ホグワーツ特急を下りて、ソフィアはホグズミード駅のプラットホームで再度隈なくハリーとロンの姿がないかどうか探したが、やはり彼らはどこにもいなかった。
 ホームの向こう側から、聞き慣れた声が去年と同じように「イッチ年生!イッチ年生!」と叫んでいるのが聞こえ、ソフィアはジニーにハグリッドのところへ行くように促した。ジニーがいなくなった後、ソフィアはハーマイオニーと一緒にでこぼこの夜道を歩いて、ホグワーツ城まで連れて行ってくれる馬車の列に並んでいた。
 ハーマイオニーも落ち着かない様子で、ハリーとロンのことを心配していたが、ソフィアほどではなかった。ハーマイオニーから何度、「きっと別の方法で安全に来るわよ」と言われてもソフィアはどうも信じられなかった。安全より危険を選ぶ傾向が強い二人であるのは一年一緒に過ごして熟知している。

「あ――」

 ふとソフィアが馬車のほうを見ると、ながえの間に不気味な生き物がいたため、その姿に目を奪われた。しかし側にいたハーマイオニーには見えていないらしく、どうしたの?と首を傾げている。まったく肉がなくて、黒い皮が骨にはりついている体に、頭はまるでドラゴンのようだ。瞳のない目は白濁し、じっとソフィアを見つめ返していた。背中の隆起した部分からは、巨大コウモリのような翼が生えて、今はきれいに折りたたまれている。

 「……何でもないよ」

 皆は見えていないのが当たり前のようだったので、自分だけ騒ぐのも変に捉われてしまうと想い黙っておくことにした。城の中に入り、二年生以上の生徒の群れに混じって、ソフィアとハーマイオニーは大広間に入った。先生達が座っている席にセブルスの姿がなかった。その代り、空席の隣には、あのギルデロイ・ロックハートを見つけた。相変わらずニコニコしていたが、何だかもうソフィアにとってあの笑顔は胡散臭い以外の何ものでもなかった。

 その後、ジニーは無事グリフィンドールに決まった。組分けの儀式が終わって、みんながごちそうを食べ始めた頃、教職員テーブルの出入りが激しいことに、ソフィアは目敏く気がついた。
 いつの間にかダンブルドアとマクゴナガル先生の姿がなくて、しばらく経ってからもう一度見た時には戻ってきていた。ハーマイオニーと話しながら食事を続けていると、ハッフルパフのテーブルのほうから奇妙な話が聞こえてきた。

――二年のポッターとウィーズリーが、空飛ぶ車で墜落して退校処分になったらしいぞ。

 ソフィアは頭が真っ白になりそうだった。ハーマイオニーも、食べ物を咽に思いきり詰めたようだ。グリフィンドール寮の前でパーシーから新しい合言葉を聞いた後、すぐにソフィアとハーマイオニーは逆戻りして、ハリーとロンを探しに行った。しばらく経っても見つからず、再びグリフィンドール寮の前に戻ってくると、「太った婦人」の前で立ち往生している見慣れた後ろ姿を見つけた。

 「やっと見つけた!一体どこに行ってたの?
バカバカしい噂が流れて、誰かが言ってたけど、あなたたちが空飛ぶ車で墜落して退校処分になったって」
 「ウン、退校処分にはならなかった」

 振り返ったハリーがハーマイオニーを安心させるように言い、心配そうなソフィアを見てにっこりとした。ハーマイオニーは顎をわななかせた。

 「まさか、ほんとに空を飛んでここに来たの?」

 厳しい口調のハーマイオニーに対して、ロンはどうでもよさそうに「お説教はやめろよ」とイライラした口調で言った。そしてソフィアには少しだけ柔らかい表情を向けた。ソフィアは怒っていないと判断したらしい。

 「新しい合言葉、教えてくれよ。ソフィア」
 「『ミミダレミツスイ(ワトルバード)』」
 「ちょっと!話を逸らさないで───」

 しかしハーマイオニーの言葉もそこまでだった。太った婦人の肖像画が開くと、突然廊下中に響くような拍手の嵐だった。ハーマイオニーは呆れて口をぱくぱくさせていた。
 肖像画の穴から何本もの腕が伸びてきて、ハリーとロンを部屋の中に引っ張り入れた。ソフィアとハーマイオニーが後から続くと、丸い談話室いっぱいにグリフィンドール寮生のほぼ全員がお祭り騒ぎしていた。フレッドとジョージがハリーとロンに賞賛を送っていた。
 部屋の中で、しかめっ面を浮かべていたのはハーマイオニーとパーシーだけだった。パーシーに叱られる寸前に逃げようと男子寮へ駆け出したハリーとロンは、少しだけ振り返って、ソフィアとハーマイオニーに「おやすみ」と呼びかけた。ハーマイオニーは肩をいからせ、ソフィアの手を引っ張って反対側の女子寮に入った。ソフィアは二人が無事だったことが何より安心だったため、ハーマイオニーのぼやきはほとんど聞き流してしまっていた。

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