15

 授業が終わってからというもの、ソフィアの頭はハリーを庇う為の思案策で一杯だ。
しかし、それも夕食時には一気に打ち砕かれてしまう。
―――とても良い意味で。

 「「今年のクィディッチカップは頂きだな」」

 その日の夕食時、ハリーがマクゴナガルに連れて行かれた後の事をソフィアとロンに報告していると、ウィーズリーの双子がそう言って両脇から肩を組んできた。
口いっぱいにステーキ・キドニーパイを頬張っていたハリーは思わず噎せ込んだ。

「おっ、悪い悪い」
「ほら水飲みな」

 フレッドの方から水を差しだされ、今度は前にいたソフィアにナプキンを渡され、それらを全て受け取りハリーは慌てて口元を拭った。

 ―――ハリーの話によると、あの後マクゴナガルに連れていかれたの教室だった。
中には上級生たちが授業を受けていて、マクゴナガル先生はオリバー・ウッドという青年を呼び出した。
ウッドはクディッチのグリフィンドールチームのキャプテンだそうだ。
そして、マクゴナガルは「ウッド、彼は最高のシーカーですよ」とウッドに言った。
マクゴナガルのお墨付きで、ハリーは最年少ながらにグリフィンドールのシーカーに選ばれることになったのだ。

 「…ハリー…おめでとう。あのね…ハリーが思い出し玉を掴んだ時ね……その…とても…カッコよかったよ…」

 しどろもどろな言葉だったが、ソフィアが一生懸命言葉を伝えようとしている姿を見て、ハリーには十分嬉しさで溢れかえったものだ。

 「ヒューヒュー!いいなぁ、ハリー」
 「オレもソフィアに言われてみて〜」

 2人の様子を見ていた双子は、茶化すかのように間に入り込んできた。しかし、そこでロンがその場の雰囲気を断ち切る。

 「にしても…二人とも何で知ってるんだ?」

 僕だって今聞いたばっかりなのに、と口を尖らせる。

 「知ってるも何も、」「なあ?」

 双子は顔を見合わせてにんまりと笑った。

 「ウッドが今にも踊り出しそうだったぜ。
ハリー、君よっぽどすごいらしいな。何したんだ?」
 「あいつ今から練習をどうするかって、上機嫌で予定を組んでたぞ」

 そういうフレッドとジョージもかなりの上機嫌だ。
オリバーの機嫌の良さについては、ハリーも嫌というほど実感している。
何せあの後寮に戻ってから夕食の時間になるまでつきっきりでクィディッチについて語られていたのだ。
おかげでソフィアとロンに話すのがこんなに遅くなってしまった。

 「じゃあな、俺たち行かなくちゃ。 
リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」
 「それって、俺たちが最初の週に見つけたやつだと思うんだけど。 
きっと『おべんちゃらグレゴリー』の銅像の裏に有るやつさ。じゃ、またな」

 フレッドとジョージが消えるとすぐに、会いたくもない顔が現われた。
クラッブとゴイルを従えたマルフォイでした。

「ポッター、最後の食事かい?マグルのところに帰る列車にはいつ乗るんだ?」
「地上に戻るとやけに元気だね。小さなお友達も居るしね」

 挑発を繰り返すマルフォイに対して、ハリーは冷ややかに言う。
どう見ても小さくはないクラッブとゴイルでしたが、上座のテーブルに先生たちがズラリと座っているので、二人とも握り拳をボキボキ鳴らして睨み付けることしか出来ない。

 「僕一人で、いつだって相手になろうじゃないか。
望むなら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ…相手には触れない。
どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて聞いたことも無いんじゃないのか?」
 「もちろんあるさ」

 そこにロンが口を挟んだ。

 「ぼくが介添人をする。お前のは誰だい?」

 マルフォイは、クラッブとゴイルの大きさを比べるようにして二人を見る。

 「クラッブだ。真夜中でいいな?」
トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね」

 吐き捨てるようにして言うとマルフォイは、子分を引き連れて去って行った。
彼らが居なくなると、ロンとハリーは顔を見合わせる。

 「…魔法使いの…決闘って何?」

 先ずソフィアが聞く。次にハリーもロンに尋ねた。

 「君が僕の介添人をするってどういうこと?」
 「介添人っていうのは、きみが死んだらかわりに僕が闘うっていう意味さ」

 ロンは気軽に言って、すっかり冷めてしまった食べ掛けのパイを口に入れた。
ソフィアとハリーの顔色が変わったのを見て、ロンは慌てて付け加える。 

 「死ぬのは、本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ。
君とマルフォイだったら、せいぜい火花をぶつけ合う程度だ。
二人とも、まだ相手に本当のダメージを与えるような魔法なんて使えない。
マルフォイは、きっときみが断わると思っていたんだよ」
 「…もし…ハリーが杖を振っても…何も起こらなかったら…?」

 ソフィアが緊張な面持ちで言う。ハリーもそれが気になるのか、ソフィアの言葉に強く頷いた。
しかし、ロンは見事なまでにあっさりと言い放った。

 「杖なんか捨てちゃえ。鼻にパンチを喰らわせればいい」
と、そこに一人の女子生徒の声が入って来た。

「ちょっと、失礼」

 3人は顔を見上げる。
今度はハーマイオニー・グレンジャーだ。

 「まったく、ここじゃ落ち着いて食べることもできないのかな?」

 ハーマイオニーは、ロンを無視してハリーに話し掛けました。

 「聞くつもりは無かったんだけど、あなたとマルフォイの話が聴こえちゃったの」
「聞くつもりがあったんだろう」と、ロンが呟く。

 「…夜、校内をウロウロするのは絶対ダメよ。 
もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてみて頂戴。 
それに捕まるに決まってるわ。まったく、なんて自分勝手なの」

 ハーマイオニーが強く言い放った。
しかし、そんな彼女に怯えるロンとハリーではない。

 「まったく大きなお世話だよ」と、ハリーが言い、
「バイバイ」と、ロンが止めを刺したのだ。

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