羽化して、白に絡めとられる。


天使様。
真っ白な綺麗な羽と光り輝く天使の輪っか、真っ白な服に身を包んで、真っ白な髪の色をした美しい男性。私には天使様が見守ってくれているの。






突然だが胎児の時の記憶がある人はこの世に何人いるだろうか?殆どが無いに等しい。
稀に子宮から産道に降りる時の感触が残っているというパターンはある。
私は子宮にいた時の記憶がある。揺籠の中で揺られ、そして羽が生えた真っ白な男が私を抱く。ひんやりと冷たい手が私の頬を撫でる感覚は忘れられない。
子宮の外に出て私が産まれ、病院で母に抱かれながらその壁に寄り掛かる優しい目をした白い男は毎日私の側にいた。
そして母親が病室から居なくなると男は私のところに来て頭を撫でる。その感触がとても心地よかったのを覚えている。
そして私が3歳になるまで、白い男はずっと私の側にいた。少し言葉と言うものを理解し始めてから白い男の姿は段々と見えなくなってしまっていた。白い影のようなものはあるものの、実体としては見えない。
5歳になると完全に見えなくなってしまった。そして親が買ってくれた絵本を見るとあの男とよく似た服装、よく似た羽をした姿に目がいった。

あのおとこは てんしさまだったのだ。





てんしさまにあいたい。
完全に見えなくなってから2年、私はあのてんしさまに恋をしていた。ふわふわした白い髪に美しい容姿、絵本の中に出てくる王子様みたいで、私はそんな美しい人にずっと見守って貰えていたのだ。

てんしさまにあいたい。


てんしさまにあいたい。










夜、眠りにつき私は夢の中にいた。
白い空間、透明の階段、至る所にある雲。
御伽話にでてきそうな空間。
そして階段をコツン コツンと降りる音。



「名前」


ドクン、と心臓に響く声がした。
目の前にはあの時のてんしさまが立っていた

「名前、大きくなったね。会いにいけなくてごめん。」

てんしさまは私の頭を撫でて笑みを浮かべていた。ずっと恋焦がれたてんしさまが目の前にいる嬉しさで、私はてんしさまを思い切り抱きしめた。

「てんしさま、わたし、さみしかったの。もうあえないのかなって。やだ、やだよ。わたしのそばにいてよ。」

「名前、ごめんね。俺は天使だから、人間と干渉するのに少し時間がかかったんだ。また暫く一緒にいれるよ。名前の初潮が来るまでは毎日一緒にいようね。」

てんしさまは意味のわからない言葉を言っていたがまた一緒にいれるのだけで嬉しい。
私とてんしさましかいない白い空間は居心地が良くて、ずっとここにいたいと思った。



あれから毎日寝ると私の夢にてんしさまが会いに来てくれた。
てんしさまは不思議な力を持っていて、私を色んなところに連れて行ってくれる。
ある時は星空がきれいな草原、ある時は綺麗な海、てんしさまは私を抱えて羽を広げて色んなところを飛んで連れて行ってくれた。
てんしさまが私に何か呪文を唱えると水の中でも息ができるようになる。綺麗な海の中でてんしさまと二人で人魚姫の真似事をした。

水面がキラキラと反射する砂浜、てんしさまと二人だけの世界を歩く。

「名前、名前はずっと俺だけのオヒメサマでいてね。」

てんしさまは私を抱き上げて微笑む。てんしさまの目は綺麗な漆黒と灰色でキラキラと輝いて宝石みたい。

「てんしさまはわたしだけのおうじさまでいてくれる?」

「ん。勿論、約束ねー。名前、指切りげんまんしよ。」

てんしさまの小指に触れた瞬間心臓がドクン、と大きく波打った。





「約束だよ。」















あれから私は12歳になった。今日は私の誕生日、お母さんがケーキを用意してくれて友達に祝われてすごく幸せな時間だった。
23時を回ると強烈に強い眠気がきてベッドに倒れ込んだ。
目を瞑るとすぐに意識が飛ぶ、そして暗い視界は一瞬で白くなり、やがて雲が低空に沢山浮かぶ色とりどりの花畑と化した。

そして目の前にいるのは大好きな王子様。

「天使様!」

天使様は私にゆっくりと近づくとぎゅ、と力強く抱きしめた。

「12歳の誕生日おめでとう、名前。あー、俺感動して泣きそうかも。やっと、やっとだ。名前・・。」

天使様は感極まって少し泣きそうな顔をするから私は天使様を抱きしめ返した。

「天使様、泣かないで。祝ってくれてありがとう。」

「名前は優しいね。ねえ、名前。俺のこと好き?ずっと一緒にいたい?」

「当たり前だよ、私天使様とずっと一緒にいたい!」

そう言うと天使様は笑みを浮かべて砂糖のように甘く、甘く、溶けちゃいそうな表情をした。

「俺とずっと一緒にいるには儀式をしないといけないんだ。俺と名前が生涯ずっと一緒にいれるようにする儀式。君は人間だから、何もしないと俺のことはまた認識できなくなるから、今から俺と婚礼の儀式をしよう。」

「天使様とずっと一緒にいれるなら、私なんでもする。」

天使様は柔らかい笑みを浮かべて私のお腹に手を当てた。すると其処が一瞬キラキラと光り輝いた。

「名前・・ありがとう。初潮ももうすぐ来るね。条件は揃った。名前、恥ずかしいかもしれないけど、脱いで。」

天使様はそう言うと服を脱ぎ始めた。
白い肌に程よくついた筋肉、そして下半身には大きく反り立った肉棒に見惚れてしまった
私は服を全て脱いで天使様を見上げると、恍惚とした表情を浮かべていた。

「名前、綺麗。名前のココに俺のが入るけど、さっき痛く無くなるように魔法をかけたから心配しないで、名前はただ俺を受け入れて。」


私をゆっくりと押し倒した天使様は私の口にちゅ、と口づけると私の足をぐいっと上げて肉棒を私の中にギチギチと挿入した。天使様の肉棒はとってもおおきくて、痛みを覚悟したけどその代わりに頭の中でパチパチと快楽が駆け巡った。

「ん・・♡ぁう・・♡なに、これぇ・・」

「名前、気持ちいい?ちゃんと快楽を拾うように施したから。名前は今から俺だけのオヒメサマになるの。」

天使様は優しい顔をして奥に奥に肉棒を侵入させた。するとドバッと私のナカから血が出てきた。すると天使様はその血を掬ってぺろりと舐めた。その姿はとても色っぽくてドキドキしてしまった。たくさんの雲が広がり、色とりどりのお花が咲く神聖な空間で、私たちは一つになった。

「ん・・♡初潮おめでとう。処女も貫通したし、これで名前はもう俺だけのオヒメサマだね。ねえ、もう逃してやれないよ。哀れだね・・。俺なんかに目を付けられて。」

天使様はボソボソと聞こえない声で呟きながら腰をぱちゅぱちゅと動かした。快楽が大きくなってくる、私は耐えきれず口を半開きにして涎を垂れ流しにしていた。

「あ♡ぁ・・・♡んぅ〜〜っ♡ひぃ・・♡」

「可愛い・・♡」

「きもちぃ・・よぉ♡ぁ♡ああ♡・・てんしさま♡♡」

「ん・・・俺も・・♡」

天使様は恍惚でえっちな顔をしながら私の上で腰を激しく振り続けた。耐えきれない快感と共に心が満たされていく。
きゅぅとナカを締め付けた瞬間、天使様は「ぅあ・・・〜ッ♡♡」と唸って中にびゅるるる・・・とナニカを吐き出した。

そしてその瞬間、私の下腹がドクン!!ドクン!!と疼き始めた。
天使様は私のお腹が疼くのを察すると私をゆっくりと抱きしめた。

「名前・・。忘れないで。俺は必ずまた名前に会いに来るから。次会う時はもう永遠に離さないし離してやれない。」

天使様は悲しそうにそう呟く。私はまた天使様と会えなくなってしまうのかと涙を流した。天使様がだんだんと透けていく。
ドクン! ドクン! ドクン!
子宮がキュゥぅと小さくなったり膨張してお腹が張る。
透けていく天使様は私に口付けを一つ落とすと、笑みを浮かべた。
ドクン! ドクン! ドクン! ドクン!
鼓動が大きくなり、ナニカが下に下がっていく、便意が強くなっていく。






ぽとり。












あれから二年、私は天使様とは会っていない。会えなくなったのだ。
夢にも出てくることはなく、私は最初は待てたものの、一年経つと寂しさのあまり代わりを探してしまった。
中学生、思春期はそういうのには旺盛になるもので、友達はみんな彼氏がいた。彼氏のいない私を可哀想だと思ったのか友達は別のクラスの男を私に紹介をして、お試しに付き合った。


次の日彼は事故に遭って下半身不随になったのだ。彼の親御さんからの電話を受けて彼がいる病院へ向かい、入院している部屋のドアを開けた。するとそこには拘束用の器具でぐるぐるに拘束された彼がいた。
目の焦点が合っていない。

「天使様・・・ごめんなさい天使様・・。痛い・・!!痛い痛いいたいイタイイタイ痛い痛い痛い!!!!!!!!!!!」

半狂乱状態で叫び拘束用器具がミシミシと鳴る。看護婦さんが二人ほど駆けつけて鎮静剤を打つと彼は眠りについた。

「事故をした時のトラウマでPTSDになっているようですがーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーー。」


言葉が入ってこない。
彼は今天使様と言った。間違いない、天使様だと言ったのだ。



天使様は私の近くにいるのーーーーーー?





ーーーーーーーーーーーーーーー



彼が事故に遭ってから彼を私に紹介した友達は憔悴していた。そしてお互い余裕がなかったからか些細なことで喧嘩になってしまったのだ。

「ねえ、いい加減にしてよ!!!!あいつが事故に遭ったのもアンタのせいなんじゃないの!?」

「ッ・・・ちがうよ!ねえ、落ち着いて!」

「もうアンタなんか友達じゃない!!」

パチン!!!!
友達は私に思い切り平手打ちをした。そして友達はそのまま教室を出て行ってしまった。
私は痛みと、友達に分かって貰えない辛さで一人教室でわんわん泣いた。人と喧嘩したことなんてないからどうしたらいいか分からなかったのだ。


次の日友達が入院したと、別の友達伝いで聞いた。


学校が休みの土曜日、私は友達に謝りたくて友達の親に電話をして入院先の病院を教えてもらい足を運んだ。

病室のドアを開けると壁に向かって祈りを捧げる友達がいた。
よく見ると友達の頬に大きなしこりができていて、所々黒ずんでいた。

「天使様・・お許しください。お許しください・・。」


友達の顔は疲弊し切っていて、私に一切目もくれずひたすら祈りを捧げていた。




友達の頬のしこりはどうやら悪性腫瘍らしい
しかも原因不明。そして私が叩かれた頬と同じ場所だった。



そこで私は理解をしたのだ。
天使様はすぐ側で見守ってくれているのだと










ーーーーーーーーーーーーーー

あれから私は毎日自室で天使様に語りかけた
学校が終わり家に帰ってから、今日の出来事や世間話を天使様とするのだ。
天使様からの反応はない。私が一方的に語りかけているだけ。でも天使様がここに居ると言う確信だけはあった。

そして、私は生理が完全に止まってしまった。あの儀式の後、生理は来ていたもののだんだんと出血量が減りついには完全になくなってしまった。
それから親と一緒に産婦人科に行って診てもらうと私は排卵不全で卵子が生成されないらしく、この先妊娠をすることができないと言われた。これも天使様が関係しているかも、という確信があった。
医師からそれを告げられた時、母は酷く怯えていた。

学校以外では自室に篭りきりの私を親は怪しんで、壁に向かって喋る私を見つけて不審に思い、統合失調症を疑われて精神科に連れて行かれた。勿論異常はなし。私は天使様と話しているだけだもの。淡々と異常がない事を話す医者を前に、母はボソボソと「そんな・・はずは・・」と何かを恐れているような表情をしていた。

あれから母親は私を気味悪がった。ご飯を食べる時はリビングにいるので私がいると母親は酷く怯えた表情をする。居心地が悪かった
なので高校は寮がある学校にして家から離れようと思った。
寮がある学校は基本私立で進学校が多い。
元々成績は優秀なので受かることは問題ないが、私立は学費が高い。なので特待生制度を使って学費免除なら親も文句言わないだろうと思いひたすらに勉強する日が続いた。






そしてあっという間に時間は過ぎていき、私は進学校である白宝高校に合格した。勿論特待生で。親も高校からの寮暮らしを了承してくれた。
なぜ白宝なのか、と聞かれるとなぜか直感でここに行かなければいけない気がしたからだ
私は結構直感を信じるタイプではあるので白宝を受けることを決意した。
白宝に受かったことを自室で天使様に告げると、天使様が喜んでいる気がした。













時は過ぎ白宝の入学式を終え、新しい教室に入る。特徴的な白い制服はどこか天使様がきていた真っ白な服と似ていると思い少し嬉しくなった。
教室に入ると明らかにお金持ちそうなお嬢様や、御曹司みたいな人が沢山いた。
机に突っ伏している生徒もちらほら。

担任の挨拶が終わり、生徒たちの自己紹介の時間。一人一人名前を言っていき拍手が起こる。私の自己紹介も終えて時間が経ち、最後の一人、後ろで机に突っ伏している生徒のみになった。

「おい次は凪。凪ー!」

凪と呼ばれた生徒を見ると、ゆっくりと起き上がり、無機質な黒い目を黒板に向け立ち上がった。




ふわふわとした白髪、長身、その姿はある人物に酷似していた。


『名前、名前はずっと俺だけのオヒメサマでいてね。』







「てんし、さま・・・」






ドロりとした黒い瞳がこちらを向いて微笑んだ。













愛しい存在がそこにいる。
人間の肉体はなかなか慣れないが、名前が産み落としたこの身体が俺の肉体だと思うと酷く興奮した。名前の血で生成されたこの肉体は、本当の意味で名前と一つになったのだと。なんと幸せなことか。
ねえ、名前。俺は名前の子宮に居た時間は短かったけど凄く居心地が良かった。ねえ、愛する人の胎内にいることってこんな幸せなんだね。俺のオヒメサマ。


「オヒメサマ、早く俺と同じ存在になってね」




そしたら永遠の時を二人で生きよう。



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