ザフト軍、カーペンタリア基地。
降り立った3機のモビルスーツに、格納庫は騒然としていた。
突如現れたそれを、“ミネルバ”のクルー達は物珍しそうに取り囲んだ。
「おいおい…あの黒いモビルスーツって」
「俺、アカデミーの授業でしか見たことないぜ」
ミネルバの若いメカニック2人が顔を見合わせる。
「…フェンリル」
赤服の少年レイ・ザ・バレルが、低く呟いた。黒い機体を見つめる表情は険しく、握った拳が小さく震えた。
「おい、レイ!いま降り立った機体…」
遅れて格納庫に走って来た赤服の少年が、息を切らしてレイに状況を尋ねた。相当急いで来たのか彼の黒髪が乱れていた。
レイは冷静な瞳で「あれだ」と、まさに今3機から降りてくるパイロットに目配せしてみせた。
3機のパイロットは、ヘルメットを外してこちらに向かってくる。
近付いてきた彼らの顔を確認して、黒髪の少年シン・アスカは驚愕の声をあげた。
「アスラン・ザラとアーシェ・ヘインズ!?」
オーブ代表首長のボディーガードだったはずの男と、士官学校時代の同期の少女だ。
「それに…」
混乱する頭はもう一人の見覚えのある男の名前が浮かばず、シンは助けを求めるように隣のレイを見た。
「ジーク・エアリス。エアリス隊の隊長だ」
「それだ!」
噂でしか聞いたことがない存在。特殊部隊の隊長だ。
初めて目にする伝説のような存在に感動しながらも、シンの興味は深いブルーの髪の青年アスラン・ザラに向けられていた。
「アスラン・ザラ…なんであんたが!」
険悪な表情でアスランに詰め寄る。
「もう、シン!口の聞き方に気を付けなさい!」
ルナマリア・ホークが慌ててシンをいさめた。
「彼は、フェイスよ!」
“FAITH”
議長に人格、戦績を認められた証。
こいつが?
シンは不快そうにアスランを睨んだ。
初めから喧嘩腰なシンに苦笑するばかりのアスランの隣で、黒いパイロットスーツの男が口を開いた。
「随分と威勢のいいのがいるな。ここは」
ジーク•エアリスは、アスランに「知り合いか?」と尋ねる。
「はい。アーモリーワンの事件の際に、カガリ…いえ、オーブのアスハ代表と“ミネルバ”に世話になって
」
「ああ、そこで繋がるのか」
「あんたといい、アーシェまで…どういうことだよ、これは!」
「もう!シン!いい加減にして!」
なおも食い下がるシンを、ルナマリアが必死に止める。
周囲のクルー達は姿勢を正して一斉に敬礼した。シンは若干の居心地の悪さを感じながら、渋々周囲にならった。
そんなシンの様子を、ジークは面白がるように眺めていた。
3人も礼を返して、集まっているミネルバクルーを見回す。やがて、アスランが落ち着いた口調で聞いた。
「乗船の許可を貰いたいんだが、艦長は?」
「確認してご案内します!」
すかさずルナマリアが前に進み出る。
「ああ、頼む」
ルナマリアに続いて3人がエレベーターに歩を進めると、シンがアスランに向かって声を投げつけた。
「ザフトに戻ったんですか?!」
「シン!あんたまだ…」
ルナマリアがシンを睨む。
シンは納得出来ないという顔で、アスランを見つめていた。
「まぁ…そういうことになるな」
アスランは振り返ると、曖昧な返事を返す。
「なんでです?それに、アーシェも…」
アーシェに視線をやると、彼女の青い目が真っ直ぐシンを見つめ返した。その目にシンは一瞬たじろぐ。
彼女は、こんな意志の強い目をする子だっただろうか…
「アーシェは、秘書官じゃ…」
「パイロットだよ」
アーシェはシンに背中を向けて歩き出す。
「ごめんね。もう、逃げないことにしたの」