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四時間目は、スリザリンと合同の魔法生物飼育学の授業だった。前回と同じく、ハグリッドは「尻尾爆発スクリュート」は何を好んで食べるのか、生徒たちに実験させた。
「ちぃーっとしたプロジェクトだ」
わくわく顔のハグリッドは生徒に向かって宣言した。
「お前さんらは一晩おきにここにきて、こいつらの観察日記をつける!こいつらの特殊な生態と日々の成長を書きとめるんだ!」
「僕はやらない」
ドラコ・マルフォイがぴしゃりと言った。
「こんな汚らしいもの、授業だけでたくさんだ。お断りです」
「言われた通りにしろ」
笑顔をひっこめ、ハグリッドがマルフォイに向かって唸った。
「じぇねえと、ムーディ先生がしなさったことを俺もやるぞ…。お前さん、いいケナガイタチになるらしいじゃねえか、マルフォイ?」
ソフィアは眉を下げてハグリッドを見上げた。教師という立場で、友人のハグリッドにそういう発言はしてほしくなかった。ハグリッドの言葉にはグリフィンドール生一同大笑いで、その上ハグリッドの小屋の壁に害獣として捕らえたケナガイタチの死骸が数匹ぶら下がっていることでマルフォイはそれ以上口答えしなかった。
今日もスクリュートがなにを好んで食べるのかを調べるようにというハグリッドの言葉に、ハーマイオニーを除いたクラスの女の子のほとんどがソフィアの背後に集まってくるのはもう恒例行事だった。
スクリュートは、アリの卵や蛙のキモ、毒のないヤマカガシ、どれも平均的に同じだけ食べたし、ミノカサゴの棘やコウモリの脾臓、フグの目玉なんかも食べた。与えたもの全てを食べたし、全長およそ二十センチほどに成長していたので、前進するために爆発する威力も上がり、爆発するたびに生徒たちはスクリュートが隔離されている木箱から飛び退く。
しゃがみ込んでスクリュートを呼び寄せ、ハツカネズミを与えようとしていたソフィアのすぐ隣に誰かが立った。男物の革靴だったのでハリーかロンかと思って見上げたソフィアは目を見張った。立っていたのはマルフォイだ。腕を組んで、心底嫌そうにスクリュートを見下ろしている。
「マルフォイ、お前さんも餌やりをしろ」
「はいはい、やりますよ」
ハグリッドの言葉を鼻で笑って、マルフォイはソフィアの隣にしゃがみ込んだ。そのままマルフォイはソフィアを覗き込んで口を開く。
「別に僕がここにいても問題ないだろ、エムリス?」
「え、あ、うん。そうだね…?」
驚くべきことに、マルフォイはソフィアをファミリーネームで呼んだ。ここ三年間、彼とハーマイオニーたち三人が対峙するとき、ソフィアはだいたい存在を無視されてきた。ソフィアはあまりのことに無意識で同意した。
最近のこの授業ではスリザリンの女の子たちを背後で庇うのが当たり前になってきているし、マルフォイもスクリュートに恐れをなしているのだろう。
彼がハグリッドの授業で教師を馬鹿にせず黙っているのが本意だったので、ソフィアは特に拒否せずそのまま作業を続けた。ハーマイオニーたち三人が遠目に雷に打たれた表情で佇んでいることには気付いている。
「八方美人」
「お人好し」
「もう…」
授業終了後、ロンとハリーがぶつぶつソフィアを罵るので、ソフィアは眉を下げて唇をとがらせた。だいたい、このハグリッドの授業でマルフォイに去年のような騒動を起こされては困るのだ。人間のエゴでまた殺されてしまいそうになる魔法生物を、ソフィアは出したくない。
「マルフォイだってスクリュートが怖かったんだよ?…スクリュートが大きくなってロンたちを食べようとしても、私助けたりしないからね」
「おい!」
「それは話が違うよ!」
ロンとハリーが血相を変えたことにソフィアは満足した。そう、マルフォイだってこの男の子たち二人と同じようにスクリュートが怖かっただけだ。
「冗談だよ。でも…私、ちょっとハグリッドと話してくる」
友人三人に先を促して、ソフィアは後片付けの最中のハグリッドに近付いた。
「おう、ソフィア」
「ねえ、ハグリッド…?スクリュートはとってもかっこいい生き物だと思うけど、授業でみんなに育てさせる必要、あるの?」
ソフィアの問いかけにハグリッドは渋い顔になった。
「俺は一応先生だぞ。批判はするな」
「でも…。あの子たち、なに…?魔法生物図鑑には載ってなかった」
「俺がマンティコアとファイア・クラブを掛け合わせて創り出した生き物だ。だから、なにを好いて食べるのかはわから――」
「それってダメだよ…っ」
ソフィアは目を見開いた。
「魔法省の魔法生物規制管理部に申し出てるの?」
「いんや…」
「ハグリッド、それってとってもよくない――」
「俺はみんなにああいう生き物を好きになってほしいだけだ!お前さんもアランの娘なら分かってくれると思ってくれるだろ!?」
ハグリッドはぷいと顔をそらし、ソフィアに背を向けて歩いていってしまった。不意に父の名を出され、呆然と佇むソフィアだけが校庭の隅に残された。