イザークは我が目を疑った。
軍本部から送られてきた通信文は、核を持った別部隊がこの戦線の死角からプラントに接近しているという知らせだった。
「核攻撃隊!?極軌道からだと!?」
イザークは慌ててその方向へと機体を反転させ、ブースターを上げる。他のザフトの部隊も同じように、戦線を離脱しようとしていた。
頭を過るのは、ユニウスセヴンの悲劇。
もう二度とあの悲劇だけは起こしていけない。
宇宙を駆けるザフト兵は、皆その想いで必死に目的の方向へと向かっていた。
「あれか!?」
イザークはプラントに接近するモビルスーツ隊を確認する。
同時にモビルスーツ隊からミサイルが放たれた。
「くそ!」
間に合わない。それでも必死にミサイルを狙った。
しかし、イザーク達がいる場所からでは遠すぎて、無数の射線は虚空を抜けた。
宇宙に浮かぶ銀色の砂時計の群れに向かって、それは進んでいく。
イザークは次にみるであろう光景を思って、悲痛な声を漏らした。
――また、守れない…
そのとき、プラントに向かっていた無数の核ミサイルと敵機は白い光にのまれた。
後方にいた連合の戦艦たちも同じように白い光に包まれ、閃光を放つ。
その眩さにイザークは目を細めた。
わずか数秒の出来事のあと、宙域に残ったものは何も無く漆黒の闇は静寂につつまれていた。




「いったい…なにが…」
イザークは茫然と辺りを見回す。
プラントの前に、一隻の“ナスカ級”の姿があった。
艦首には見慣れない装置が付いている。
おそらく先ほどの白い光の元はあれだろうと、イザークは直ぐに理解した。
あれほどの核ミサイルを一瞬で消し去った力に驚愕しながら、イザークは覚えのある戦艦の名を呟いた。

「…ディオニソス」