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 試合の前日“闇の魔術に対する防衛術”の授業に現れた先生に、ソフィアは大きな目をぱちくりとさせた。

 「防衛術の教授は気分が悪く、本日は教壇に立てないとのことだ。私が代わりに受け持つ」

 ざわざわがひどくなった教室にスネイプが一喝して、生徒たちはやっと静まった。

 「ルーピン教授はこれまでの授業内容をまったく記録しておらん。だらしがない。ロングボトム、ノートを見せたまえ」

 最前列のネビルにスネイプが指図すると、ネビルがおずおず羊皮紙の束を差し出す。スネイプはそれを一枚一枚めくりながら、時折鼻で笑ったりするのでネビルはかなりびくびくした。気詰まりな沈黙の中、教室のドアが勢いよく開いた。ハリーが遅刻で入ってきた。

 「ルーピン先生すみません!あれ…」
 「ポッター、遅刻だ。十点減点。座れ」
 「ルーピン先生はどうなさったんですか?」
 「気分が悪いとだらしなく寝込んでいる。命に別条はない」

 ハリーはむっとして、なにかを言おうと佇んだままだ。それを見てスネイプが意地悪く鼻を鳴らした。

 「グリフィンドールからもう五点減点。さっさと座れ」

 ハリーは渋々、ソフィアたちに近付いてきた。

 「ポッターに邪魔される前の会話に戻る。ルーピン教授はだらしがないばかりか、教える内容が稚拙だ。レッドキャップやグリンデローなど一年生の内容だ」

 (…でもクィレル先生もロックハート先生も教えてくれなかった)ソフィアの考えていることと同じようなことも周囲の生徒も考えているようだった。ディーンがリーマスへの支持を表明して、何人もの生徒が同調するとスネイプの顔がいっそう威嚇的になる。

 「きみたちが本日学ぶのは人狼である」
 
 重く、ねっとりとした声でスネイプは言った。

 「でも先生、これからやる予定なのはヒンキーパンクで――」
 「ミス・グレンジャー、いつから教師に指図するほど偉くなったのかね?全員教科書を開きたまえ」

 クラス中に苦々しい空気が流れ、生徒たちは渋々教科書を開いた。

 「人狼と真の狼の見分け方は?」

 ぱっとあがったハーマイオニーの手を、スネイプは無視した。

 「三年生にもなって、そんなこともわからんとは…。実に嘆かわしい」
 「先生、人狼と狼ではいくつも違う点が見受けられます。狼の鼻面は――」
 「勝手にしゃしゃり出てくるな、ミス・グレンジャー。鼻持ならない知ったかぶりでグリフィンドール五点減点」

 ソフィアはあまりの仕打ちに驚いて固まってしまった。スネイプはクラスに質問して、ハーマイオニーがそれに答えようとした。ごく自然な流れだ。
 
 「あんまりじゃ――!」

 ないですか、と叫ぼうとしたソフィアの言葉はロンに遮られる。

 「クラスに質問を出して、それに答えようとした生徒を減点する教師がいますか!?答えてほしくないなら質問しなきゃいいんだ!」

 ロンが机を叩いて立ち上がった。スネイプはロンを横目で見て、鼻で笑った。

 「罰則だ、ウィーズリー。きみが私の教え方を批判しているとこの耳に再び入った暁には、きみは非常に後悔することとなる」

 ソフィアは不快に感じながら人狼の項目を羊皮紙に書き取りした。スネイプはその様子を眺めながら、グリフィンドール生の防衛術の過去の課題を見回った。

 「人狼の見分け方と殺し方について羊皮紙二巻き、月曜までだ!ウィーズリーは残れ、罰則の仕方を決める」

 ソフィアはハリーとハーマイオニーと一緒に、クラスのみんなと外に出た。教室まで声が届かない所までくると、みんな堰を切ったように、スネイプ攻撃をぶちまけた。

 「何の恨みがあるんだ?」
 「他の先生には何もしなかったのに……」

 ハリーとハーマイオニーも、それぞれ思いを露わにする。ソフィアも頷いて同意した。

 「早くルーピン先生がお元気になって欲しいわ……」

 大きく頷いた。その五分後にロンが追いついた。カンカンに怒っている。

 「聞いてくれよ。あの×××!」
 「ロン!」

 彼がスネイプを「×××(自主規制)」と呼んだので、ハーマイオニーがビックリした。

 「×××が僕に何をさせると思う?医務室のおまる磨きだ!」

 しかしロンは呼び方を変えなかった。医務室のおまる磨き――しかも魔法なしだという。それは非常に嫌な罰だ。陰険でせこい。フィルチより質が悪い。

 「あーあ、ブラックがスネイプの研究室に隠れててくれたらなぁ」
 「どうして?」

 ソフィアが聞き返すとロンは肩を竦めた。

 「もしかしたら、スネイプを始末してくれたかもしれないよ」

 それはそれで嬉しいかもしれない。

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