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いつものように、梟が群れをなして大広間に飛んで来たときに、六羽の大コノハズクが足で掴んでいる細長い包みがすぐに皆の目を惹き付ける。ハリーも興味津々で、あの大きな包みは何だろうと見ていると、驚いたことにコノハズクたちはハリーの真ん前に舞い降りて来て、その大きな包みを落とした。ハリーの食べていたベーコンが跳ねて床に落ちたほどの衝撃だ。

 六羽のふくろうがまだ飛び去るか去らないうちに、もう一羽が包みの上に手紙を落とす。ハリーは先に手紙のほうを開けたが、それが良い選択だった。手紙にはこう書かれている。

 ―――包みをここのテーブルでは開けないように。中身は新型のニンバス2000です。あなたが箒を持ったことがわかると、皆が欲しがるので、気付かれないように。最初の練習として、オリバー・ウッドが今夜七時にクィディッチ競技場で待っています。 M・マクゴナガル

 手紙をソフィアに渡しながら、ハリーは喜びを隠し切れなかった。

 「ニンバス2000だ!」

 ロンはソフィアから回ってきた手紙を読んで、羨ましそうに唸る。

 「ぼく、触ったことさえないよ」

***

一時限目がはじまる前に、三人だけで箒を見ようと、急いで大広間を出て行くと、クラッブとゴイルが寮に上がる階段の途中で道を塞いでいた。マルフォイが、ハリーの包みをひったくって、中身を確かめるように触る。「箒だ」と、マルフォイは妬ましさと苦々しさの入り混じった顔付きで、ハリーに包みを投げ返した。

 「今度こそおしまいだな、ポッター。一年生は箒を持っちゃいけないんだぞ」

 ロンは我慢しきれずに言い返す。

 「ただの箒なんかじゃないぞ。なんてったって、ニンバス2000だぜ。君は家に何を持ってるって言ってたマルフォイ?コメット260かい?」

ロンはハリーに向かってニヤッと笑い掛けた。

 「コメットって見かけは派手だけど、ニンバスとは格が違うんだよ」
 「君に何がわかる、ウィーズリー。柄の半分も買えないくせに。君と兄貴たちとで小枝を一本ずつ集めなきゃならないくせに」

 段々とこの場が荒療治になりかけているのを察知して、ソフィアは心配そうに彼らを見ていた。そしてロンが反論しようとしたその時、フリットウィック先生がマルフォイの肘のあたりに姿を現わしたのだ。

 「君たち、言い争いじゃないだろうね?」
 「先生、ポッターのところに箒が送られて来たんですよ」

 マルフォイが早速言い付ける。だがしかし、先生の反応は予想とは全く違う反応だった。

 「いやー、いやー。そうらしいね」

 フリットウィック先生はハリーに笑い掛けたのだ。

 「マクゴナガル先生が、特別措置について話してくれましたよ。ところでポッター、箒は何型かね?」
 「ニンバス2000です」

 マルフォイのひきつった顔を見ながら、笑いを必死でこらえてハリーは答えた。

 「実はマルフォイのおかげで手に入ることができました」

 ハリーは付け加えて言う。そしてマルフォイの方は、怒りと困惑を剥き出しにした顔をしていた。ソフィアはいつ怒りが爆発するかと不安になったが、ハリーとロンは笑いを押し殺しながら階段を上がって行こうとしたので、慌てて彼らについて行った。

 「だって本当のことだよ」

 大理石の階段の上まで来たとき、ハリーは思う存分笑う。

 「もしマルフォイが、ネビルの思い出し玉をかすめ取らなかったら、ぼくはチームには入れなかったし」
 「それじゃ、校則を破ってご褒美をもらったと思ってるのね」

 彼らの背後から怒った声が聞こえた。ハーマイオニーがハリーの持っている包みを、許せないと言わんばかりに睨みつけながら、階段を一段一段踏みしめて上がって来たのだ。

 「あれっ、僕たちとは口を利かないんじゃなかったの?」
 「そうだよ。今さら変えないでよ。僕たちにとっちゃ有り難いんだから」
 「ハリー…っ、ロン…」

 ハーマイオニーに嫌味ったらしく言う彼らをソフィアは止めようとするも、そうこうしているうちに、ハーマイオニーの方はツンとそっぽを向いて行ってしまいました。

その日、ハリーは一日中授業に集中することが出来なかった。気がつくと寮のべッドの下に置いてきた箒のことを考えていたり、今夜練習することになっているクィディッチ競技場のことに気持ちが逸れてしまっているのだ。

 夕食は何を食べたのかもわからないまま飲み込んで、ロンと一緒に寝室に駆け戻り、ようやくニンバス2000の包みを開いた。ベッドカバーの上に転がり出た箒を見て、ロンは「ワォー」と溜め息をつく。箒のことを何も知らないハリーでさえ、素晴らしい箒だと思った程だ。

 スラリとして艶があって、マホガニーの柄の先に、長く真っ直ぐな小枝がすっきりと束ねられ、柄の先端近くに金文字でニンバス2000と描かれていた。

 翌日からハリーは、毎日たっぷり宿題がある上に、週三回のクィディッチの練習で忙しくなっていった。そのせいか、気が付くとなんとホグワーツに来てからもう二箇月が経っていた。今ではプリベット通りよりも城のほうが、自分の家だという気持ちにさえなっている。授業のほうも、基礎がかなり分かってきたので面白くなってきていた。

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