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リーマス・ルーピンの「闇の魔術に対する防衛術」の授業は、たちまち生徒たちの一番人気の授業になった。しかし、それとは正反対にセブルス・スネイプの「魔法薬学」の授業はますます評判がガタ落ちだった。セブルスのハリーに対する復讐モードは近頃ますます顕著で、誰かがリーマスの名前を出しただけで、セブルスの目はぎらりと脅すように光り、ネビル虐めは一層ひどくなった。そして、ソフィアたちがうんざりしていた授業がもう一つ───シビル・トレローニーの「占い学」の授業だ。先生はハリーを見るたびにあの巨大な目に涙をいっぱいに浮かべたりする一方、ソフィアに対しては気味が悪いほど親切で優しかった。ハリーやロンがでたらめな予言をすると睨むのに、ソフィアの予言にはひどく寛容的なのだ。
ハグリッドの「魔法生物飼育学」の授業はその後、とてつもなくつまらないものになり、ソフィアが大げさに元気になった姿を披露しても、ハグリッドはすっかり自信をなくした様子で、生徒たちは毎回毎回、恐ろしく退屈なレタス食い虫の世話を学ぶ羽目になった。
十月になると、ハリーは別のことで忙しくなった。クィディッチ・シーズンの到来だ。一週間に三回の練習は日ごとに寒く、じめじめした日が増え、夜はますます暗くなった。しかし、泥んこだろうが、風だろうが、雨だろうが、今度こそあの大きなクィディッチ銀杯を獲得するという、今年が最終学年であるキャプテンのオリバー・ウッドと、ハリーの素晴らしい夢には一点の曇りもなかった。だが、そんなハリーの高揚していた気持ちを萎えさせる出来事が起きた。グリフィンドール談話室のくたびれた古い掲示板に、第一回のホグズミード週末のお知らせが貼り出されていたのだ。ちょうどハロウィーンの日だ。ハリーに許可証がないことを知っていたハーマイオニーとソフィアは、シリウス・ブラックの件もあり、今回は諦めた方がいいとハリーに忠告したが、ロンに、「ホグズミードで何かやらかすほど、ブラックも馬鹿じゃないよ」と一蹴された。そして、マクゴナガル先生に代行サインを頼んで、ハリーも一緒に行くようにと勧めた。
「ソフィアも頼んでみたら?」
「私は遠慮しておくよ」
しかし翌日、「変身術」の授業が終わったあと、ロンに背中を押されて、ふかーく息を吸ったハリーは、マクゴナガル先生に話を切り出したのだが───
「ポッター、これが私の最終決定です」
結果は惨敗だった。サインはもらえず、マクゴナガル先生は静かにそう言い残し、教室を出ていった。ソフィアは最後の先生の表情がどこか、安堵しているような不思議な顔だったように感じた。ひょっとしたら、マクゴナガル先生もシリウスを警戒しているのかもしれない。ハーマイオニーの「これで良かったのよ」という顔はロンをひどく不機嫌にさせ、一方のハリーは、ホグズミードに行ったらまず何をするかと、みんなが楽しそうに騒いでいるのをじっと耐えなければならなかった。沈み込むハリーに、ディーン・トーマスが持ち前の羽ペン使いで、ハリーの許可証に偽サインをしようと言ってくれたり、ロンは「透明マント」を使ったらどうかと提案したが、監督生パーシー・ウィーズリーに嗅ぎつけられ、計画は破綻してしまった。まさに万事休すだった。さらにパーシーはハリーに追い打ちをかけた。
「ホグズミードのことをみんな騒ぎ立てるけど、ハリー、評判ほどじゃない。菓子の店はかなりいけるが、ゾンコの『いたずら専門店』は、はっきり言って危険だ。それに『叫びの屋敷』は一度行ってみる価値はあるけど、それ以外は、ハリー、本当に大したものはないよ」
パーシーの慰めは失敗だとソフィアは思った。そんな説明を聞けば誰だってホグズミードに行ってみたくなるだろう。ソフィアは十分考えて口を開く。
「ハリー、私も居残り組だし……それに、ホグズミードは逃げないよ。魔法省が全力を挙げているからブラックが捕まるのも時間の問題。ブラックが捕まって、安心できるようになったら一緒に行こうね」
「…うん」
ソフィアの言葉も気に入らないようだったが、ハリーはむすっとしながらも頷いた。
「けど、残念だな、ソフィアまで行かないなんて」
ロンが溜め息混じりに言った。
「仕方ないでしょう?」
「だけどさー」
ハーマイオニーもこの時ばかりは残念そうだった。ソフィアは苦笑していたが、心の中では罪悪感があった。
***
ハロウィーンの朝、四人は揃って大広間へ向かった。ハリーはホグズミードへ行けないことで顔色が暗い。
「あ…二人とも、お土産お願いね」
ソフィアがおずおず切り出すと、ハーマイオニーとロンも続いた。
「ハニーデュークスのお菓子をたくさん持って来てあげるわ」
「うん、たーくさん」
「…僕のことは気にしないで。パーティーで会おう。楽しんできて」
ハリーの方は少し困った顔をして、無理矢理笑顔でそう言った。気を遣われたくないのかもしれない。
「ハリー…っ」
玄関ホールで二人を見送って、ソフィアの呼びかけにも反応せずに後ろを振り返ることなくハリーは階段へ戻っていった。
「気の毒だな」
ロンがぼそりと呟く。
「でも、ブラックが捕まるまでよ。ハリーもそのうちホグズミードに行けるわ、勿論ソフィアも一緒にね」
「……うん」
二人の話声を背中で聞きながら、ソフィアは寂しそうな顔を階段へ向けていた。