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ソフィアとハーマイオニーは談話室でハリー、ロンと合流して朝食を取ったあと、再び談話室に戻りゆっくりした時間を過ごした。クリスマスの昼食は人数が多いせいか一年生のときよりも豪華で、そこかしこでクラッカーが大砲のような大音量を響かせて爆発した。
午後になるとハーマイオニーたち三人は校庭に出ると言うので、ソフィアは大慌てで談話室に逃げ帰ってきた。例年通りウィーズリー兄妹も交えて雪合戦でもするのだろう。
「ただいま!」
寒さに鼻の頭を赤くしたハーマイオニーが、談話室に戻ってきたのは十七時を回った頃だった。
「あ…お帰りなさい。寒かったんじゃない?」
「もっと早く帰ってくるつもりだったの。お願いソフィア、髪の毛を手伝ってくれない?」
二人で談話室から女子寮に移動して、ソフィアはハーマイオニーがベッドサイドの棚を漁るのを眺めていた。ハーマイオニーは棚から一つ瓶を取り出してソフィアの前に突きつけた。『スリーク・イージーの直毛薬』とラベリングされている。
「直毛薬…?ハーマイオニー、髪の毛を真っ直ぐにするの?」
「そうよ、だってビクトール・クラムに恥をかかせるわけにはいかないもの、綺麗にしていかなきゃ」
薬を塗りつけて温風を当てることで、どんなくせ毛でもまっすぐのさらさらした髪になるらしい。
ソフィアは杖から温風を吹き出させることに関しては、得意分野と言ってもいいくらいの実経験があるのでハーマイオニーのお願いを快諾した。それから一時間は奮闘して、ソフィアはハーマイオニーの頑固なくせ毛をつやつやとした優雅なシニョンに結い上げることに成功した。
「出来たわ」
「わぁ、ソフィア、本当にありがとう!」
「どういたしまして」
ハーマイオニーは慣れない手つきながらも、短時間で自分の顔に化粧を施した。髪を結い上げ薄化粧をしたハーマイオニーはとても綺麗な美少女に変身した。前歯が小さくなったのがますますはっきりわかる。
「ハーマイオニー綺麗よ…」
「やめて、照れるわ。それより、ソフィアのドレス見せて。今朝届いたんでしょう?」
「えぇ。とても素敵なドレスを選んでもらったわ」
「そう。……にしても、ソフィア。そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
「…何を?」
「パーティーの相手よ!決まったっていいながら、ちっとも教えてくれないじゃない」
「ダメよ。今、教えたら…ハーマイオニーは多分、私をパーティーへ行かせないと思うわ」
「そんなこと聞いたら益々気になるわよ」
そう言うハーマイオニーの言葉を上手くあしらいながらも、ソフィアは彼女の身支度を手伝う。
「あら…ハーマイオニー、十九時に約束してるって言わなかった?」
「えっ、もうこんな時間!?」
知らない間に時間は経ち、約束の時間はきてしまった。
「私、行かなきゃ。ソフィア大丈夫?髪もメイクもまだなのに…」
「大丈夫よ。ラベンダーたちが手伝ってくれるって言ってたから…また会場でね」
「じゃあ、ソフィア、また後でね!」
ハーマイオニーは最後に鏡に向かってにっこり笑うと、大慌てで寝室から出ていった。
顔色が少し悪い。ハーマイオニーが出ていってしまい、ソフィアが一人鏡の前で睨めっこをしているとパーバティとラベンダーが寝室に戻ってきた。
「あれ、ソフィア一人?」
「ハーマイオニーは?」
「今出ていったわ…すれ違わなかった?」
「いいえ、螺旋階段で一人すれ違ったけど、ハーマイオニーじゃなかったわ」
ソフィアはそれがハーマイオニーだと思った。予備知識がなければ、薄暗い螺旋階段で彼女の正体を見破るのは難しい。
「とりあえず、私達も準備しましょうか」
「とびっきり可愛くなって驚かせなきゃ、特にソフィアをね!」
「…?」
「あのロナウド・ウィーズリーを驚かせるのよ。二度とソフィアを可愛くないなんて言わせないわ!」
二人はとても意気込んでいるなか、ソフィアはいそいそとドレスを着ることにした。
「でも、ソフィア。いいの?私がハリーとパーティーへ行っても…」
パーバティがソフィアの髪を整えている間、不意に訪ねた。そう。実はハリーの相手はチョウ・チャンではなく、なんとソフィアのルームメイトのバーパティなのだ。ソフィアの気持ちを知っているバーパティはそれをとても気にしている。
「いいのよ…。だって、結局ハリーは最後まで私を誘ってこなかったわけだし…。それに…彼、代表者なのに相手がいないのはかわいそうよ。だから、一緒に行ってあげて。バーパティ」
「そう…」
友達思いのバーパティはそう言いながらも、やはり心に引っ掛かるようだ。少しだけ眉を下げてソフィアを見ていた。
「で、ソフィアの相手は?誰にも教えてないって噂だけど」
「えぇ、今教えたらつまらないじゃない。…だから、後でのお楽しみにしておいて」
「「も〜っ、ソフィアったらー!」」