「占い学」のクラスから、次のマクゴナガル先生の「変身術」の教室まで、四人はすんなりと教室にたどり着くことができた。不吉な予言を下されたばかりのハリーの機嫌はまだ少し悪くて、彼を気遣って四人は教室の一番後ろの席を選んだ。しかし、それでも眩しいスポットライトに晒されているかのように、
 クラス中がまるでハリーがいつ何時ばったり死ぬかわからないと言わんばかりに、彼をちらちらと盗み見ていた。マクゴナガル先生が教室に入ってきて、今日の内容は「動物もどき(アニメーガス)」だと告げた。

 「このように、アニメーガスを会得した魔法使いは、自由に動物に変身できて……」

 ハリーも他のクラスメイトも、先生の話がほとんど耳に入っていないようだった。先生がみんなの目の前で、目の周りにメガネと同じ形の縞があるトラ猫に変身したのを見てもいなかった。マクゴナガル先生は「ポン」という軽い音とともに元の姿に戻るなり、クラス中を見回した。

 「まったく、今日はみんなどうしたんですか?」

 先生は、自分の変身を見てクラスで拍手を浴びなかったのは初めてだと怪訝な顔をしていた。みんなは一斉にハリーの方を振り向いたが、誰も理由を自ら口にしたがらなかった。すると、ハーマイオニーがさっと手を挙げた。

 「先生、私たち、『占い学』の最初のクラスを受けてきたばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで───」
 「ああ、そういうことですか」

 マクゴナガル先生は合点がいったと頷いて、顔をしかめた。

 「ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年はいったい誰が死ぬことになったのですか?」
 「…僕です」

 しばらくの空白のあとに、ハリーが遠慮がちに答えた。マクゴナガル先生はきらりと光る目でハリーをしっかりと見た。

 「わかりました。では、ポッター、教えておきましょう。シビル・トレローニーは本校に着任してからというもの、一年に一人の生徒の死を予言してきました。いまだに誰一人として死んではいません。死の前兆を予言するのは、新しいクラスを迎える時のあの方のお気に入りの流儀です」

 なんて悪趣味な、とソフィアは思った。マクゴナガル先生は一旦言葉を切ってから続けた。

 「私は同僚の先生の悪口は決して言いません。それでなければ───」

 先生の鼻の穴が微かな憤りを表し、大きく膨らんだ。それから少し落ち着きを取り戻して言った。

 「『占い学』というのは魔法の中でも一番不正確な分野の一つです。私があの分野に関しては忍耐強くないということを、皆さんに隠すつもりはありません。真の予言者など、めったにいないのですから」

 そこでソフィアは、マクゴナガル先生の不自然な視線が一瞬だけ自分を捉えたような気がした。先生は再び言葉を切り、ごく当たり前の調子で言葉を続けた。

 「ポッター、私の見るところ、あなたは健康そのものです。ですから、今日の宿題を免除したりいたしませんからそのつもりで。ただし、もしあなたが死んだら、提出しなくても結構です」

 ハーマイオニーがくつりと吹き出し、ハリーの顔にも少しだけ笑顔が戻った。しかし、みんながあの予言は単なる流儀だと思ったわけではなかった。ロンはまだ心配そうだったし、ラベンダーはパーバティとネビルのカップが割れたことを囁き合っていた。

 「変身術」の授業が終わり、四人は昼食に向かう生徒たちに混じって、大広間に移動した。ハーマイオニーがシチューの大皿をロンの方に押しながら、まだ不安げに顔をしかめていたロンを気遣った。ソフィアとハリーは自分の小皿にシチューを取り分けながらロンの様子をうかがった。

 「ハリー、君、どこかで大きな黒い犬を見かけたりしなかったよね?」
 「ウン、見たよ。」

 なんとあっさりハリーが肯定したので、それにはソフィアも驚いて、危うくシチュー皿を滑り落としそうになった。

 「ダーズリーのとこから逃げたあの夜、見たよ」

 ロンが音を立ててフォークを取り落とした。蒼白な顔でハリーをじっと見ている。

 「ただの野良犬よ」

 ハーマイオニーは落ち着き払った口調でシチューを頬張った。ロンのこの、緊迫した空気はなんだろう。

 「ハリー、グリムを見たなら、それはよくない。かなりよくない。僕のビリウスおじさんがグリムを見たんだ。それから二十四時間後に死んじゃった!」
 「偶然よ」
 「ハーマイオニー、自分の言ってることわかってる!?グリムと聞けば大概の魔法使いは震えあがってお先真っ暗で――」
 「だから、そういうことでしょ?」

 ハーマイオニーは落ち着き払った口調で続けた。

 「グリムは死の予兆じゃなくて原因よ。見たと思って、怖がって、それで死んじゃうの。ハリーが死んでないのは、グリムを馬鹿馬鹿しい理由で恐れてないから」

 ロンは口をパクパクさせたが、言葉が出ないようだった。

 「占い学って、とってもいい加減な教科よ。当てずっぽうが多すぎる」
 「あの茶の葉のグリムは当てずっぽうじゃない!」
 「ロン、あなた最初あれのことなんて言ったか覚えてないの?羊だって言い張ったはずじゃない」
 「トレローニー先生はきみにまともなオーラがないって言った!だから気に入らないだけだろ?一つでも、自分をクズに見せる教科がきみは気に入らないんだ!」
 「あの占い学とかいう学問が、茶の葉を見て死の予兆を読み取るふりをすることなら、わたしはあの先生にいつまでもお付き合い出来る自信がないわ!数占い学に比べたら、あんなのまったくのクズよ!」

 ハーマイオニーは怒って立ち上がると、肩で風を切って大広間から出て行った。少なからずロンの言葉がハーマイオニーの弱みを突いたのだろうとソフィアは思った。ハーマイオニーはこの二年間、学年の他の生徒の追随を許さない才媛だ。ホグワーツでの勉強で自分に不向きな科目があるとは思いもしていなかっただろう。ロンの方はハーマイオニーから素早く視線を外してソフィアとハリーを見る。

 「あいつ、一体なに言ってるんだ?数占いなんてまだ一度も受けてないだろ!?」
 「ハ、ハーマイオニーは教科書たっぷり読んでるから。ほら、二人も早く食べて?次はお楽しみの魔法生物飼育学だよ」

 なんとか話題をそらそうと、ソフィアは二人に急いて昼食の続きを促した。

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