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来たる第二の課題が行われる日付は、二月二十四日。選手たちがそれぞれドラゴンから奪った金の卵には蝶番がついていて、中が開くようになっており、卵の中に隠されている謎を解くことが、第二の課題を突破する重要な鍵になっているらしい。
十二月が、風と霙を連れてホグワーツにやってきた。冬になると、ホグワーツはガラスの無い窓から入り込んでくる隙間風だらけだった。湖は、以前ルーナが言っていた通り、十二月を迎えた頃から水面に膜を張るかのように徐々に凍り始めた。
日に日に分厚く凍り付いていく湖に浮かんでいるダームストラングの船は強い風に揺れ、黒い帆が暗い空にうねっていたけれど、船底まで氷が達してしまえば船体が揺れることも無くなり、ダームストラングの生徒が常々悩まされていた船酔いが解消されるだろう。その代わり、湖から直に冷えが伝わってくるであろう船内はとても寒いに違いない。ダームストラングがホグワーツに到着した日、彼らが身に纏っていた毛皮のマントが今一度大いに活躍していた。
ボーバトンの馬車も、きっととても寒いだろう。「魔法生物飼育学」の授業中、ハグリッドがマダム・マクシームの天馬たちに、好物のシングルモルト・ウィスキーをたっぷり飲ませていることに、クラスの生徒全員が気付いていた。牧場の隅に置かれた桶から漂ってくる酒気だけで、魔法生物飼育学のクラス全員が酔っ払いそうになるほどだったからだ。これにはとても困った生徒が殆どだった。
何しろその授業では、殺し合いを始めて十匹になった尻尾爆発スクリュートを飼育し続けているからだ。その姿は初めて見たときとは違い、背丈は2m近くになり、灰色の分厚い甲殻、強力で動きの速い脚、
火を噴射する尾、棘と吸収盤など全てが相俟って、今まで見たどの生物よりも奇妙に育っていた。冬眠するかどうか判らないから試してみようという授業の時に、リータ・スキーターに見つかり、ハグリッドと女史は、金曜日にインタビューの約束をしてしまうなど、とても散々なものとなった。だが、次の占い学はいつも通りでトレローニーが死について予言をするなど、相変わらずの状態がソフィアを苦笑させた。
***
キンと冷える空気が漂う朝、湖には時折、掌ほどもあるフロストフラワーが咲いた。湖面から蒸発した水蒸気が凍り、薄く氷の膜が張った湖面に咲く結晶たちは、霜の花畑のようでとても幻想的で美しかった。冬の陽光を浴びたフロストフラワーは、昼から夕方にかけてゆっくり溶けだし、夜になって気温が更に下がると湖は完全に凍結し、人が立ってもヒビすら入らない頑丈な氷の床になった。
「皆さんにお話があります」
マクゴナガルは授業の最後にそう切り出した。先ほどまでハリーとロンが仲良く悪ふざけをしていたので顔が少し怒っている。
「クリスマス・ダンスパーティーが近づきました。トライウィザード・トーナメントの伝統です。四年生以上が参加を許可されていますが、あなた方が下級生を招待することも可能です」
ソフィアの隣に座っているラベンダーは忍び笑いをしている。マクゴナガルからダンスパーティーなどという単語が飛び出したことが面白いのだろう。
「ダンスパーティーはクリスマスの晩に行われます。ところで」
マクゴナガルはことさら念を入れてクラス全員を見回した。
「クリスマス・ダンスパーティーは私たち全員にとって、もちろん――髪を解き放ち、羽目をはずすチャンスです」
ラベンダーはついにこらえきれなくなったのか、手で口を押さえて笑い声を押し殺している。ほかの同級生の何人かがラベンダーのように吹き出し笑いをした音が聞こえた。
「しかしながら、だからと言って決してホグワーツの生徒に期待される行動基準を緩めるわけではありません。私の管轄するグリフィンドール生が学校に屈辱を与えることがないように!」
マクゴナガルがバシッと宣言して授業が終わった。ソフィアはずっと小さく笑い続けているラベンダーとパーバティを呆れて見た。
「そんなに面白かったの…?」
「だって、マクゴナガル先生が…!髪を、解き放つ――ッ」
大笑いのラベンダーを押しやったパーバティがソフィアを覗き込んだ。
「ソフィア、クリスマスまでに私たちはパートナーを見つけなきゃいけないのよ。特にあんたは一番大変かもしれないけど、頑張って」
「…どうして?」
「何でって、ソフィアを狙う男はホグワーズじゃ殆どいるし、ボーバトンの人だってソフィアに気がる人が多いのよ!もうっ自覚もってよ!」
「そうそう。だから選別するときは慎重にね」
つまり、二人が言いたいのは「申し込みがたくさん来ると思うけど、できるだけ良い人を選びなさい」ということだ。
「………大袈裟よ」
「まぁ、でもソフィアはハリー一筋だもんね。選ぶもなにもないか」
「えっ…そ、そんな…こと…っ、わ、わたしは…」
「赤くなっちゃって〜、照れ屋なんだから」
二人はニヤニヤと楽しそうな顔をしていた。一方でソフィアは林檎のように顔を赤らめ、今にも沸騰しそうだ。
「…ねぇ、…私ってそんなに分かりやすい?」
「「イエス」」
「……」