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 クリスマス・イブの朝、ハリーが早くに目を覚ますと、真っ先にベッドの足もとに置かれた小さなプレゼントの山が目に入った。「メリークリスマス」と、ロンが寝ぼけまなこで挨拶すると、ハリーは急いでベッドから起き出してガウンを着た。

 「メリークリスマス、ロン。ねえ、これ見て?プレゼントが有る!」
 「ほかに何があるっていうんだい。大根なんかが置いてあったって仕様がないだろ?」

 そう言いながらロンは、ハリーよりも高く積まれた自分のプレゼントの山を開け始める。ハリーもそれに続いて先ず一番上の包みを取り上げた。分厚い茶色の包み紙に、『ハリーヘ、ハグリッドより』と走り書きがしてある。その中には、荒削りな木の横笛が入っていた。ハグリッドが自分で削ったものだということがすぐに分かった。そしてハリーが横笛を眺めていると、突然部屋のドアが開いたことに気づく。

「あの…入っていい…?」

 遠慮がちに顔を覗かせているのはソフィアだ。女子寮には今ソフィア以外誰もいない状態なので、もしかすると一人でいるより、ハリー達のところにいたいのかもしれない。

 「もちろん!おいでよ!」

 ロンに促され、ソフィアも嬉しそうに頬を緩ませ入ってくる。彼女は手を後ろにやって、何かを隠している様子。ソフィアがハリーの前に来ると、その隠していたものを差し出した。

 「メ、メリークリスマス…これ…ハリーに、プレゼント…」

 顔を赤くさせて照れ隠しなのか少し顔を俯かせている。綺麗な包み紙だ。白い紙の上にキラキラした結晶模様の紙で包装された箱。ハリーは「ありがとう!」と言い、早速中身を見ようと開けた。

「箒磨きセット!…しかも、一番人気のヘンゼルのだ!これ前から欲しかったんだ。ありがとう、ソフィア!」
「…良かった、ハリーに喜んでもらえて。フレッドとジョージに聞いたら、これがいいって教えてくれたから…」

 以前、夕食で双子に聞いたのはこのことだった。今まで人にプレゼントを贈った経験がないソフィア、それどころか性別の違う“男子”が何を喜ぶのかさえ分からなかったため、何となく一番身近で詳しそうだった、フレッドとジョージに教えてもらったのだ。

 「あ、これはロンに…。フレッド達が『絶対にこれがいい』って、言ってたから…」

 ソフィアが思い出したように、後ろにいたロンに差し出す。“自分はおまけ”かと、ソフィアの中でのハリーと自分の格差を思い知らされ、少し苦笑ぎみに受け取る。緑のリボンで包まれた小さな箱。しかし開けてみて、まず最初にロンが示した反応は悲鳴だった。

「ぎゃぁああ!?!?」

 ロンは中身を見ると途端に慌てだし、思わず箱を落としてしまった。それに驚いたのは、彼だけではなくソフィアも同じだ。次に青ざめた表情でロンは叫ぶ。

 「ク、クモだぁ!!」

 中から出てきたのは、手乗りサイズの黒い蜘蛛。

 「…ロン…っ!?こ、これは蜘蛛の模型で…」
 「あ…そ、そうなの…?じゃなくて!何で蜘蛛!?僕、これ大っ嫌いなんだ!!」
 「え…でも、フレッド達は…『ロンは蜘蛛が大のお気に入りなんだ』って…』
 「あの双子ぉおお!!」

 今頃、悪戯のような笑みをうかばせているに違いない自分の兄達を思い浮かべ、怨めしくなるロンであった。そして模型であったても嫌いな蜘蛛に違いはなく、寧ろ魔法でできた模型なので、本物とそっくりに動くのだ。結局、ロンは恐怖でその蜘蛛の模型を暖炉の火で燃やしてしまった。そしてハッと気づいた時には遅かった。嫌いなものだったとはいえ、ソフィアがくれたプレゼントを彼女の目の前で燃やしてしまうとは。

 「ご、ごめん!その…っ」

慌てて謝るロン。ソフィアは「気にしていないよ」と言い、新しいプレゼントとして、丁度ポケットに入っていたキャンディーをあげていた。そうして一連の騒動が終わった後、ハリーは自分に届いたプレゼントをまとめた。

 「ハグリッドからと、ソフィアからと…それじゃ、これは誰からのものだろう?」
 「ぼく、誰からだかわかるよ」

 ロンが少し顔を赤らめて、ハリーの持つ大きな包みを指差す。

 「それ、ぼくの母さんからだよ。君がプレゼントをもらうあてが無いって知らせたんだ。でも…あーあ。まさか、『ウィーズリー家特製セーター』をきみに贈るなんて。これはもしかしたら、ソフィアにも贈られているかもしれないな」

 ソフィアは後で部屋に行って確かめてみると言った。恐らくまだ、自分に届いた全てのプレゼントを見ていないのだろう。ハリーが急いで包み紙を破ると、中から厚い手編みのエメラルドグリーンのセーターと、大きな箱に入れられた手作りのファッジ・キャンディが出てきた。

 「母さんは、毎年ぼくたちのセーターを編むんだ。僕のはいつだって栗色なんだ」
 「キミのお母さんって本当に優しいね」

 ハリーはファッジ・キャンディを齧りながら言う。とても美味しいファッジだ。次のプレゼントは、ハーマイオニーからの蛙チョコレートの大きな箱だった。そしてもう一つ、包みが残っている。手に持って、重さを感じ取るとそれはとても軽かった。中からはグレーの銀色がかった液体のようなものがスルスルと床に滑り落ちて、
キラキラと折り重なる。それを見ていたロンが、はっと息を飲む。

 「ぼく、これが何なのか聞いたことがある」

 ロンはハーマイオニーから送られた、百味ビーンズの箱を思わず落とし、声をひそめた。

 「もし…ぼくの考えているものだとしたら…とても珍しくて、とっても貴重なものなんだ」
 「なんだい?」

 ハリーは、銀色に輝く布を床から拾い上げる。水を織物にしたような不思議な手触りだ。

 「これは『透明マント』だ」

 ロンは貴いものを畏れ敬うかのような表情でいた。

 「きっとそうだ…ちょっと着てみて」

 ハリーが布を肩から掛けると、ロンが叫び声を上げ、ソフィアは驚いて口に手を当てた。

 「やっぱりそうだよ!下を見てごらん!」

 ロンに言われハリーが下のほうを見てみると、足が無くなっているではないか。ハリーは鏡の前に走って行った。鏡に映ったハリーがこっちを見ていたが、首から上だけが宙に浮いて、身体はまったくの透明になっている。布を頭まで引き上げると、遂にはハリーの姿が鏡から消えていた。

 「手紙が有るよ!」

 ロンが傍にあった手紙に気付いて言う。ハリーは、透明マントを脱いで手紙を掴む。彼には見覚えのない、風変わりな細長い文字でこう書かれている。

君のお父さんが亡くなる前から、私が預かっていたものです。
君に返す時期が来たようだ。
上手に使いなさい。
君の素晴らしいクリスマスに。

 手紙には名前は書かれていない。奇妙な感じだ。誰がこの透明マントを送ってくれたんだろう?本当にお父さんのものだったんだろうか?そしてこの透明マントを…まさに上手く使う機会があったのだ。

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