「ねぇねぇ、次はどこまでやっていいの?」
ゴンドワナの格納庫、各々の機体を収容したエアリス隊はロッカールームへと向かっていた。
ジークの腕に少女がふわりと飛びついた。
少女の柔らかなショートヘアは、ライラックの花を思わせる紫色。
「戦争なら、今度は思い切りやっても怒られない?」
琥珀色の瞳をキラキラと輝かせてジークを見上げた。
小さな少女は長身のジークと並ぶとまるで親子のようだった。
幼さの残るその顔はプラントの成人年齢である15を越えていないように見える。それでも、愛らしい雰囲気の彼女が身に纏う軍服はエースの証である赤服だ。
「言葉には気を付けなさい。イル」 
「不謹慎だぞ」
2人の背後からクロエとグレイが諌める。
エアリス隊エースパイロット―イルミ・アーベルは2人の方を振り返って舌を出してみせた。
「戦争、するからここに来たんだろ?」
そう言ったのはグレイの隣に居た少年。
エルヴィン・ハルネスもまた、幼さが残る笑顔で無邪気に尋ねる。
「いつ始まる?」
「大人にはな、“本音と建前”ってのがあるんだよ。がきんちょ」
グレイはエルのグリーンの髪をガシガシとかき乱した。
ジークはピタリと足を止めて彼らに向き直る。
「ディオニソスの中とは違うんだ。言動には気をつけろよ」
イルが不満げに頬を膨らませる。
「ただ…」ジークはその頬を片手で挟んで潰して笑った。
「ここまで来たら、開戦は避けられないのは事実だ。次は好きにやっていい」
彼らの顔が期待で満ちた。
「期待してるぞ」と、ヒラヒラと背中で手を振って再び歩きだす。その後をイルとエルが嬉しそうに追う。
そんな3人の後ろ姿を見つめて、クロエはグレイに声をかけた。
「…隊長、ご機嫌ですね」
ここ数日忙しかったからか、常に険しい顔をしていたジーク。イルとエルに甘いのはいつものことだが、今日はよく笑う。
「逆だよ」
グレイは憂鬱なため息をついて前髪をかき上げた。
「めちゃくちゃキレてる」
議会での小言が効いてるんだろう。
「怒らせたのは評議員のおっさん達なのにな」
可哀想に、とグレイはこれから“八つ当たり”されるであろうナチュラルに向けて、哀れみの言葉を呟いた。