#07

C.E.56-コロニーL4“メンデル”
生後間もないその小さな生き物は、まだ焦点の合わない大きな瞳をキョロキョロとさせて辺りを見回していた。
その様子をガラス越しに見ていた男アルフォンス・ヘインズは、ワナワナと拳を震わせて振り返ると研究員を怒鳴りつけた。
「どういうことだ!?3つ作って2つはダメ。唯一の“完成品”があれだと?」
G.A.R.M. R&D(ガルムアールディー)主任研究員アニタ・ドナートは、落ち着いた口調で返す。
「申し訳ございません」
「目の色が違うではないか!しかも、“オリジナル”の性能より劣るとは!」
「今回は“オリジナル”自体も特殊でしたので。人工子宮とはいえ成功率は100%ではないと、ご契約書でも同意頂いてると思いますが」
「いったい、いくら払っていると思っている!」
「申し訳ございませんでした」
アニタは深々と頭を下げる。
ヘインズは彼女の頭上で「使えない」と吐き捨て、ガラスの向こうの保育器を忌々しそうに睨んだ。
「あれはもういい!あんな…気味悪い目をヘインズに置いておくわけにはいかない」
そんな彼の様子を冷めた目で見つめていたアニタが口を開いた。
「お言葉ですが、“ヴァルハラ製”でも良かったのでは?あそこは2年前あたりからやっと素体の数値が安定してきたと聞いています」
ヘインズはフンッと鼻で笑い飛ばした。
「あんな野蛮な獣の群れなど考えたくもないわ。私のはな、そういう類のものではないのだよ」
恍惚とした表情で彼は壮大な夢を語りだす。
「私の“フリッグ”は!いわば芸術だ!」

「美しく気高く…畏れではなく、羨望の眼差しのなかに存在するミューズでなくてはならない!いずれ、必ずナチュラルとの全面戦争はやってくるだろう。その時私の作品が混乱の世に降り立ち、その名を轟かせるのだ!」