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 その後、一行は奥へ続く石造りの一本道を歩いていった。足音以外に聴こえるのは、壁を伝い落ちる水滴の微かな音だけ。通路は下り坂になっていて、ハリーとソフィアはグリンゴッツ銀行を思い出した。あの魔法銀行では、ドラゴンが金庫を守っているということを思い出して、彼らの心臓にいやな震えが走る。

 「何か聴こえないか?」

 ロンが小声で囁いたので、ハリーも耳を澄ました。前の方から、柔らかく擦れ合う音やチリンチリンという音が聴こえてくる。

 「ゴーストかな?」
 「わからない…羽の音みたいに聴こえるけど」
 「前のほうに光りが…何か動いてる」

 四人が通路の出口に出ると、目の前には眩く輝く部屋が広がっていた。 天井は高くアーチ形をしている。
宝石のようにキラキラとした無数の小鳥が、部屋いっぱいに飛び廻っているのだ。部屋の向こう側には分厚い木の扉が。

 「ぼくたちが部屋を横切ったら、鳥が襲って来るんだろうか?」
 「多分ね。そんなに獰猛には見えないけど、もし全部いっぺんに飛び掛かって来たら…。でも、ほかに手段は無い…僕は走るよ」

 大きく息を吸い込み、腕で顔を覆って、ハリーは部屋を駆け抜けて行った。いまにも鋭い嘴や爪が襲って来るかもしれないと思ったのでしたが、何事も起こらなかった。ハリーは無傷で扉に辿り着くことができ、取っ手を引いてみたが、やはり扉には鍵が掛かっていた。ソフィア、ロンとハーマイオニーが続いてやって来た。四人で押せども引けども扉はビクともしない。 ハーマイオニーが『アロホモラ呪文』を試してみたがそれでも駄目だった。

 「どうする?」
 「あの鳥たち…ただの飾りじゃないと思う…」

 頭上高く舞っている鳥を眺めてみる。輝いていた――――輝いている?

 「鳥じゃないんだ!」

 ハリーが突然言い出した。

 「鍵なんだよ!よく見てごらん。羽の付いた鍵なんだ…ということは…」

 ハリーは部屋を見渡す。他の三人は目を細めて鍵の群れを見つめていた。

 「…そうだ、見て!箒が有る!ドアを開ける鍵を捕まえなくちゃいけないんだ!」
 「でも、何百羽も居るよ!」

 ロンの言う通り、鳥は数匹どころか何百羽もいそうだ。しかし、ハリーは理由も無く今世紀最年少のシーカーとして活躍していた訳ではない。他の人には見えないものを見つける能力がある。一分ほど虹色の羽の渦の中を飛び廻っているうちに、大きな銀色の鍵を見付けたのだ。一度捕まって無理やり鍵穴に押し込まれたかのように、片方の羽が折れている。

 「あれだ!あの大きいやつだ!!羽が片方、つぶれたように曲がってるやつ!」
 「でも…箒が三つしかないよ…」
 「じゃあ、僕とロン、ソフィアで行こう。ハーマイオニーは扉の前で待ってて」

 ハリー達は箒に股がり、飛んだ。銀製の鍵。金色に輝く中で、取っ手と同じ少し錆びた銀製の鍵。

 「追い込んだ方がいい!」
 「わかった。ロン、君は上の方から来て……ソフィア、君は下にいて降下できないようにしておいてくれ。僕が捕まえてみる。今だ!」

 作戦は成功だった。ハーマイオニーも歓声を上げた程に見事に決まったのである。三人は大急ぎで着地すると、ハリーは手の中でバタバタもがいている鍵をしっかりと掴んで扉に向かって走って行った。鍵穴に鍵を突っ込んで回し、上手くいったようだ。錠がガチャリと開き、その瞬間、鍵はまた飛び去る。二度も捕まった鍵はひどく痛め付けられた飛び方をしていた。

 「いいかい?」

 ハリーが取っ手に手を掛けながら三人に声を掛けた。三人は頷いた。それを確認し、ハリーが引っ張ると扉が開いた。

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