いブルーの瞳を閉じて、諦めてしまったかつての志を思い出していた。