「艦長!」
ミネルバがカーペンタリア基地を出立してから数時間後。索敵担当が声を上げた。
その声で、ブリッジ内に一気に緊張がはしる。
モニターはミネルバに接近しつつある敵機を捉えていた。
「“ウィンダム”…数、30です!」
「30ですって!?」
タリアは即座に悟った。
待ち伏せされていた…
「さらに後方から2機、うち1機は“カオス”です!」
アーモリーワンで強奪された機体。
それが今向かってきているということは、敵は宇宙で相対したあの不明艦“ボギーワン”だろうか。
「もう1機は…」
索敵担当が、戸惑ったように言う。
「この機体、データに無い機体です」
「連合の新型?」
映し出されたのは、白い機体。
タリアは忌々しそうに、モニターを睨んで叫んだ。
「ブリッジ遮蔽!対モビルスーツ戦闘用意!」
タリアの指示で、艦内に警報が鳴り響く。
彼女は大きくため息を吐いて、もう一つの難関が残っていることを思い出す。
この艦に議長が送り込んできた3人のエースの事だ。
自分と同じ“FAITH”であるアスラン・ザラ。
そして特殊部隊、隊長ジーク・エアリスとその部下のアーシェ・ヘインズ。
アーシェはともかく、アスランとジークの2人に対してはタリアは命令権を持たなかった。
同じ艦に3人も指揮官クラスがいるというのは厄介なことだ。
タリアが頭を悩ませていると、ジークの“フェンリル”との通信回線が開かれる。
《グラディス艦長、敵の数は?》
「32よ。うち1機は“カオス”。あと、不明機が1」
《不明機?》
「恐らく新型ね。データにない真白いのが居るわ」
タリアは冷静な口調で答える。
「分かってると思うけど、私には貴方たちへの命令権は無いわ」
出るのも出ないのも、彼らの自由。
本当にややこしい立場だ。
きっぱりと告げたタリアに、ジークは笑った。
《出ますよ。俺もアーシェも、もちろん“フェイス”のアイツも》
もう一つの回線が開かれ、モニターにアスランが映る。
「いいの?」
アスランは静かに、だが強い口調で言う。
《確かに指揮下にはいませんが、今は私もこの艦の搭乗員ですから》
ジークも頷く。
《艦のことは貴女の指示に従います。ただ、発進後のモビルスーツの指揮はこちらに任せて頂きたい》
「いいわ。宜しくね」
モニターに映った青年2人は頼もしげに敬礼して、回線は切れた。
タリアはため息をついて、肩を落とした。
緊迫した状況になって改めて思う。お互いの立場の問題はおいといて、戦闘ではあの2人がこちらについてくれたのは本当に心強い。
若いパイロットのみだった今までより、はるかに戦力は頼もしくなった。
それからすぐ、タリアは頭を切り換えて敵機を映すモニターを見据えた。