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 「今日はまあまあだな、午前中はずっと戸外授業だ」

 翌朝、朝食の席で配られた時間割に目を通しながらロンが言った。

 「ハッフルパフと合同の『薬草学』、『魔法生物飼育学』は、うぇ、またスリザリンと一緒か…」
 「午後に『占い学』が二限続きだ…」
 「『占い学』なんてやめてしまえばよかったのよ、わたしみたいに」

 ハーマイオニーはそれみたことかと言わんばかりに言い放った。

 「そしたら代わりに『数占い学』のようなきちんとした教科を学べたわ」

 占い学の裏では数占い学が行われるらしい。ソフィアは今年も月曜の午後、友人たちとは違い一人だけ空きコマになる。

 「おーや、また食べるようになったじゃないか」

 ハーマイオニーのとげのあるいい方に苛立ったロンが、ハーマイオニーをからかうように言った。ハーマイオニーは絶食をやめ、ジャムがたっぷり塗ってあるトーストをかじっている。

 「ハウスエルフの権利の主張にはもっといい方法があるってわかったの」

 ハーマイオニーがそう言い捨てるのを聞いて、ソフィアは昨晩のハーマイオニーとの語らいを思い出した。


 『ハウスエルフの労働が本当に不当なものではないのか、確かめたいの』
 『確かめる?どうやって…?ハーマイオニーも厨房に入ってみる?』
 『いいえ。きっと生徒の厨房への立ち入りは校則違反だと思うから…。そういう校則があるのか確かめたことはないけど。それにソフィアがいたら、きっとハウスエルフは喜んで給仕をする気がするわ。そういう風に生きてきた生き物だし、ソフィアは生き物に好かれるもの。図書館にあるハウスエルフについて書かれた本を片っ端から調べるの。きっとなにかがあるはずよ』
 『それを、私に手伝ってほしいんだよね?』


 ハーマイオニーがソフィアに頷いたのを思い出したところで、頭上で羽音がした。朝のふくろう便配達の時間だ。ハリーはがっかりした顔をしている。誰かからの手紙を待っていたのかもしれない。

***

 温室でスプラウトが見せてくれた植物は今まで見たことがないくらい、へんてこな姿をしている。黒い巨大なナメクジが土を突き破って直立しているようだった。

 「ブボチューバー、腫れ草です」

 スプラウトがきびきび言った。

 「みんな膿を集めて――大変貴重なものですからね、慎重に。素肌には害があります、ドラゴン革の手袋をして――」

 授業が終わる頃には生徒たちの手によって数リットルもの膿が集まっていた。スプラウトは校医が喜ぶだろうと請け合った。さまざまな効果がある魔法薬を作れるのだという。
 奇妙な満足感とともに、グリフィンドール生は魔法生物飼育学へ向かう。ハグリッドの小屋のすぐそばまで来たところで、奇妙なガラガラという音と小さな爆音が聞こえ始めた。

 「なんの音?」
 「さあ…」

 魔法生物に詳しいソフィアにロンが尋ねたが、ソフィアは首を傾げた。こういう音を立てる魔法生物を、ソフィアは知らない。

「スリザリンの連中を待とうかとも思ったんだが!」

 ハグリッドは満面の笑みでグリフィンドール生に振り返った。木箱をまっすぐ指さしている。一番に反応したのはラベンダーだった。しかしその言葉が全てを表している。箱の中身が露わになった途端に、驚きを通り越して誰もが後ずさった。奇怪と言うより気味が悪い。
 逆立ちしても「可愛い」とも「格好いい」とも「面白い」とも言えぬ外見をしているそれは、一見すれば甲羅の向かれた海老、もしくは脱皮したばかりの海老と言えばわかるかもしれない。そんな外皮をしていた。ぬめりを帯びた体で不規則な場所に脚が生えている。しかし頭がどこかわからない。

 「ハグリッド、これは……?」

 唖然と、もしくは怯えて声の出ない生徒を代表しソフィアが問いた。ハグリッドはにんまりと笑顔になって答える。

 「『尻尾爆発スクリュート』だ」
 「尻尾?爆発?」
 「俺がそう名付けた」

 ハグリッドの目が生徒でなく、その前に置かれた箱に向いていることが幸いだと思った。否、逆に不幸かもしれない。

 「お前さん達には、こいつらを育ててもらいたい」
 「え…?」
 「一人一匹、それぞれ世話するんだ」

 そう言われた瞬間、ラベンダーがまた叫んだ。しかしにんまり笑顔のハグリッドは気にとめていない。

 「どうだ?面白いだろ?」

 誰も答えなかった。

 「今日は餌をあげるだけで――」
 「はっ!一体何のためにこんな事をするのか知りたいね!」

 ハグリッドの言葉を遮る声。けして大きくはないのに、何故かよく響いた。ドラコが憮然とした態度で立っている。いつも通り後ろにクラッブとゴイルの二人を従えて(少し離れた所にパンジー・パーキンソンもいた)。

 「あ――それは次の時間でやることだ、マルフォイ」

 ハグリッドは考えながら告げた。

 「今日は餌やりだけだ。蛙の肝、毒抜きヤマカガシ、ヤゴの卵の中から好きなのを選んで、やってみろ」

 生徒たちは恐々餌に手を伸ばす。ソフィアも手袋を着用してむんずと蛙の肝を掴んだ。ハーマイオニーの隣にしゃがみこみ、体長およそ15センチの「尻尾爆発スクリュート」に与えてみる。長いままじゃ食べれないらしく、仕方なしに細かく千切ったものを手に乗せて与えると、頭らしき先端からもそもそ食べ出した。

 「平気なの?ソフィア」

 ハーマイオニーが恐々聞いてくる。彼女はソフィアのように直接与えたりはしていない。見ればハリーとロンも、と言うかソフィア以外は投げたり長物を使っていた。

 「……全然平気…じゃないわ」

 見ればソフィアの顔は青白くなってきており、彼女の内なる恐怖を表していた。

 「でも…今の内に慣れておかなきゃ」

 これから成長し、大きくなる前に。

 「……へ?」

 ロンが信じられないものを聞いたかのように呟いた。

 「ソフィア、今……成長って言った?」
 「えぇ。…だから――小さい内にお互い慣れておかないと、後が大変よ」
 「!?」

 クラスに緊張が走った。ハグリッド曰く、今の「尻尾爆発スクリュート」は幼体だと言う。彼自身、生態系もわからないらしい。つまり、成長の可能性があり、けして今まで通りの形を保ち続けることはないのだ。単に体が大きくなるだけでなく、変態したり、性格も変わってしまうかもしれない。ソフィアは以前本で読んだことがあるから知っている。

 「ソフィアはよくわかっちょるなぁ」

 ハグリッドはそう言って、豪快に笑った。それに反比例するかのごとく、ソフィア以外の生徒が青ざめた。

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