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 その部屋は、真っ暗で何も見えなかった。しかし一歩中に入ると、突然光りが部屋中に溢れ、驚くべき光景が目の前に広がったのだ。大きなチェス盤が有って、四人は黒い駒の側に立っていた。チェスの駒は四人よりも背が高く、黒い石のようなもので出来ており部屋のずっと向こう側に、こちらを向いて白い駒が立っている。少し身震いした。見上げるような白い駒は皆んなのっぺらぼうだったから。

 「さあ、どうしたらいいんだろう?」
 「見てのとおりだよ。そうだろう?向こうの部屋に行くにはチェスをしなくちゃならないんだよ」

 白い駒の向こう側に、もう一つの扉が見えた。

 「どうやるの…?」

 ソフィアとハーマイオニーはどこか不安そうだ。ロンの考えでは自分たちが黒い駒の役割を果たさなくてはならないということだった。

 「ハリー、君はビショップとかわって。ハーマイオニーはその隣でルークのかわりをするんだ。ソフィアはクイーン」
 「ロンは?」
 「僕はナイトになるよ」

チェスの駒は四人に持ち場を譲るようにチェス盤を降りた。「白駒が先手だから」と、ロンがチェス盤の向こう側を覗きながら言う。

 「ほら…見て」

 ロンの言う通り、白のポーンが二つ前に進んできた。ロンが、黒駒に動きを指示しはじめ、駒は彼の言うとおり黙々と動いていく。ハリーは膝が震えた。

―――負けたら、どうなるんだろう?

「ハリー、斜め右に四つ進んで」

 ロンと対になっている黒のナイトが取られてしまった時が最初のショックだった。白のクイーンが黒のナイトを床に叩き付け、チェス盤の外に引き摺り出したのだ。 ナイトは身動きもせず盤外にうつ伏せに横たわった。

 「こうしなくちゃならなかったんだ。きみがあのビショップを取るために、道を開けとかなきゃならなかったんだ。 ハーマイオニー、さあ進んで」

 白は黒駒を取った時には何の情けも掛けない。しばらくすると、負傷した黒駒が壁際わに累々と積み上がっていく。ハリー、ソフィア、ハーマイオニーが取られそうになっているのに、危機一髪のところでロンが気付いたことも二回あった。ロンもチェス盤の上を走り廻って、取られた黒駒と同じくらいの白駒を取っていく。

 「詰めが近い。ちょっと待ってよ……」

 ロンが急に呟き、白のクイーンがのっぺらぼうの顔をロンに向けた。

 「やっぱり…これしか手は無い…ぼくが取られるしかないんだ」

 ロンが静かに言う。

 「「駄目!!」」」

 ハリーとソフィアとハーマイオニーが同時に叫んだ。

 「これがチェスなんだ」

 三人の制止を止め、ロンはきっぱりと言った。

 「犠牲を払わなくちゃいけないんだ!ぼくが一駒前進する。そうすると、クイーンがぼくを取る。ハリーそれできみが動けるようになるから、キングにチェックメイトを掛けるんだ!」
 「でも…――」 
 「急がないと、スネイプがもう石を手に入れてしまったかもしれないぞ!」

 ロンの言葉が部屋に響く。三人もそれを聞いて、押し黙ってしまった。

 「いいかい?」

 ロンが青ざめた顔で、しかしきっぱりと言うのだ。
 
 「じゃあ、僕はいくよ。…いいかい、勝ったらここでグズグズしてたら駄目だぞ」

 ロンが前に出ると、白のクイーンが飛び掛かった。彼は頭を石の腕で殴り付けられ、床に倒れてしまう。ハーマイオニーが悲鳴を上げたが、自分の持ち場に踏みとどまった。ここで動いてしまえば、彼の苦労が水の泡だ。震えながら、ハリーは三つ左に進む。

 「…チェックメイト」

 ハリーがキングを見上げて終わりを告げると、白のキングが王冠を脱いで、ハリーの足元に投げ出した。勝ったのだ。チェスの駒たちは左右に分かれ、前方の扉への道を開いてお辞儀をした。三人はそれを確認し、慌ててロンに駆け寄る。見ると彼は気絶しているだけのようだった。

 「ハリー、ソフィア、ここは私に任せていいから。二人は前に進んで」

 ハーマイオニーがロンの手を取り、二人に言い聞かせる。

 「…分かった、じゃあ頼んだよ」
 「石は必ず守るから…」
 「えぇ、信じてるわ」

***

もう時間がないので、二人は急いで扉へ突進して次の通路を進んだ。

 「次は何だと思う?」
 「スプラウト先生は『悪魔の罠』…『鍵』に魔法をかけたのはフリットウィック先生に違いないと思う…『チェス』の駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガル先生…そうすると、残るはクィレル先生の――」

 二人は次の扉に辿り着いた。悪臭と音がする。次は、やはり予想通りクィレル先生だ。そこにいたのは前に退治したトロールよりもさらに大きなトロールがいた。トロールはソフィア達に気づいて、今にも突進してきそうな勢い。

 「ハリー…、ここは私に任せて」
 「何言ってるんだ!こんな大きなトロール一人でやるのは――」

ブンッ!

危機一髪だった。ズンズンと押し寄せてきたトロールが、棍棒を振り上げ2人に襲い掛かってきた。
しかし、何の痛みもなくハリーが見上げると…ソフィアの手には杖があり、目の前には綺麗な氷が二人を守る壁となっていたのだ。

 「何も無駄に図書館通いしていたわけじゃないよ、きっとこういう状況もできるだろうと思って、少し習得しておいたの…。今からトロールを左に移動させる。右を通って先に行って…」
 「でもっ!」
 「ハリー、あなたが石を守るの。私にもロンにも、ハーマイオニーにも分かるわ。……あなたがやるのよ、ハリー」

 ソフィアが真っ直ぐにハリーの目を据えて言う。そしてハリーも遂に意を決した。数秒して、トロールが再度棍棒を振り上げてきた。ソフィアは攻撃から守りつつ、トロールの脇腹に流れるように魔法で氷を押し付け左の壁へと押し付けて行く。

 「今よ…!ハリー!」

 雪崩のような大きな音が響く中、ハリーは扉をめがけて走った。ソフィアはハリーが扉の奥へ入っていくのを確認し、トロールを叩きつけていた氷を解いた。トロールが痛そうに横腹を押さえながらも、怒りに震えたのか叫び声を上げ、こちらへと突進してくる。

 「……ゴメンね、本当はこんなことしたくはないんだけど…私にも時間がない…から…」

 ソフィアはスッと杖をかざし、大きな氷柱を数本造り出した。それをトロールの上に持ち上げ、トロールの動きを封じ込めるように周りに突き刺す。最後に大きな結晶の塊をトロールの頭上に造り、前にロンがした時と同じように、思いっきり落としつけた。ガンッ、凄く痛そうな音がしたと思えば、トロールは力がなくなり床に転がりこんだ。大きなトロールなだけあって、その振動はかなり響きソフィアもへたり込むように膝から崩れ落ちる。

 「…ハァッ…ハァ…ッ」

 肩を上下させ苦しそうに息を繰り返す。今までの疲労がどっと押し寄せてきたらしい。ソフィアはフラフラした足取りで立ち上がり、片腕を押さえながら扉へと進んで行った。

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