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「シルヴィアは絶対ワインとか飲んだら駄目だからね。もちろん、シャンパンも!」と、グレイに釘をさされたたため、彼女は人の輪から外れる。
窓辺の椅子の席に、シエルとシエルが読んでいたビートン誌に掲載されていた長編を書いた先生が座っていた。
丁度いいと、先生の隣の空いていた席に腰を下ろす。
「お隣失礼致します」
「ご、ご令嬢…!?」
ガタッと慌てて席を立った先生にクスクスと笑みをこぼす。
「どうぞ、お掛けになって。わたくしも少し休憩をしたくて……お邪魔だったかしら?」
「い、いえ…」
と、その時。アイリーンの悲鳴にも近い声が聞こえた。何事かとそちらに視線を送れば、何やらジーメンス卿と揉めていた。
ああ……よかった。あそこにいたら、自分も巻き添えになっていたかもしれない。
そんな事を考えながら、他人行儀に眺めていたら、ジーメンス卿がアイリーンにかけようとした酒を、シエルが代わりにかぶった。
伯爵である彼が、女性を庇って酒をかぶったため、辺りは当然の様にざわつく。
「宴の席です。どうかお二人共、今日はこの辺で」
シエルの言葉に、アイリーンもジーメンス卿もバツが悪そうな表情を浮かべた。
「…の、タヌキオヤジ!!俺の女に気安く触ってんじゃねェッ!!」
ワインボトルを手に取ると、キーンはそれをジーメンスに向かってぶん投げた。当たる、と誰もが身動き出来ない中、セバスチャンが動いた。
軽やかに一回転しながらワインボトルをキャッチすると、そのまま用意されていた脚立の上に立ち、グラスのタワーに流れる動作でワインを注いだ。
「モルドヴァ南東部プルカリ村の幻のワインでございます。どうぞ皆様お楽しみ下さいませ」
「美しい…なんだこのツリーは!」
「いつのまに…」
グラスのタワーは、シャンデリアの光を反射させ、幻想的にきらきらと輝いていた。
ふわりと、鼻に届いた香りに気づく。
「それにこの香り、まるで花畑にいるようだ」
「いい匂い〜一杯くれる?」
「わっ、私も!」
「我にも〜」
グレイを初めに次々と全員が飲み始めた。もちろん、自分もせっかくなので。
セバスチャンの機転に、その場の雰囲気は元に戻った。
ワインから発せられる香りに誘われるようにして、シルヴィアも席を立ち上がり、ワインタワーへ向かう。
ワイングラスを手に取り、ワインに口をつけようとした瞬間、手からグラスがグレイによって奪い取られてしまい、彼は見せつけるかのように、両手にグラスを持って、ワインを堪能し始めた。
「ひ…ひどいわ、グレイ…」
「そんな顔したってダメなものはダメだよ。酒を飲むのは、ボクと二人っきりの時だけ」
その言葉の意味がよくわからなくて、「どうして?」と聞き返すが、グレイは「内緒」と言って、その言葉の真意を教えてくれなかった。
***
「ーーーーあれ?ジーメンス郷寝ちゃった?」
「そうみたいですね…」
もう夜も更け、会のような賑やかさも前のことのように思える頃。その声に、うたた寝していた伯爵が目を覚ます。
「セバスチャン、卿をお部屋にお連れしろ。僕も下がる……申し訳ありません。僕も先に失礼させて頂きます」
「あれっ、伯爵もう寝ちゃうの?」
「僕のような子供はもう寝る時間だ。あとは皆様でごゆっくり」
去っていった伯爵達に、軽く頭を下げる。ふと、目を向けると、何か思案しているようにグレイが見送っていた。
「……都合がいい時ばかり子供になられるのですね」
「うるさい」
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