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 「買えるだけ買ってきたよ!」

 ホグズミートから帰ってきたロンとハーマイオニーは、文字通り「ありったけ」買ってきたような大きさの袋を下げていた。興奮状態がまだ続いているのか顔に赤みがさしている。
 夕食前にホグズミートへ行った生徒は全員帰ってきた。ちょうどソフィアは図書室の帰りに彼らに出くわし、談話室まで一緒に向かったのだ。既にハリーが暖炉前の特等席を取っていたので、四人はそこでやんやと二人の戦利品を漁る。見たことのないものばかりだった。

 「ほとんどハニー・デュークスって店で買ったんだ!あそこは良いよ、これだって店にあったお菓子の一部にすぎないんだ!」
 「それに『三本の箒』のバタービール!身体の芯から温まるの!」

 ハーマイオニーでさえ瞳を輝かせ興奮している。買ったお菓子を四人でほとんど平らげたら、いよいよ夜になった。宴会の時間である。ロンとハーマイオニーは先程かなりの量のお菓子を平らげた筈なのに、二人ともしっかりおかわりをしていた。

 「そう言えば、ソフィアは今日どこにいたの?」

 談話室ではホグズミートの話題がひっきりなしだったためか、ハリーがソフィアにこの質問をしたのはデザートまでをお腹に納めた頃だった。

 「…図書館で本を読んでたの」

 あの後、結局ハリーと行動を共にすることなく、殆どの時間を図書館で過ごしていたのだ。宿題もあらかた片付けてしまった。

 「ハリーは?」
 「僕はルーピン先生の所に」

 一瞬ソフィアの表情が困惑気味なものに変化したので、ハリーは首を傾げた。

 「どうかした?」

 ソフィアは首を横に振った。

 「先生の所で何をしていたの?」
 「紅茶をご馳走してもらったんだ。あとは、世間話とか」

 そう語るハリーの表情は穏やかだった。どうやらいい事があったのだろう。

 「あ、でも途中でスネイプが来たよ」

 その言葉にはロンとハーマイオニーも反応した。スネイプがリーマスの部屋に何の用があるのだろうか?

 「なんか、薬みたいなものを渡してた」
 「それをルーピン先生は飲んだっていうのかい?」

 ハリーは頷いた。ロンは信じられないという表情で教師用のテーブルを見る。いつも通り、険しい鉄面皮のスネイプと、穏やかにフリットウィック先生と談笑するリーマスが見えた。

 ハロウィーンの晩餐は例年通り素晴らしかった。ハーマイオニーたち三人は去年絶命日パーテイーに出席していたので、なおさらはしゃいでいる。あとから聞いた話では、絶命日パーティーの食事はどれも腐ったりしている風味の強いものだったそうだ。

 「ポッター、ディメンターがよろしく言ってたぞ!」

 大広間から出たところでマルフォイがハリーに突っかかってきた。この楽しいムードに水を差すかと思ったが、ハリーはまったく気にしたそぶりもなくマルフォイをスルーする。マルフォイがつまらなそうに地下に消えていくのを見届けて、ソフィアは安堵した。ハリーはとても賢い男の子だというのを再認識する。
 グリフィンドール塔のあたりで、生徒たちは立ち止った。どういうわけか談話室に入れないらしく、みんな口々に何事かとささやいている。

 「どうしたのかな?」
 「なんでみんな談話室に入らないんだ?」

 ソフィアが首を傾げると、ロンも怪訝そうに言った。後ろからパーシーが階段をのぼってきていて、この渋滞の原因を探るために生徒たちをかきわけて進んでいる。

 「誰か、ダンブルドア校長を呼んできてくれ。急いで!」

 肖像画の前に辿りついたらしいパーシーがそう叫ぶと同時に、前の方からだんだんとヒステリックなざわざわが伝わってきた。後列の生徒たちはつま先立ちになって原因を探ろうとしている。周囲の生徒に埋もれたソフィアは、なにがどうなっているかもわからずおろおろするばかりだ。ジニーがダンブルドアを伴って現われると、生徒たちがダンブルドアを通すために押し合いへし合い道を開ける。そこでようやく、ソフィアの目にもこの騒ぎの原因が見えた。グリフィンドール談話室の門番、太った婦人の肖像画がズタズタに切り裂かれていたのだ

 「レディを探さねばならん」

 ダンブルドアが切り裂かれたキャンバスを労しげに撫でながら冷静に言うと、ポルターガイストのピーブズが飛ぶようにやってくる。

 「見つかったらお慰み!」
 
 この騒動が楽しくて仕方がないのが表情を見てありありとわかる。空中で旋回したりしながら手を叩くピーブズを、ダンブルドアが見上げた。

 「ピーブズ、どういうことじゃ?」
 「校長閣下、レディは恥かしかったのですよ。切り裂かれ、ズタズタになって五階の風景画の中を走っていくのを見ました」

 ピーブズはにやけたままダンブルドアに答えた。

 「誰がやったか、聞いたかね」
 「もちろん。レディがグリフィンドールに入れないってんで、あいつは大層怒り狂っていた。ひどい癇癪持ちですよ、あのシリウス・ブラックって輩は!」

 生徒たちも、駆けつけた教師陣もその一言に凍りつく。ピーブズの高笑いがしばらく続いたあと、ダンブルドアは様々な指示を飛ばして生徒たちは大広間に送り返された。

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