「カーペンタリア基地…ですか?」
アスラン・ザラは困惑して立ち止まった。
先を歩いていた特殊部隊の2人が、目を丸くして振り返る。
「聞いてなかったのか」
黒いパイロットスーツの青年、ジークは意外だというように眉を寄せた。
「ミネルバは既にオーブを出港している。合流地はカーペンタリアに変更だ」
“ミネルバ”は地球の中立国オーブに停泊中であるはずだった。当初アスラン達3人はそこで合流する手筈だった。
「俺らはもう“この格好”では、あの国に入れないからな」
「え?」
「オーブはもう連合側ですからね」
赤いパイロットスーツのアーシェが「残念です」と痛みを含んだ瞳を伏せて言う。
「えぇ!?」
アスランは驚愕の声をあげた。
そんな彼に、2人は顔を見合わせて不思議そうに首を傾げた。
「お前、本当に何も知らないのか?」
ジークは呆れたように、アスランに告げた。
中立国を詠っていたオーブ連合首長国が先日、地球連合と世界安全保証条約を結んだこと。
日を経たずしてオーブ代表、カガリ・ユラ・アスハが結婚式の最中に誘拐されたこと。さらに、その誘拐が先の大戦で伝説となった戦艦“アークエンジェル”によるもので、オーブは今大混乱であると。
「オーブが、連合と?カガリが…結婚…?」
アスランはジークの説明に目眩がした。
困惑して頭を抱えるアスランに、アーシェが心配そうに声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ…少し、というか大分混乱してしまって」
「確かお前、オーブで代表のボディーガードをしていたんだったか」
ジークが聞いた。
「…はい。まさかそんなことになってるなんて」
再び開戦した世界に思い悩んでいた自分の背中を押してくれた恋人の結婚、かつての戦友達の予想外の行動…
自分がプラントに居たこの数日で大きく変わった状況に、アスランは酷く混乱していた。
「なにを考えているんだ…あいつら」
顔を歪めて考えを巡らせるアスランの背中を、ジークは「しっかりしろ」と強めに叩いた。
「今のお前がどうこう出来る話じゃないだろ。それとも、任務を放棄して今すぐ“アークエンジェル”を探しに行くか?」
「いえ、それは…」
沸切らない様子のアスランに、ジークは語気を強めた。
「お前が“また”任務を放棄するというなら、俺も俺の立場でそれなりの対応をさせてもらうがな」
プラントに害になるものは消す。漆黒の瞳は本気だった。
「お前、何しにザフトに戻ってきた?」
強い眼差しに射抜かれて、アスランはハッした。
「狼狽えてないで、今はここでの目的を果たせよ」
その言葉に、アスランは震える拳を強く握り締めた。
目の前に立つ赤いモビルスーツが自分の搭乗を待っている。
求めた力だ。過去に決別したはずの力。
「今度こそ悲劇の連鎖を止める」と宣言したのは自分だ。
「はい」
アスランは心を決めたように、目の前の“セイバー”を真っ直ぐ見据えた。