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 学期最後の週はクリスマス・ダンスパーティーの話題がそこら中を飛び交っていた。ダンブルドアが『三本の箒』特製の蜂蜜酒を八百樽買い込んだとか、ダンスパーティーのバックバンドに『妖女シスターズ』が招かれるらしい、とかそういう噂だ。
 その日の最後の授業を終えたソフィアは談話室に向かう途中、またも男子生徒に呼び出されパーティーに誘われた。しかし、あと一日。それまでは誰とも行く約束はできなかった。その後、談話室に戻ってすぐ、パーバティとラベンダーが飛んできた。目を爛々と輝かせている。

 「どうだった?」
 「どうだったって、どうもないけど…」
 「もう!また断ったの!?もうパーティーまで時間がないのに!」

 ラベンダーがぎゃんぎゃんと文句を言ってくるが、ソフィアは苦笑いで返すしかなかった。

 「キミたち、どうしたの?」

 入口すぐのところで話し込む形の女の子三人に、談話室に戻ってきたハリーが声をかけてきた。そのすぐ後ろにロンが控えている。

 「ソフィアったら、また誘いを断ったのよ!これでもう何回目か!」
 「ラベンダー…そんな大声で――」
 「は!?ソフィア、そんなに誘われてんの!?」

 ソフィアの言葉はロンの絶叫に遮られた。ぱっと見た顔に、信じられないとありありと書かれている。

 「言っておくけどただの生徒だけじゃないわ、この間なんかセドリックだって誘いにきたのよ」

 なぜかパーバティが自分を侮辱されたかのように肩を怒らせてそっぽを向いた。吹聴されたくないことをぺらぺらと語られて、ソフィアはげんなりした。

 「嘘だろ!?」
 「嘘じゃないわ!こんなに可愛い子が誘われない筈ないじゃない!」

 パーバティやラベンダーがソフィアを讃頌(さんしょう)するのはいつものことだが、ロンは眉間にしわを寄せてソフィアを見たあとパーバティに反論する。

 「はあ!?可愛くはないだろ!」

 面と向かって失礼なことを言われてソフィアは絶句した。ロンの隣でハリーが、ソフィアの隣でパーバティが、それぞれ同じ表情でわたわたしている。

 「失礼ぶっこくのはやめなさい!」

 いち早く意識を取り戻したラベンダーがロンをどつくと、ロンは周囲の雰囲気に気付いてまずいという顔をした。ソフィアはパーバティの背後に隠れるようにしてロンと距離をとる。
 泣くほどではないがショックはショックだ。元々ソフィアは自分の外見が他と違うことに酷く敏感で、一年生のときにフードを被っていたことが何よりの証拠。しかし、それは他者と違って“抜きんでた美貌”であるだけで、ソフィアが未だそれを理解できていないのだ。

 「いや、そうじゃなくて…可愛いんじゃなくて――」

 フォローのつもりか、そんなつもりもなかったのか、ロンが更に悪口めいた言葉を重ねようとしていたので、ソフィアはばっとロンとの間に距離を取った。

 「…私…もう休むから…」

 くるりと踵を返して女子寮への螺旋階段まで小走りする。背後で同級生たちがギャーギャー言い合う声が聞こえた。

 ***

 「あの人、なにさまのつもりかしら!」

 寝室のベッドに寝転がりまどろんでいたところで、ソフィアのベッドのカーテンを勢いよく開ける人物が現われた。物凄くぷりぷり怒ったハーマイオニーだ。

 「どうしたの…?」
 「ロナルド・ウィーズリーよ!」

 ハーマイオニーは怒ったままの勢いでソフィアのベッドに座る。

 「フレッドがアンジェリーナをさらっと誘ったのよ。それに影響を受けてロンたちも女の子を誘わなきゃって焦り出したみたいだけど、あの人、女の子をトロール扱いよ!」
 「トロール?」
 「お顔がいい順に女の子に申し込んでいかなきゃって!『残るはトロール』じゃ困るそうよ。私、決めた。クラムの誘い受けるわ」
 「うん、いいと思うわ。ロンってどうしようもない。私…さっきロンからトロール扱いされたの。『可愛くないだろ!』って」
 「はい!?」
 「私、ロンのことブサイクって言ったことないのに…」

 ソフィアはクッションに頭を沈めた。ハーマイオニーが気の毒そうにソフィアを見る。

 「本当に疲れてきちゃった。可愛いだの可愛くないだの、恋とかそういうの、…私には無理そう。
パーティー当日は寮で過ごそうかしら…。ここで本でも読んでいれば退屈しないでしょうし」
 「そんな、滅多にない行事よ…?」

 折角ドレスを見繕ってもらうというのに、自分でも勿体ないとは思ったが、もうこれ以上、周りに振り回されるのは御免だと思ってきた。

 「ロンには眼科をお勧めしておくわ!私の親友のソフィアが可愛くないわけないのに!寧ろ学校で一番の美人よ!あのフラー・デラクールにも負けないくらい!ね、ソフィア。相手が決まらなかったらわたしと一緒にいましょうよ。最初の一、二曲踊ったら、あとは立食しながらお喋りよ」
 「…ありがとう、ハーマイオニー」

 気遣わしげなハーマイオニーをありがたく思って、ソフィアは眉を下げて笑った。

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