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友人から色々教えてもらって未だに心の中で解決しないものがあるが、一先ず今は斎藤さんに会ったら、しっかりと例のお菓子をお礼だと伝えることにした。
何度も言うのも変な話かもしれないが、ここは自分でもはっきりさせた方がいいと思った。
そうしてバイトに入ったが、突然店長に言われた。
「今日、バイト入らなくて大丈夫だから」
「…え?」
「代わりにここ、行ってもらえるかな?」
にこりとした笑みで渡された紙。
そこに書いてあったのはなにかの住所だった。
「今日は有給でいいから、お願いね」
「あ、あの…」
有給まで貰って自分はどこに行くのだろうか、店長に尋ねたが笑ってはぐらかせれてしまった。
疑問符を浮かべながら、紙に書かれた住所を目指して向かう。
そしてたどり着いたのは渋谷にある大きなマンションだった。
とても立派で如何にも高級マンションといえる建物。
そして住所の下にある番号はおそらく部屋番号と思えるので、そこに行けということなのだろう。
こんなに高級なマンションに住んでいるくらいだから、相当なお金持ちさんなのだろうけれど、何故その人と自分が関係あるのかさっぱりわからなかった。
「ここ…」
紙に書かれた番号と壁にかかれた部屋番号を何度か確認し、意を決してインターホンを押した。
しかし返答がこない。間違えてしまったのだろうかと不安になるが紙に書かれた番号の部屋は確かにここの筈だ。
店長に連絡を取ろう、そう思った矢先ようやく部屋の主が返答してくれた。
『……はい、どちら様、ですか…』
とてもか細く、それでいて掠れているような声だった。
そして、百合はこの時なんと言うのか店長に言われた通りに答えた。
「あ、の……トイズファクトリーからきました」
そう言うと、ガチャリと鍵をあける音がして黒光りの扉が重そうに開いた。
しかし百合は現れた人物に目を見開いた。
そしてそれは向こうも同じだった。
「さ、斎藤さん…?」
「高嶺、さん…?」
何故かそこにいたのは斎藤さんで、彼は少し高そうな寝間着を着ていた。
今起きたのだろうか、少し寝ぐせがついていて…いや、寧ろ顔色が悪く見えるのは気のせいなのか。
「どう、して…ここに…」
「店長に言われて…今日、ここに行ってくれと…理由は全然教えてもらえなかったんです、けど…」
「あー…なるほど、ね…ごめん、わざわざ…」
「あの、もしかして具合悪いんじゃないんですか…?声が掠れてますし、…顔色だって…」
男性にしては少し高くて優しい声が、今日はなんだか掠れているような風邪声のようだった。
それに寝間着だったということはずっと寝ていたということで、そんな斎藤さんの様子を見ていて、自分がここに来させられた理由がなんとなくわかってきた。
「いや、ちょっとね……風邪、引いちゃって…」
「っ、布団に入りましょう、休んだ方がいいですから…っ」
本人から風邪と聞いた途端、百合はすぐさま行動に移った。
扉に寄り掛かっている彼の肩を自分の方に回して、すみませんお邪魔します、と一言声をかけてから玄関へと入った。
そうして彼の部屋と思われるところにベッドがあることを確認して、彼がベッドに入れるように手を添える。
今にも倒れそうなほど苦しそうだったからか、横になるともう動けそうにもなかった。
「熱は測りましたか?」
「……測って、ない」
体温計はどこにあるのか探そうにも今きたばかりで部屋の中をあさるわけにもいかず、一先ず一番手っ取り早い方法を使った。
「……結構高いですね」
お互いの額と額を合わせて、熱を確認する。
斎藤さんの身体が少し反応していたが、僅かの変化に百合は気づいていない。
「一先ず、必要なもの買ってきますね。それから…すみません、お台所お借りします」
「……ごめん、」
「こういったときはとことん甘えてください、私は大丈夫ですから」
できるだけ安心してもらえるように優しく笑みを返す。
それを見ていた斎藤さんは、安心したのか目を閉じて寝ていった。
そして百合も来る途中に見たスーパーに向かうことにした。
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