「地球軍に増援?」
アスランが眉を顰めた。
ミネルバの艦長室で“FAITH”の4人は地図パネルを囲んでいた。
「ええ。狙いはジブラルタルか…まだ分からないけれど」
タリアは淡々と説明しながら、目の前の3人の青年達を盗み見る。彼らは神妙な面持ちで地図を見つめている。
これほどのエリートが揃うと圧巻ね…
改めてこの指揮系統の難しさを実感する。ため息をつきたくなるのを我慢して続けた。
「この時期の増援なら巻き返しを狙ってのことでしょう」
「取られたものは取り返す…ってわけだ」
ハイネが肩を竦めた。
“ガルナハン”をザフトが堕としたことで、周辺の勢力図が変わってしまったのだ。支配都市を失った連合の焦りは一入だろう。
「その増援以外のスエズの戦力は?」
ジークが冷静に尋ねる。
その問いにタリアは苦い顔をした。
「数はともかく、“アレ”がいるのよ。インド洋のときの空母」
「セカンドシリーズの3機とアレウス…」
奪われたザフトの最新鋭の機体セカンドシリーズにはこれまでも手を焼かされてきた。どんな連合の量産機の集まりよりも、そのたった3機が戦闘での不安の種だ。そのうえ、連合独自の新型機まで投入して戦力を補強してきている。
もとより数で不利なミネルバにとって、状況は好ましくなかった。
「何処までも追ってくるんだな…」
ジークはうんざりしたように呟いて、それから
何かを考え込むように地図を睨んだ。
「それと…」
タリアはアスランに視線をやると、気まずそうに曖昧な口調で言った。
「その、今回の増援っていうのがね…オーブ軍なのよ」
「オーブ!?」
アスランは驚愕した。
「今は…あちらも連合側ですものね」
アスランは全身が冷えていくのを感じた。
次の作戦の敵はオーブだと…
オーブはアスランにとって第二の祖国だ。
その国を相手に自分は戦えるのか…
「でも、この作戦は周辺のザフト全軍に下った命令よ。避けられないわ」
タリアはアスランに言い聞かせる。
「今はオーブは地球軍、いいわね?」
「…はい」
ザフトにいる以上、プラントを第一に考えなければいけない。
アスランは苦々しい顔をして、拳を強く握った。
部屋に立ち込めた憂鬱な雰囲気を断ち切るように、タリアは意気高く言う。
「発進は、〇六〇〇。最前衛、ダーダネルス海峡に向かい、守備につきます」
敵が向かって来ているというなら、自分達がやるべきことはひとつだ。
3人のパイロットは互いに顔を見合わせて頷くと、タリアに敬礼して応えた。