20
ハロウィーンの朝、パンプキンパイを焼く美味しそうな匂いが廊下に漂って来て皆は目を覚ました。もっと嬉しいことに、呪文学の授業でフリットウィック先生が、そろそろ物を飛ばす練習をしましょうと言って、先生がネビルのヒキガエルをブンブン飛び廻らせるところをやって見せたのだ。それからというもの、皆はやってみたくてたまらなくなった。フリットウィック先生は、生徒を二人ずつ組ませて練習させる。
ハリーはソフィアと組んだ。そしてロンはなんと、ハーマイオニー・グレンジャーと組むことに。ロンとハーマイオニーの二人がより険悪になってしまうかどうか、難しいことになっていった。ハリーが箒を受け取ってから、ハーマイオニーは一度もロンとハリーと口を利いていなかった。ソフィアとは稀に話しているが、いつもハーマイオニーは素っ気なかった。
「さあ、今まで練習してきたしなやかな手首の動かし方を思い出して」
フリットウィック先生はいつものように積み重ねた本の上に立って、キーキー声で言う。その声がソフィアは少し苦手だ。
「ビューンと振って、ヒョイと動かすんですよ。いいですか、ビューン、ヒョイ。呪文を正確に、これもまた大切ですよ。覚えてますね。あの魔法使いバルッフィオは、「f」でなく「s」の発音をしたため、気が付いたら自分が床に寝転がって、バッファローが自分の胸に乗っかっていましたね」
これはとても難しい魔法だ。ソフィアは何とか少し浮かせることができたが、あまり長くは続かない。ハリーはビューンと振って、ヒョイと動かしたが、空中高く浮くはずの羽は机の上に貼り付いたまま。隣りのロンも、似たり寄ったりの惨めさだ。
「ウィンガディアム・レビオーサ!」
長い腕を風車のように振り回して、ロンが叫ぶ。
「言い方が間違ってるわ」
そんなロンに対してハーマイオニーのとんがった声が聞こえてきた。
「ウィンガーディアム・レビオーサ。『ガー』と長くきれいに言わなくちゃ」
「そんなに良くご存知なら、きみがやってみれば。ほら」
ロンが投げやりに言うと、ハーマイオニーはガウンの袖を捲くり上げて杖をビューンと振り、呪文を唱えた。
「『ウィンガーディアム・レビオーサ』」
すると羽は机を離れ、頭上四フィートくらいの高さの場所に浮き上がっていく。それを見たフリットウィック先生が拍手をして褒め称えた。
「オーッ、良く出来ました!皆さん見てください。ミス・グレンジャーがやりました!」
それから結局、授業が終わった時ロンは最悪に不機嫌だった。
「だから、誰だって彼女には我慢できないっていうんだ」
廊下の人混みを押し退けながら、ロンがハリーとソフィアに愚痴るように言う。
「まったく、彼女は悪夢みたいなヤツさ」
ロンが悪態づいた時、誰かがソフィアにぶつかり、急いで追い越して行った。それはまさに今話していた人物、ハーマイオニーだった。ソフィアが顔をチラッと見ると、驚いたことに彼女は泣いているではないか。
「今の…聴こえた、みたい…」
「それがどうした?彼女には誰も友達が居ないってことは、とっくに気が付いているだろうさ」
そうは言っていたが、実際ロン自身も少し気にしていた様子。
ハーマイオニーの方を見ていたソフィアには、彼女の後ろ姿がとても寂しく映って見え、以前の一人きりだった自分を思い出したのだ。
その後ハーマイオニーは次の授業に出て来なず、午後になっても一度も姿を見掛けなかった。ハロウィーンのご馳走を食べに大広間に向かう途中、パーバティ・パチルが友達のラベンダーに話しているのをソフィアたちは小耳に挟んだ。 ハーマイオニーがトイレで泣いていて、一人にしてくれと言ったということを。それを聞いたロンは、また少し気まずそうな顔をしたが、大広間でハロウィーンの飾り付けを見た瞬間、ハーマイオニーのことなど彼らの頭から吹っ飛んでしまった。ただ一人ソフィアを除いて。